『反骨心』を『情熱』に変えて

若手が活躍できる機会(プレッシャー)を与える

5.13, 2019

美容師 / LIM統括ディレクター:KANTARO
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私は若い頃に、沢山の人から『機会(プレッシャー)』というものを頂いた。

 

若い頃の自分には、ふさわしく無いレベルのステージに立たせてもらったし、身分相応でもない仕事も頂いた。

 

どんなに大きな仕事でも、私は『LIM』というサロンの看板を背負い、虚勢を張ってこなしてきたし、そのための努力もしてきた。

 

もちろん、求められるレベルが高いところでは、その手前味噌なスキルは見抜かれていたし、厳しいお叱りを受けることも多々あった。

 

しかしながら、有難くも、一生懸命に努力をして、なんとか食いついて行こうとする私の姿勢を評価して頂き、『期待値』を込めて大目に見てくれたり、もう一度チャンスをくれるという先輩方もいた。

 

LIMの看板を背負う。

 

このプレッシャーは、自分自身の『自尊心』や『羞恥心』をも超える、大きなものであった。

 

『自分自身が恥をかくのは良いが、LIMの看板には泥を塗ってはいけない。決して、LIMの未来を潰すわけにはいかない。』

 

そういった、大きなプレッシャーだった。

 

先ずは、このような『機会』という名のプレッシャーを与えてもらえたこと、そしてまた、若輩者だった私を暖かい目で大目に見てくれ、このプレッシャーを乗り越えさせてくれたこと。

 

そんな先輩方たちのお陰で、私はなんとかここまで成長できることが出来たのだと、今になって思うのである。

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今の私にとって、未来を背負う若者達に『機会(プレッシャー)』を与える事は、とても有意義な事の一つになっている。

 

私が若い頃にそうしてもらったように、今度は私がその恩返しという形で、今の若者に『機会(プレッシャー)』を与える番だと考えているからである。

 

先日、大阪のクラブ『joule』にて、私が主催するヘアーショー&LIVEイベントの第3回目が行われた。

 

その名は『dark side』。

 

若い子達のチリに積もった日頃の鬱積を、発散させるためのイベントである。

 

 

ヘアーショーに出演する美容師は、アシスタントやスタイリストデビューしたばかりの若い美容師達で、イベントの告知から、チケットの販売まで、すべて出演するサロンのスタッフに任せる。

 

主催者である私は、『機会(プレッシャー)』を与えるだけの『お膳立て』をするだけで、集客などに関しては一切放ったらかしなのだ。

 

しかし、これがまた、若者への教育の一つとして理にかなっていて、効率が良いのである。

 

『自分達が立つステージを、沢山の人に観てもらいたいから、自分達で宣伝して、自分達で販売する。そして、チケットを買ってご来場していただいたお客様には、絶対に喜んでいただけるような内容のショーに仕上げる!』

 

これが彼らのプレッシャーとなるわけだ。

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第3回目のゲストサロンとして、私が統括ディレクターを務める『LIM』に声をかけ、出演してもらう事になった。(あくまでも私は主催者という立場なので、出演ギャラをLIMに支払い、オファーをかけて出演していただいているわけだ。)

 

そうなった事の経緯はこうだ。

 

第2回目の『dark side』に出演してもらったサロン様のヘアーショーを観たLIMスタッフの若いスタッフたちが、私のところに駆け寄ってきた。

 

「カンタロウさん!第3回目は僕らにやらして下さい!絶対に素晴らしいステージを作りあげて、LIMの名を上げるので、絶対によろしくお願いします!絶対に、今日のヘアーショーよりも、もっと良いもの観せますんで!!!」

 

という感じで、鼻息荒く詰め寄ってきたのである。

 

彼らの目から伝わる『情熱』は私にも伝染し、その心意気に胸が熱くなった。

 

私はイベント終了後と同時に直ぐに行動に移し、その日のうちに、第3回目となる『dark side』が開催されることが決定したのである。

 

 

それから、私はLIMの看板を背負う若者たちに、何度となくプレッシャーをかけ続けた。

 

イベントとして集客がしっかりと出来て、来場されたお客様を満足させることができるか?

 

チケットの売れ行きは毎日の様にチェックし、ショーの内容は恥ずかしくない内容なのか?と監督を務めるLIMのディレクターにも何度も確認を取った。

 

『お前たちがLIMという看板を背負って、LIMの名を語って行うイベントだぞ!恥ずかしい失態は許されないぞ!』と、全体会議でも焚き付けて、彼らにプレッシャーをかけた。

 

そんなプレッシャーを常に彼らにかけ続けながら、遂に当日を迎えたのだ。

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目標としていた集客数には若干届かなかったものの、それでも、みんな必死に集客の為の告知やPRを頑張ってくれているのがわかった。

 

そしてまた、なんと言っても最も重要だったヘアーショーの内容が素晴らしかった。

 

若いスタッフ達が、みんな輝いていた。

 

舞台袖で彼らの背中を見ながら、思わずウルっときてしまった。

 

『彼らが次のLIMを背負うなら、安心だな。』

 

心からそう思わせてくれた。

 

彼らは見事に、私が与えた機会(プレッシャー)をものにしたのだ。

 

ステージで全てを出し切った彼らが舞台袖に履けてくると同時に、ハイタッチをして抱きしめあった。

 

『マジでカッコよかったよ!ありがとう!』

 

と彼らを労い、お礼を言った。

 

すると、ひとりのスタッフが私にこう言った。

 

『俺たちは俺たちの価値感があって、それを認めさせたかった。社会に対してだけでなく、今のLIMという組織に対してもです。』

 

私にとってそんな言葉は、新しいジェネレーションが大きな産声をあげた様にも聞こえた。

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彼らを強く動かしたもの。

 

それは、紛れもなく、やり場のない熱く燃え上がる『反骨心』だった。

 

そんな『反骨心』を『情熱』へと昇華させ、見事にヘアーショーの中で表現してみせてくれた。

 

私の胸が熱くなった理由はもう一つある。

 

若い頃の自分の姿をそこに見たような気がしたからだ。

 

そう言えば、若い頃の私にもそういう熱く煮えたぎった鬱積がふつふつと、ドロドロとしていた時期があったな。いや、むしろ、そういう『反骨心』の塊だったな。と。

 

彼らはそんなことを思い出させてくれた。

 

怒りや不満。不安や恐怖。

 

いわゆる、若さ故の『dark side』。

 

そう言ったネガティブな熱量は、どんな時でもとても重要だと思う。

 

何故ならば、そういったものこそが、全ての動機に繋がることが多いからだ。

 

しかし、その『反骨心』というネガティブな熱にのまれることなく、どうやってそれをポジティブな『情熱』に変えることが出来るか?

 

それがセンスだと思うし、パワーだとも思う。

 

思えば私も未だに、怒り、不満、不安、恐怖、そう言ったものに囲まれているままだ。

 

しかしそれに飲まれることなく、それを振り払うごとく、仕事に没頭している様な気がする。

 

まだまだやれる。

 

いや、まだまだやらなければ。

 

もう一度そういう気持ちにさせてくれた彼らに、本当に感謝したい。

 


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Profile

  • KANTARO美容師 / LIM統括ディレクター

    東京、大阪、ロンドン、シンガポール、香港、中国などの世界の各都市を、週ごとに点々と移動しながら働く美容師。『LIM』いうグループの統括ディレクターを務めており、ブランディングやマーケティングを行う。常日頃から『美容師の新しい生き方』を模索しており、50歳でのセミリタイアを夢見ている。いつまで経っても、怠け癖が抜けない、働き者の中年男性である。