いいもの ほしいもの Vol.2

オレンジ色の小さなナイフ

僕の仕事は、全国各地のものづくりを見てまわる。考えてまわる。作ってまわる。そんな仕事のなかで見つけたいいものとほしいもの、あとちょっとしたことなど。

5.22, 2018

永田 宙郷
  • art&culture
  • essay
Share on

これがあれば大丈夫

少ないワードローブで季節やタイミングの雰囲気に合わせて、上手に自分なりに着こなせている人っていますよね?

限られたアイテムだからこその、工夫と組み合わせとセンスが重なってその人らしさが出せてるってほんとすごいと僕は憧れる。

 

残念ながら僕は、母親の胎内に洋服選びのセンスを置き忘れてきてしまったようで、気づけば似たような服がクローゼットに溢れ、何かタイミング毎に買い足した服は、着こなすどころか余り身体にしっくりこないまま知人や友人にあげることもしばしば。どうもうまくはいかない。(アーバンリサーチの方、ぜひコツを教えてください!)

 

だけど、僕なりに「うまく使いこなせてるな」というものがある。残念ながら、それは服ではない。しかもオシャレじゃない。なんなら危ない。

それはオレンジの柄の小さな「オピネル」の折り畳みナイフだ。僕は一枚の白いシャツを着こなすのは苦手だけど、この小さなナイフ1本で大体のシチュエーションには対応できるようになってきた。

 

手に入れたのはもう随分前。最初に持っていたのはプレーンな色の柄だったのだけど、どこかで無くしてしまい、無くしづらいように目立つ色をと思い、ちょうどamazonでセールだったオレンジの色つきの柄で、かつ革紐付きを選んだ。

折り畳みの気軽なナイフといえば、日本にも「肥後守」とよばれるシンプルなナイフがあるので迷ったけれど、肥後守だと、刃のしっかりした厚みと尖り加減が道具感が強くて、デスクに置いておくにはどこか力強さがありすぎる。なのの、やっぱりオピネルのナイフくらいがちょうどいいって結果になった。そしてポチっとした。

1890年から基本的なデザインを変えていないオピネルナイフの刃は、元々は鋼製だけど僕のはなんでもないステンレス製。おかげで手入れを多少おこたっても錆ずにすむ。折りたためば手のひらに納まるサイズは机の上でも普段のペンや鉛筆に並んで置けるし、刃物ならではの圧倒感もない。なんだったらオシャレ雑貨ですか?という雰囲気の仕上がり。お気に入りだ。

 

僕は、いつもこれを作業机の上においていて、封筒を開けるのも、鉛筆を削るのも、段ボールをばらすのも、全部これ。いわゆるレターオープナーやカッターナイフ代わりに便利に使ってる。なんなら、可愛らしいワンポイントになってる蝋引きのレザー紐は、アイデア出しに行き詰まったときに指をひっかけぶらんぶらんとさせて気を紛らせるに最適。

 

切れ味が鈍ったら、暇つぶしを兼ねて前の晩から水につけておいた砥石で軽く研ぐ。たとえ、ワイルドに肉を取り分けたりみたいな「おっ!」とおもわれそうなシチュエーションで使うことなく、毎日の文房具化させてしまってる僕でも、この研いでいる時間が「道具つかってるぜ」「自分の道具にしていってるぜ」感になってくる。

 

ときたま果物の皮をむいたり、ちょっとしたハイキング程度のキャンプでそれっぽく使ったり時にはもう道具を使いこなしている気分は高まるばかりだ。休みの日もとく何することなく過ごすタイプの僕のテンションを持ち上げてくれるのは本当にありがたい。

 

僕ぐらいのスタンスなら、ほんとこれ一本で十分だ。今日もいつもと変わらず机の上にオレンジ色の柄がころんと転がっている。

 

いつか、このオピネルのナイフと同じくらい、これで十分と思える自分なりの服とセンスが手に入れることはできないものか。



▽いいもの ほしいもの

vol.1

vol.2

Profile

  • 永田 宙郷

    「ものづくりをつくる」をコンセプトにデザインディレクターとして新旧のものづくりに異なる視点を付け加える仕事をやってます。花火の打ち上げ師や大学教授もしています。