Hey!凡な日々 Vol.15

遅刻を許さない人へ。
遅刻はそんなに悪いことですか?

7.15, 2019

ハガキ職人:落合のダッチワイフ
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「遅刻」ってダメですよね?
「遅刻は他人の人生を奪う行為と同じです。」
これは高校時代の恩師が僕ら生徒に向かって放った言葉だ。
17歳の僕はこの台詞に痺れ、二度と遅刻はしないようにしようとその時に心に誓った。

 

しかし痺れがあまりに効きすぎたのか、朝になると体が麻痺してしまったように動かなくなり、それからも遅刻を何度も何度も繰り返した。
段々と遅刻を重ねていくうちに、自己肯定感が失われていく訳なのだが、人間の体は時計の針と同じように、常に前進するように作られているので、このままでは自己を保てなくなるということで、自衛という意味も兼ねて、22歳辺りからは
「遅刻して何が悪い」
といった至極シンプルな言葉を胸に刻み、日々遅刻を繰り返している所存である。

 

 

遅刻に過剰に反応する人々
「遅刻」という行為に、皆過剰に反応しすぎなのではないか。
タバコを吸わない人が喫煙者に向ける、あの真っ白な目を思い出す。
決められた所定の場所でタバコを吸っているというのに、「うわっ何あの人!?」みたいな表情をされるので、こちらとしてもたまったもんじゃない。是非ほっといて欲しいものだ。が、遅刻をされた人に比べ、タバコ嫌いな人はまだマシである。

 

遅刻をされて怒り狂う人は、恐ろしいことに過去に遅刻がしたことがある可能性を持った人なのだ。可能性を持つというか、誰しも遅刻の一度や二度はしたことがあるはずだ。人生で一度も遅刻をしたことがないと言い切れる人がいたとしたら、それはそれで何か問題を抱えているはずであり、かなり特殊な人物だという風に見受けられるので、論外である。
よって遅刻に対し怒り狂う人のほとんどが、過去に遅刻をした経験があるということになるのだ。まさにどの口が言ってんだ状態である。

 

何が言いたいかというと、「遅刻に怒る」という行為は、喫煙所でタバコを吸う我々に向かって「うわっ何あの人!?」と歩きタバコをしながら叫んでくるのと何ら変わりのない行為だということである。まさに、外道である。

 

 

遅刻の「100対0理論」
先日バイトを30分程、遅刻してしまった。
その日シフトが同じだった先輩は、基本的に仕事が出来ず、ほとんどの尻拭いを僕が日常的にしてやっている人だったので、ああ、大丈夫だ、ラッキーくらいに考えていた。
帰り際「今日の遅刻店長に内緒にしてもらってもいいですか?」と聞くと、先輩はふてくされたような表情で
「ふざけないで下さい。次からは、ちゃんと来てください。」
だなんて言うので、僕は呆れ返ってしまった。

 

遅刻というのは100対0で遅刻をした方が悪い。それは誰がどう見ても明らかなことである。ここを履き違えてはいけない。
「遅刻された方が100悪い!!」
だなんてのはただの暴論であり、そんな荒唐無稽なことを深夜4時に目をこすりながら、パソコンを開きわざわざ文字に起こす程、僕は間抜けではない。

 

僕が言いたいのは、相手が遅刻に対し怒ってきた場合に限り、
「遅刻された方が100悪い!!」
ということである。

 

もう一度言うが「遅刻」というのは「100対0」で遅刻をした方が悪いのだ。
何を言われようが、謝ることしか出来ないのである。
そのような状況下に置かれた人間を、許さないというのは人としてどうだろうか。

 

例えば友人から、「貸りていた漫画を無くしちゃったの。」と言われた場合、あなたは「何で無くしたんだ!!??」と真っ青な顔をした友人を更に問い詰めたりするだろうか?
詰問するのであれば、ハッキリ言わせてもらうが、あなたは人としての器がシルバニアファミリーの食器くらい小さい。
人を許すか許さないか、その全権を手に入れた場合は、出来るだけ人を許せるような人間になりたいと僕は思う。

 

「何故遅刻をしたんだ!?」
と言われたら
「謝ることしか出来ない状況下にいる僕を、更に追い込もうとするなんて、あなたは外道そのものだ!!」

 

と言い放ってやったらいい。
遅刻に対し怒られた途端、遅刻をしてしまった方もまた、悲しいかな、被害者になってしまうのである。

 

 

正しい遅刻のされ方
では遅刻されてしまった方はどうすれば良いのか。それはコミュニケーションの基本中の基本、相手の立場、気持ちになって考えれば良いのである。
遅刻してしまった方は、何を考えているかを分かれば、どのような行動を取ればいいか自ずと答えは見えてくる。
「許してほしい。」

 

である。とにかく怒らないで欲しいのだ。
僕もバイト先で遅刻をされたことが何度もある。
その時は感情的にならず、「チャンスだな。」という風に考えるようにしている。まるで困難に立たされた時のIT社長のような、思考法である。

 

後輩が1時間遅刻した際、僕は
「大丈夫〜。」と言った。
後輩は、なんて器が大きいのだろう、つるとんたんの皿くらい器が大きいわ、と思った筈である。
普通誰しもが怒ってしまうような状況で、怒らないというのは、実際かなりの得がある。ただ許すだけで、普段の行いでは決して販売できないような、恩を相手に売りつけることが出来るのだ。向こう一ヶ月は、偉そうに出来る。

 

反対に誰しもが怒ってしまう状況で怒ってしまうと、遅刻された方に「ベタかよ。」「なげえよ。」「うっせえよ。」などと思われてしまうので、非常に損である。
遅刻された際は「尊敬される大チャンス」と思って、是非我々を許してほしい。

 

 

実際の遅刻
鋭い機械音が鼓膜に突き刺さり、勝手に目が開いた。
自分の意思とは裏腹に、突然部屋の天井が目の前に現れた時は、かなりヤバイことが多い。
恐る恐る目覚まし時計を見ると、6時40分とあった。
出勤時間は7 時である。バイト先まではドアtoドアで1時間はかかる。
遅刻が確定してしまったのである。

 

今日僕と二人で店を回すことになっている社員さんは、きっともう店に着いていて、せっせと開店準備を始めていることだろう。
彼女は未だ僕が遅刻することを知らないのかと思うと、何だかホットした。
時刻表を見ると、今すぐに家を出たとしても、駅で電車を待ってしまうことになってしまいそうだったので、コーヒーを入れひとまずタバコを吸うことにした。

 

ここで「申し訳ない。」だなんて思っていても仕方がない。申し訳ないと思うのであれば、そもそも遅刻をするなという話である。それに相手にも申し訳ないと思っているんだろうな、ということは伝わっているはずなので、もう思わなくていいのだ。
いつまでもくよくよしていては、前には進めない。残酷に進む時計の針のように、心を鬼にしてバイト先に向かわなくてはならないのである。

 

「さ、切り替えていこう」心の中のキャプテンの声を聞き、僕はこれからどのような振る舞いをすれば、いかに怒られずに済むかを真剣に考えた。

 

2通りある。

 

まずは、シンプルな謝罪である。今すぐに電話をかけ、すいません、寝、寝坊です!!!と、パニック状態風な声色で謝罪をし、とにかく許してもらう。
言い訳は厳禁である。言い訳はすればする程、遅刻がさもみっともないようなことだと、相手に印象付けてしまうからである。

 

もう一つは、一旦寝るである。かなりのリスクがあるが、うまく行けば遅刻をしたこと自体をチャラにすることが出来る。

 

前に、7時出勤の店長が何時間経てども店に来なかったことがある。何度も電話をかけたのだが、留守電。
時間が経過するにつれ、店内のスタッフの怒りは静まっていた。
むしろ、店長を心配し始めたのである。
店長はその後13時に当たり前のような顔をして、店に現れた。
遅番だと勘違いしていたとのことだった。
皆は、店長の顔を見るや否や「良かった〜〜!!」と言った。
遅刻をしたのにも関わらず、「良かった」と言われてしまうのである。
皆も心配されたいなあ、という時は是非大遅刻をしてみるといい。

 

2択に迫られた僕は、前者の方法をとることにした。シンプル謝罪である。

 

駅のホームで僕は電話をかけた。
社員さんが受話器を上げた瞬間に
「す、すいません!寝、寝、寝坊してしまいました!!急ぎます。タクシー乗ります!!」と言った。
すると社員のおばさんは
「大丈夫よ。気をつけて来てね。タクシーはお金が勿体ないから、乗らなくていいわよ。」と優しい言葉をかけてくれた。

 

恩を押し売りされたような感じがして、少し嫌な気持ちになった。高いものを無理矢理買わされそうになった時と同じような感情が芽生えてしまったのだ。
遅刻が確定してしまった今、電車に乗って出来ることと言えば、記憶に残ることのないYouTubeの動画を見ることくらいであろう。
急行の背中を追う気概すら感じられない、各停にイライラしながら、僕は職場のある駅へと急いだ。
駅から、バイト先までは歩いて20分かかる。この時点で7時25分。勤務開始時間は7時なので大遅刻である。
タクシーに乗ろうか否かものすごく悩んだ。タクシーに乗れば5分で到着することが出来る。
ワンメーター分の710円を支払い30分遅刻に収めるか、歩いて45分遅刻するかを天秤にかけた時、僕は帰りに牛丼を食べようと思った。

 

常識的に考えればタクシーに乗るべきだし、僕もタクシーに乗りたいと思った。
が、この気持ちをグッと堪えることが出来れば、支払うはずであった710円が浮くことになる。つまり、710円の利益を生むことが出来るのだ。

 

遅刻をすることによって利益を生む、新しいビジネスモデルだと僕は捉えている。
それにだ、30分遅刻をしようが、45分遅刻をしようが遅刻は遅刻。例え5分遅れだとしても、こちらが加害者であることに変わりはないのだ。
5分くらい遅れたっていいではないか、と言ったような甘い考えが更なる遅刻を生むことを僕は知っている。
30分の遅刻も45分の遅刻も同じ。同じなのであれば、タクシーに乗って710円を払うだなんて馬鹿げている。よって、僕は歩いてバイト先に向かった。

 

コンビニの5メートル手前から全力ダッシュをして店に飛び込み、レジに立つ社員さんに「すいませんでした!!!」と詫びを入れた。
すると彼女は
「お茶でも飲みなよ。」
と言った。

 

やはり、やり過ぎである。
遅刻をした人間の喉に、潤いを与える必要はない。
押し付けがましい奴だなと僕は思ってしまった。
どれだけ僕に尊敬されたいのだろうか。
普段自分がこのコンビニにとってどれだけ偉大な存在なのか、分かってしまった気がして、僕レベルなら遅刻をしてもいいじゃん、みたいな気持ちにすらさせられた。最悪だ!反省したかったのに。

 

遅刻を許し過ぎるというのも考えものである。
「え?この人どれだけ器が大きいと思われたいの?器小さっ!!!」
と思われてしまう可能性があるので、是非皆さんも「やり過ぎ」には注意をして欲しい。

 

 

遅刻は「自然現象」
その後社員のおばさんは、店長に僕が遅刻をしたことを報告していたのだから驚いた。
遅刻をした人に対し「お茶でも飲んだら?」なんて平気な顔で言える奴は、やはりロクでもなかった。どの口が言っていたのだろうと不思議に思う。
帰り際店長に呼び出され、「仕事を舐めているのか。」と言われた。

 

この店長は、誠に阿呆である。
仕事を舐めていることと遅刻をすることには何ら関連性がない。
僕は仕事を舐めしゃぶってはいるが、だからと言って出勤前日に目覚ましをかけなかったことはない。仕事もきちんとやる。だからこそ遅刻をしても「お茶でも飲んだら?」と言われることが出来るのだ。

 

遅刻はしたくてしている訳ではない。
遅刻は「自然現象」なのである。
僕の気持ちとは一切の関係がない。これからも僕は自分の気持ちとは裏腹に遅刻はしてしまうことがあるかもしれない。その時は許して欲しい。

 

このコラムを読んだ人の中に、落合さんには遅刻をしても大丈夫なんだと思った方がいらっしゃるかもしれない。

 

基本的に僕は、遅刻をされたらめちゃくちゃキレます。
俺を舐めるな!!と怒鳴り散らすことでしょう。
何故なら、遅刻は「他人の人生を奪う行為」と同じだからです。

 

遅刻を正当化するのには、5000文字もかかってしまう。

 


 

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Profile

  • 落合のダッチワイフハガキ職人

    「お笑い芸人になりたい」と思い、新卒2ヶ月で勤めていた銀行を退社。
    プールサイドというコンビ名で活動中。
    毎週日曜21時からインターネットラジオ「プールサイドの25Mラジオ」を生放送中。趣味はラジオ投稿。
    現在はコンビニでバイトをしながら。日々の生活を楽しんでいる。