Hey!凡な日々Vol.14

水曜日、曇り、僕は遊園地に行った。

6.30, 2019

ハガキ職人:落合のダッチワイフ
  • essay
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遊園地に行きたい。出来れば曇りの日に、気の合う友人を誘って、遊園地に行きたい。突然そう思った。
その次に、若干ダルいなと思った。お誘いのLINE、既読が付くまでそわそわする時間、既読がついてからの説明、行きたいと思わせるためのプレゼン、了承を得てからの日程合わせ、遊園地に着くまでにこれ程の行程を得なくてはならないのかと思うと、遊園地に行きたくないなと思った。
が、やはり遊園地には行きたい。「面倒」という理由だけで「遊園地には行かない」と納得できる程、僕は簡単な男ではない。ダルい以外で遊園地に行きたくない理由を列挙しようと色々考えたのだが、考えれば考える程やはり僕は遊園地にめちゃくちゃ行きたかったらしい。

 

遅刻は「自然現象」

友人にLINEをすると、「いいね〜」と返信が来たので、早速行くことになった。
水曜日がいいと思った。天気予報を見てみると曇りだった。最高だ。
開園時間と同時に入園したかったので、遊園地の最寄の駅に9時30分集合ということになった。

 

目が覚めると、時計は9時45分を指していた。ひとまずタバコを一本吸った。
こうゆう時はジタバタしても仕方がないのである。遅刻は「自然現象」なのだから。一服した後LINEを開くと、とうに待ち合わせ場所に到着しているであろう友人からのメッセージが届いていなかった。なんだよ〜アイツもバカだな〜、朝弱いんだなあ〜、友達だなあなんて思いながら、「ごめ〜〜ん」みたいなメッセージを送ると、「うろついているから大丈夫。」と返事が返ってきた。
彼はいつから大人になっていたのであろう。
いつまで経っても駅にやって来ない僕に、速攻LINEを送らない彼の気遣いにグッときた。
こぼれ落ちそうな涙が一瞬で乾いてしまう程の、猛烈なスピードで自転車を漕ぎ、駅へと向かった。

 

僕が到着した時に友人が撮った写真。髪がボサボサなのは、目覚めてから4分程で家を出たからである。ボサボサであればある程、遅刻された方にとっては好印象なのだ。

悪口

約束の時間から1時間遅れで駅に着き、「ごめんごめん〜」と言って、我々は早速遊園地へと向かった。バスも出ていたのだが、歩いて行くことにした。その方が良いような気がしたからだ。
遊園地に着くまで、僕はノンストップで人の悪口ばかりを吐き続けた。
友人とは久しぶりに会ったので、聞いてほしい悪口が溜まりに溜まっていたのだ。たまには毒を抜かないと、新しい毒が入ってこないので、これは必要な作業なのである。
遠くで観覧車が見えた辺りで、悪口を言う自分の卑しい口を紡いだ。遊園地に悪口は似合わないからである。

 

大人になっても忘れないエンタメ精神

チケット売り場につき、入園料のみを支払いアトラクションに乗る度にお金を支払うか、乗り放題チケットを買ってしまおうか悩んだのだが、お金がないのでひとまず入園料だけ支払った。
アトラクションにはさほど興味がない。
僕が今回遊園地に行きたかった理由は、単純に平日の午前中の遊園地を見たかったからなのである。

入場口は高い位置にあったので、遊園地一帯を見渡してみると、人がほとんどいなかった。
人がいないのでアトラクションが稼働していない。
音のない遊園地は殺伐とした雰囲気を醸し出しており、その憂鬱な空気感とハツラツとしたポップ色なアトラクションとが相まって、生々しい遊園地の姿がそこにはあった。人がいないと時間が止まってしまっているようで、演出抜きの剥き出しの遊園地が目の前に広がっていたのである。

最後に遊園地に行ったのは、小学校高学年くらいの時に母親と行った、那須の遊園地だったような気がする。
入園した途端、何かがはち切れたようにハシャギだし、目の前にあるアトラクションに向かって爆走し、空中ブランコなるものに乗ったのを何故か鮮明に覚えている。

 

あれからどれくらいの月日が経過しただろう。
入園した僕は、ニコチンがはち切れてしまい、目の前にある喫煙所に向かって爆走したのである。
お母さん、僕大人になりました。

 

特に何かに乗りたいという思いもなかったのだが、一応はパンフレットを広げた。パンフレットを広げることに意味があるのだ。遊園地に着いてパンフレットを広げない奴と僕は遊べない。別にパンフレットが見たい訳ではない、これは一種の友人へのパフォーマンスなのである。この時に関しては僕も遊園地側の人間なのである。パンフレットを広げることによって、友人に対し、俺は今日気合が入っています!!遊びます!!という意気込みを誇示しているのである。
実はこうゆうのって物凄く大事なことだったりするのだ。

柔らかな時間

「遊園地をグルッと周ろっか」と友人は言った。
いつから彼は大人になっていたのだろうか。
歩いていると屋台があり、ビールが売っていた。飲むかどうかとても悩んだ。
今後アトラクションに乗るからである。乗る気がないつもりでいるのは、突然乗った方がワクワク感が生まれるからだ。心の奥底で寝ると決めながら、寝ない寝ないと自分に言い聞かせ、横になるアレと同じシステムなのだ。
よって、アトラクションには乗る。
そう決めていた僕は、お酒を飲んでアトラクションに乗っていいのかどうかが気になった。なんか飲酒運転的なことになりそうな気がしてならない。
あと、シンプルにめっちゃ酔いそう。という理由で、お酒は我慢した。
遊園地でお酒が視野に入るってことが、凄い大人になった気がして、うわ〜という感じの少し寂しいような、ちょっと嬉しいような気持ちになった。

歩いていると、右上のほうから悲鳴が聞こえた。
目をやると、巨大な宇宙船が振り子の要領で右往左往している。
悲鳴は、その宇宙船に乗っている乗客達によるものだったと分かった。
次第に左右の振りがどんどん大きくなり、最終的に一回転した時は何だか笑ってしまった。
宇宙船が円の頂上にいる時、顔の肉が地面の方向へ引っ張られている乗客達と目があった。隣で同じように宇宙船を眺めていた女の子が、乗客に手を振ると、乗客も手を振り返していた。この一体感は何なのだろう。彼女は何故手を振ったのだろう。でも、手を振りたくなる気持ちは何となく分かった。
僕を含むここにいる人達の、こうゆう柔らかい、かけがえないのないような時間を、互いに思いやれたらどれだけ素敵なのだろう。
空が晴れていては、気が付けないことがある。

 

宇宙船から降りる乗客を見送った後、誰もいないプールへと僕達は歩を進めた。
誰もいない空虚なプールの水色があまりにも透明で、僕はポワポワした気持ちで辺りを眺めていたのだが、ゴツゴツした男の人達が僕の視界を遮り、プールはそんなもんじゃねえと言った感じで、ホイサホイサとこれから激務となるであろうプールの設営準備をしていた。現実を見た。

 

プールの奥にあるピンクのジェットコースターが目に入った。
途中で一回転するタイプの恐ろしいタイプのやつである。
「行くか。」とつぶやくと、友人も神妙な面持ちで深く頷いた。

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マッドマックス!!!
階段を上がり、受付のお姉さんに乗り物券を渡す。説明を受け、僕は絶句した。このジェットコースターは普通に座って乗る従来のタイプと、立って乗るタイプの2つがあるというのだ。友人は覚悟を決めたような真っ直ぐな瞳で、立って乗るタイプのジェットコースターを見つめていたので、僕はもう終わったなと思った。

 

「それでは荷物をこちらに置いて、どうぞ〜〜」的なお姉さんの機械的なアナウンスと共に、僕らはジェットコースターに乗り込んだ。
いや、乗るという表現は少し違うかもしれない。
座席の背もたれの部分から一本の棒が飛び出ていて、その棒に跨る。
そして上からU字型の安全ベルトをする。これは乗ると果たして言えているのだろうか。乗るというよりも、ジェットコースターと「接している」ような感覚を覚えた。
「えええ!!?こえええええ!!こわこわ!!え!!!?棒に跨るだけ?本当に立ったまま!?」みたいなことを大きな声でお姉さんに聞かす感じで言ったのだが、お姉さんはそんなリアクションをゴマンと見てきているはずなので、おもんないねん、といったような、ロボットのような表情で、
「ソレデハ、イッテラッシャイ」と僕らに告げた。
その瞬間、喫煙所を見つけた時の入園時の僕のような、とんでもないスピードでジェットコースターが発射した。
乗りながら、マッドマックスだなと思った。
イかれた暴走列車の最先端に貼り付けにされたまま爆走されるみたいなシーンがあった気がしたが、その気持ちが良く分かった。
「立つ」というのは、これからの道程で起こる全ての事象を、己の全身で受け止めよ!!ということなのである。
一回転するまでにはほとんどの言葉を失っていて、一回転時には、全身に重くのしかった重力により、脳内に浮かびあがった言葉が全て押しつぶされてしまったので、当時の感想を言葉で表現することが出来ない。残念。

なんか手を振ったのだ

ヘトヘトになって僕らはまた遊園地をのらりくらり歩き始めた。
それにしても人がいない。
フードコートにも、パンダの乗り物にも、人影がない。
スタッフのお姉ちゃんは全員気怠るそうで、とても良い感じだ。
遠くを見ると、ジェットコースターの隙間からゴルフ場が見えて、その隣には茶色のアパートがあった。それが一番好きな光景だった。理由は分からないけど。

友人は午後から仕事があるというので、そろそろ帰ることにした。
急に寂しくなった僕は、最後になんか乗ろうと誘った。
理由もなしに誰かに電話をかけたくなる、あの感じと似たような気持ちだ。
遅刻をしてしまったので、園内で最も巨大なジェットコースターを奢った。人にジェットコースターを奢るのは生まれて初めてだった。
安全ベルトを閉めた後、スタッフのお兄さんから諸々のアナウンスがあった。
とても無愛想な人だった。後ろの席のカップルが中々言うことを聞かない感じの人達で、お兄さんは怒りを抑えながら、諸注意を繰り返していた。
「それでは行ってらっしゃ〜い。」というお兄さんの感情0のつぶやきと共に、ジェットコースターは発射した。
乗っている最中ずっと、「座るっていいな。」と思っていた。

 

「お帰りなさ〜い。」
お兄さんは引きつった笑顔で、僕らに手を振った。
僕も手を振り返した。

 


 

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Profile

  • 落合のダッチワイフハガキ職人

    「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
    プールサイドというコンビ名で活動中。
    毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
    現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。