Look Book Cook Record No.010

第10回 「 金沢 」~前半~

日々のインプレッションを画像と文で紹介するノンスタイルの連載です。

7.9, 2018

桑原 茂一
  • essay
  • travel
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この最初の風景画像は、兼六園、21世紀美術館と並ぶ金沢屈指の観光地、金沢長町武家屋敷の一角を、とある鮨屋の店先から写したものである。

 

その鮨屋へ向かう途中パラパラと降り出した雨を躱すように勢い込んだのはいいが、丁度開店前のあれこれで入店は叶わず、店先で立ち尽くす手持ち無沙汰を紛らわすように、LEICA D-LUXを覗いたのだ。もっと暗くてもいいだろうとか、もっと側に寄りたいな、とかの不満もあるが、身の丈を自覚すれば覗くのはこいつだけともう5年も暮らしている。

で、今回は新幹線が開通して初めての、そして私としては五年振りの金沢だったが、遠かった時代に思いがけず巡り会った極上の江戸前が恋しくて再訪したのだが、その名店は知らぬ間に金沢長町武家屋敷へ栄転し、更には今年の秋には二号店を金沢からなんとギロッポンヒルズに進出するというから大ブレイクだ。

 

川べりに凛と佇むカウンターだけの格別の鮨屋時代を私の記憶は懐かしむが、それはよそ者の戯言で、日々良質を懸命に続けてこその大躍進です。

まずは頭を垂れます。死ぬまで寡黙であれ!と私へ言い聞かせ次回は是非ギロッポンに伺いたい。

 

さて、そのエクセレントな鮨屋へは、私の敬愛するリリー・フランキーや茂木健一郎さんたちもお連れして愉快三昧した幸運も、実は当時金沢21世紀美術館の秋元雄史館長のお陰で、何度かトークショー企画させていただき、その折に、free paper dictionary所縁の方々を金沢へお迎えできたからでした。

 

で、当時お世話になった秋元雄史さんは、現在芸大美術館と練馬美術館の館長を兼務される美術界のオーソリティーとして活躍中ですが、この金沢の魅力を語るには、その秋元さんの著書、「おどろきの金沢」は、まさに必須&不可欠で、“ よそ者が10年住んで分かった ” とあえてよそ者と定義づけるその視点が誠に出色で、読み手を選ばず、人生をよりよく生きたい皆さんへの優れた指南書ではないかと思います。是非、ご一読ください。

 

ではその秋元雄史さんの魅力を過去のfree paper dictionary 177号でのインタビューからCUTUPしたいと思います。

 

「 今、端境期である。古さと新しさが激突している。だが確実に新しい何かが芽吹いているだろう。またこのような過渡期だからこそ生まれるものもたくさんある。私は、21 美に工芸を入れ込むことで、この対比をよりラディカルなものにしたいと思った。そうすることで、金沢に新しい可能性が生まれると信じたからだ。対比は、単なる対比では面白くない。やり取りがなければなにも生み出さないのだ。」

 

 

「まあ、大体、面白い人のところには面白い仕事が転がっているのもので、困難ではあるかもしれないけれども、できたならば、きっと面白いはずという楽観的な想像だけが、先行して始まってしまいます。」

 

「自慢ではないですが、私は劣等感の塊であり、人に誇れるような優れた能力というものは持ち合わせておりません。ただ、こうなったらば、みんなハッピーだろうなあ、という“ 夢の姿”は、想像できます。」

 

「なにか新しいことをするということは、これまでのやり方を変えていくことになるので、嫌がる人たちもいます。これを無理に変えようとするとなかなかうまくいかないのですが、全体から見てそれが必要であれば、もう、これは変えていきます。ここは勝負のしどころなのですが、このタイミングは、自分に自信(ヴィジョンが揺れることなく見えてきたタイミングと言い換えてもいい)がついたときということになると思います。」

 

「直島(地中美術館)のときも金沢(21世紀美術館)のときも、私が大満足して終わったというよりも、ひとつの区切りとしてそこから離れている気がします。もう、回りからすると70%を超えたあたりから、やり過ぎ感が出始めるので、このあたりは自分では不思議な感じですが、だからいつもなにかまだ形にしきれていないものが心のなかに残っていて、それが次への種火のようなものになるのです。自分のことはあまり考えないようにして仕事をしているつもりですが、自分の中になにかあるんですね。こうでなければいけないみたいなものが。でもそれが現場とズレてきたら、そろそろ辞める頃かなあ、と思いますね。」

 

「私の内面の満足などは二の次になるわけです。あくまでもその状況がどう改善したか、どのように展開したか、が大事です。」

 

う〜ん。今こうして読み返しても、秋元雄史さんの真摯なメッセージに再び感銘脱帽です。

(画像はホホホ座金沢提供。)

さて、今回の金沢訪問は、この連載でも繰り返しお伝えしているように、free paper dictionary 30周年バックナンバーフェアin金沢。

 

お招きくださったのは、ホホホ座金沢&WHOLEの両店。

 

 

(画像はホホホ座金沢提供。)

川が海へ交わる絶好のローケーションに存在するホホホ座・金沢

 

なんでも元鉄工所だったとか。

(画像はホホホ座金沢提供。)

多目的スペースとして多彩なイベントが行われている。

 

 

(画像はホホホ座提供。)

シックでエレガントなデザインのフライヤーに思わず感涙。

それもそのはず、このイベントの企画の主は、株式会社トーンというデザイン会社。そのデザインの才能をフル活用する魅力的なセレクトショップがホホホ座金沢というわけなのです。

 

詳しくはこちらから

つづいて、ご覧のWHOLEの代表の吉澤くんは、ちょうどお子さんが誕生されたばかりでこの満面スマイル。で、ABOUT THE LIFE ・ WHOLEは、勿論その名の通り品揃えもとても今の気分を反映していてチャーミングだ。

真鍮のtextureに惹かれる私の衝動買い1500円也。

Amabro ✖︎ FORM SHOE HORN

& パンク・ニューウェイヴ世代の一員としての面目躍如系出版物も外さずちゃんと取り揃え、訪れる外人観光客もまさかこの金沢でNY風キワモノに出会うとは風のビター・スマイル。

実は吉澤オーナーもリターン組の一人で、東京の大手家具メーカーでの経験と持ち前のセンスと行動力を活かし、リターン金沢からは店舗デザインへと拡張し、実は今回共催の金沢・ホホホ座の店舗も彼の手腕によるものとか。同じ古都同士の京都の若き吝嗇家たちと比べると金沢の商人はとてもマイルドな印象を受けた。

 

もちろん好きなことをやるにはそれ相応の努力が必要だから二足のわらじは当然のことであろう。今回訪問したお店はいづれも「二足のわらじ」がキーワードだった。好きなことをして人生を楽しむには、希望のわらじはいくつあってもかまわない。ということかもしれません。

free paper dictionary バックナンバーたちも嬉しそう。

WHOLEの周辺も小川が流れとても風情がある。ちらっと見えるのは今回の主催者たちと金沢の旬な和食を楽しんだ名店。気になる方は散歩しながらお探しください。ごめんなさい手元に情報がありません。

こちらはWHOLEの向かいの中華屋さん。金沢のお昼は千円でたらふくですね。

で、この微妙な画像は、とある東京のファッションブランドの金沢進出店の一階のエントランス。あいにくその日はお休みだった。

何気に名所旧跡が気になるお歳になったのですね。うん?待てよ、歴女って、、、きっと違うね。

 

 

 

後半につづく

画像・文

初代 選曲家 桑原 茂→


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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長

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