HEY!凡な日々 Vol.4

僕が綾野剛になるまでの記録。

1.17, 2019

ハガキ職人:落合のダッチワイフ
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清潔 or 清潔感

 

「清潔感」がない。

言われ続けてかれこれ二十数年も経つ。

でも僕は毎日お風呂にも入っているし、歯も磨いている。

つまり「清潔」なのだ。

それなのに「清潔感」がないと思われるのはどうゆうことなのだろうか。

 

「清潔感がない」ということは「汚いように思える」ということでもある。

なぜ僕は汚いように思われてしまうのだろうか。

 

 

・風呂に週一でしか入らない不潔な人間だが、なんだか清潔感のある人。

 

・毎日風呂に入り実際は清潔なのに、汚そうな人。

 

がいる。

 

 

何が言いたいかというと、「清潔である」ことと、「清潔感がある」ことは全く別だということだ。

 

 

綾野剛

 

僕は「清潔」ではいたいが「清潔感」はいらない。

これは個人的な偏見だが「清潔感がある人」は何か奥行きがないように思える。表面的なカッコイイで終わる。

僕の顔がいわゆるソース顔、俗に言う「イケメン」だったら、清潔感を求めただろう。

だが実際のところ、僕は一重のあっさり塩顔だ。表面的なものだけじゃ「カッコイイ」まで持っていくことはできない。内側の何かを表面に滲みださなくてはならないのだ。

塩顔が向かう先は一つしかない。

 

“後ろを振り返る。
遠くの方で私の背中を呼ぶ声が聞こえる。
先を見るが道らしい道がない。未だ誰一人足を踏み入れていない領域。
だったら俺が作るしかない。
俺が、俺こそがここに向かっているあいつらの道となる。
鋭い眼差しで先を見つめる男がそこにはいた。
風が吹いている。
男の名は綾野剛。”

彼を始めて見たとき、「イケメン」だが、いわゆる「イケメン」とは少し違うと思った。

溢れる色気。そしてその奥に何か破滅的なものを感じる。

清潔だが清潔感はない。

 

僕はこれだなと思った。

理由は分からないが、もう「清潔感」があるように思われることは不可能だ。

服も綺麗にした、部屋も片付けた、歯も磨いた、風呂も入った、靴もオニューにした、それでもなお「清潔感がない」と言われる。

そして「清潔感」が欲しいとも思わない。

僕が欲しいのは内側から滲み出る色気と、破滅的なニオイだ。

 

 

 

綾野へGO!

 

彼の顔になりたい訳ではない。彼がまとっている雰囲気を身につけたいのだ。

そのためには彼の内面的な要素を調べなくてはならない。

僕は「youtube」や「Wikipedia」等々の独自のルートを使って、綾野剛について調べた。

彼は口数が少ない印象で、一見冷たい男のように見える。

が、時より見せる笑顔がハートを掴む。僕の。

そして彼はとてつもないストイックな人間であり、真ん中に一本の芯が通っている。

 

僕と大違いだ。

まず僕は口数がとんでもなく多い。静かにする意味が分からない。

そして表面からして温かそう。めちゃ優しい。それはお母さんの育て方に感謝。ありがとう。

この世で一番嫌いなことは「気まずくなる」ということだ。

気まずくならないで済むなら、通っていた芯も簡単にへし折って頭を下げる。

使い捨て用の心の芯が次から次へと出てくる。

僕の人間的な芯は「ロケット鉛筆的」なものをイメージして頂けたら分かると思う。

 

そして、一番彼と違うのは僕が俳優じゃないという点だ。

僕はコンビニ店員だ。

あまりにも違う。

僕はただ落ち込んだりただ嘆くことの時間の無駄さ加減は心得ているので、今持っている自分の要素で、「綾野剛」にすり寄っていきたいと考えた。

こうしている間にも彼は進んでいっているのだから。

 

 

体内に蓄積する綾野剛

 

綾野剛を形成する要素を大きくまとめると以下の3つになった。

 

・寡黙な雰囲気

・ストイック

・破滅的なニオイ

 

 

僕は入り込むタイプの役が抜けない俳優さん(楽屋から出てこないタイプの)なので、あまりにも綾野剛を入れると、僕が僕なのか綾野剛なのか分からなくなってしまう危険性がある。

そこで週5日、8時間30分コンビニでバイトしているので、勤務中にのみ綾野剛の要素を取り入れていくことにした。

 

寡黙な雰囲気を出すのは非常に簡単だった。何故ならただ黙ればいいだけだったからだ。

店長に「体調悪いの?」と言われたり、お客様から「態度が悪い」とクレームが入ったがそれでいい。今までと違うということだ。なんなら綾野剛も体調は良さそうではないし。

ストイックが一番難しかった。とにかく一生懸命働いてみた。

誰よりもおにぎりを素早く並べた。大きな声で挨拶した。そして、今まで全くどうでも良かった「パンの並べ方」に関して無理矢理こだわりも持ってみたりして、「その並べ方違います!カレーパンは、ちょっと斜めの感じで陳列してください!」といって、少しの時間バックヤード(楽屋)に立てこもったりした。

バイトのおばさんが「最近頑張ってるわね。」と言ってくれた。

僕はストイック。

破滅的なニオイというのは、勤務中に表現するのは不可能だ。

破滅的というのは「不完全」であり、それが「色気」につながっていると思う。

昔、クドカンとみうらじゅん(曖昧)の対談本で、若い頃貧乏だったやつは「色気が」でる。というのを読んだが、きっとそうゆうことだと思う。

僕は貧乏だ。貯金も0。月に使えるお金は2万。明らかな不完全だ。

これはもう何もしなくても、そんなニオイが出ているのではないかと考えた。

繰り返していく内に僕は綾野剛が体内に入ってくるのを感じた。

そして一ヶ月後。

 

俺は綾野剛だ

見てほしい。この圧倒的な綾野剛感。そして底知れぬ奥行き感。

金無さそうだけど、色気あり。刹那的な表情。

 

綾野剛としての自覚が芽生えてきた頃、バイト先の仲の良いお客さんが

「綾野剛〜〜!」と言ってきた。

「綾野剛に似てる〜」ではない。

「綾野剛〜〜!」である。つまり僕は「綾野剛」だ。

 

一つ言っておくが、URBAN TUBEはきちんとしたサイトなので、嘘は書けない。嘘をつくと、このコラムが上がらないかもしれない。

だからここでは本当のことを述べている。

がっかりされる方もいるとは思うが、僕は綾野剛ではない。

がしかし、彼女の中で僕が綾野剛になれたのは事実だ。

考えてみてほしい。自分が「綾野剛に似ているか否か」ということについて思考を巡らすことを許された人間がこの世界にどれだけいるだろうか。

彼女は店に来るたびに「綾野剛だ〜〜」と言ってきた。

その度に「え?そうだけど。何?」見たいな態度を取っていた。

しかしあまりにも「綾野剛」だと言われる。

ある時、僕、気づく。

「馬鹿にされてるのかな?」と。

その時、僕は綾野剛ではないのかもしれないと思った。

俺は綾野剛になりたい。でも、俺は彼女なしでは綾野剛にはなれない。

彼女の中の俺が綾野剛であるからだ。

彼女に綾野剛だと言い続けられたい。でも馬鹿にはされたくない。

そんな思いで、彼女に聞いてみた。

「俺は綾野剛に似てるかな?」

「似てるよ〜〜。」

「いやマジで。マジで似てる?」

「あははははは(笑)」

 

なんやねん。よく見たら、連れの女の子もニヤニヤしていた。

 

 

僕は僕だ

 

誰にだって、憧れの人はいると思う。

その人みたいになりたくて、格好や、言動、スタンスを真似てみたくなる。

でもそれにはやっぱり限界があって、自分が持ち合わせている要素とうまくミックスして、なりたい誰かではなく、なりたい自分にならなくてはならないと思う。誰かのモノマネはもう辞めよう。

 

 

また彼女が店に来た。

「お!綾野剛じゃん(笑)」

「ち〜〜す。」

 

 

俺は綾野剛だ。

 


 

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Profile

  • 落合のダッチワイフハガキ職人

    「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
    プールサイドというコンビ名で活動中。
    毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
    現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。