Look Book Cook Record No.013

連載13回 『DUET』

日々のインプレッションを画像と文で紹介するノンスタイルの連載です。

8.9, 2018

桑原 茂一
  • music
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我々の前に突如として現れるかっこいい音楽がある。

 

Jan & naomi の new album『 Fracture 』の三曲目に収められた、TIC(Requiem for Tokyo)がそれだ。

 

その衝撃に私は鳥肌が立った。この鳥肌が立つというある意味特殊な感性を持つ種族である「鳥肌族(そう多くはいないそうだが)」の一員として、同じ「鳥肌族」へこの衝撃を伝えたい。で、『Pirate Radio (通称・海賊船) 』にて『選曲』した。

 

言うまでもないが、jan & naomi は、これまでの日本には出現することのなかった異色の二人組の「DUET・グループ」だ。一見外国産(輸入盤)の様相だが実際は国内生産だ。即ち、ワールドワイドな視点と実力と容姿を備えた稀に見る美しいデュエット・グループなのだ。含意、インプリケーション。

 

そんな彼らに最大のリスペクトを込め、過去の膨大なデュエット・ソングからデュエットならではの魅力を引き出し、更には、そのデュエット曲からインスパイアされた個人的な思いを画像と文で綴ってみたいと思う。

 

で、mix cloud には、このjan & naomi の選曲航路は既に公開されています。

タイトルは『DUET』

願うならば、まずこの海賊船に乗船していただき、同時にこの連載をお読みいただけるなら誠に本望でございます。

 

https://www.mixcloud.com/moichikuwahara/moichi-kuwahara-pirate-radio-duet-0727-439/

 

今あなたがお聞きのPirate Radioは、日本時間の金曜日夜11時からほぼ1時間 mix cloudから on airされているわけですが、その時刻に、twitterのハッシュタグ、#ckpirate をtwitterに書き込むと世界のmix cloud 利用者と同時に繋がります。で、そもそもこの方法を思いついたのは、今から8年ほど前、Inter FMで Pirate Radio の放送を開始した時のことで、インスパイアを受けたのは、イギリスでの海賊放送が実際の海上から放送されていた時代を背景にした映画『パイレーツ・ロック』がきっかけでした。

 

つまり、公共放送の電波を使用する事で番組内容にとやかく言われるのなら、海賊船を海に浮かべなくても、mix cloud と Twitterを利用すれば、自由に放送ができるはずだ。と始めた実験的な試みでしたが今ではこのスタイルは当たり前に定着したようです。

 

参考資料 パイレーツ・ロック( Pirate Radioの生みの親 )

 

では、海賊船の出航です。

 

選曲テーマ『DUET』。

 

 

1. jan and naomi / C S K E Fracture ( New Album)

 

 

一曲目にアルバムの4曲目を選曲した。なぜなら、歌い頭の英語の歌詞の響きがとてもシルキーだったから、

 

Thousand years away, from the time …

 

まるで絹糸のような繊細な naomi の声が、まるで湖をボートが滑る出すように英語のフレーズが流れていく。

 

思わずうっとりするが、

 

“あなたがいた時から 長い年月が経ちました… ”

 

この意味だけを伝える翻訳フレーズに快感はない。

 

それは英語の方が歌詞のニュアンスがより理解できるという左脳的理解のことではなく、右脳の気持ち良さを無理やり左脳で理解しょうとする違和感のことで、つまり右脳で浮かぶ映像と左脳で浮かぶ映像とは全く異なる事が鳥肌族の私には問題で、そのことをもう少し紐解くなら、こんな例えはどうでしょう。

 

この夜、ある女性からは、” なんて色っぽい鳴りなのかしら。” #ckpirate とのつぶやきがあった。がこれは曲の内容を理解したつぶやきではなく、この曲にすっと包まれた時の印象だったに違いない。きっと彼女も鳥肌族だ。(笑)で、これを右脳的な呟きだとするなら、 “ あなたがいた時から 長い年月が経ちました ” この左脳的なフレーズからは粋なつぶやきはまず聞こえないだろう。

 

つまり鳥肌族は楽曲を理解する前に全身で感じるのだ。左脳のスイッチをOFFにし、右脳を自由に解き放ち音そのものに溶け込む。それこそが音楽を聴く醍醐味なのです。となれば「C S K E」の魅力は何と言っても宇宙空間に浮かぶ無重力感ではないか、そのエフェクトの妙は、二人のバランスのとれたハーモニーの美しさと、音響的な構成力のセンスだ。

2. The Everly Brothers / LET IT BE ME 2:43

 

 

二曲目、なんとこの曲は、フランス人の歌手で作曲家の*ジルベール・ベコーが、1955年にヒットさせた「神の思いのままに(Je t’apparitens)」に英語の歌詞を付けた楽曲が、1957年のアメリカのテレビドラマで使用され話題になり、1960年にデュエット・グループのあのエヴァリー・ブラザーズが歌い、世界的なヒット曲となったと記してあった。

 

ウィキペディアより。

 

 

いきなり鳥肌族が余計な講釈してしまったが、まさかフランスの曲だったとは、そう言えば、アメリカは第二次世界大戦でフランスを救った国なんだもんね。で選曲理由は、映画「アメリカン・グラフィティー」に登場するウルフマンジャックに憧れ、遂にはスネークマンショーへと辿り着いたまだ私が20代中頃に出会った曲で、改めて聞き直してみたらいかにもデュエット曲らしいハーモニーに魅了され迷わず選曲した。

 

当時世界的なスターであった 「The Everly Brothers 」の時代背景に敢えて言及するなら、日本の敗戦からほぼ10年、アメリカは戦勝国故の裕福な時代を迎えていた。その豊かなアメリカの白人社会の若者たちが、黒人音楽に触発され始まったのがロックンロールと言われているが、本当のことはよく分からない。

 

で、まだ黒人への差別が激しかった時代のロックンロールの存在は我々日本人の私たちにはきっと想像もつかないほど危険で大きなリボリューションであったのだろう。

 

そうした空気の中から生まれた若者の反抗の象徴であるrock ‘n’ rollの熱い熱波に、まるで日傘を指すように生まれたのが、このメローな「 LET IT BE ME 」ではないか?戦勝国とは言え、戦争で家族や仲間を失った社会では、キリスト教の役割はきっと大きかったはずで、この曲の持つ純粋なある意味宗教的な愛を示す歌詞と優しいハーモニーには誰もが魅了されたのではないか?つまり若者達の恋愛への憧れを代弁するには最も安全なヒット曲だった、と推察される?

 

*ジルベール・ベコー(Gilbert Bécaud、1927年10月24日2001年12月18日)はフランス歌手作曲家ピアニスト俳優

3. Peter & Gordon / True Love Ways

 

 

1965年、イギリスでは第2位、アメリカでは14位、

 

オリジナルはBuddy Hollyの曲で1958年にレコーディングされヒットしたが、残念ながら翌年に本人は飛行機事故でなくなっている。

 

で、三曲目のこの曲は「 Lennon&McCartney 」コンビによる全米で第一位になった「 A World Without Love・愛なき世界 」に続くヒット曲であったそうな。

ウィキペディアより。

 

好きでした。童貞だったあの頃は聞く度に鳥肌が立ちました。

 

今では稀ですが、つまりこの曲は童貞時代のメランコリックな気分を代弁する私の愛聴曲でもあったのです。で、選曲理由はズバリ、The Everly Brothers風のコーラスの秀逸さから。

4. Simon & Garfunkel / Scarborough Fair  Canticle 

 

 

Parsley, sage, rosemary, and thyme
“ パセリ、セージ、ローズマリーにタイム “

 

このフレーズは実は魔よけの呪文だそうです。

 

日本でいう、雷怖いの、クワバラ、クワバラ、のようなものでしょうか。

 

実は子供の頃、私の名前の桑原(クワハラ )を、クワバラ、クワバラと囃し立てられ、僕の名前は、クワハラ だ、と真っ赤になって訴え恥ずかしかったことを今も覚えています。うん?このエピソードは選曲する言い訳になりませんね。

 

さて本題、これは世にも不思議なエキセントリックなアルティメットな美しい至高の反戦歌です。

メロディーが美しければ美しいほど戦争の醜さを伝えることができるのが音楽の魅力。

 

これこそ左脳の解釈からは生まれない音楽の持つ魅力を最大限に伝える時代を超えた普及の名曲だと思います。

 

確か原曲は民謡だったとか。本当に美しいものはいつまでも継承される見本。

 

(丘の斜面に木の葉が散って)
(銀色に輝く涙が墓を洗う)
(兵士が銃をきれいに磨いている)
スカーボロウ・フェアに行くのかい
パセリ、セージ、ローズマリー、そしてタイム
そこに住んでいる人によろしく伝えてくれ
彼女はかつて僕の恋人だった

 

この曲が世界中に流れた1966年の頃は、アメリカからベトナム戦争に出征した兵士は50数万、戦死者は5万8千人とか。

 

War bellows, blazing in scarlet battalions

真っ赤な炎の中で兵隊達の怒声が泥沼の戦場に響き渡る

 

Generals order their soldiers to kill

殺せ!殺せ!敵の兵隊を皆殺しにしろ!

将軍は狂ったように叫んだ

 

And to fight for a cause they’ve long ago forgotten

確かに殺す理由を聞いたような気がするが、

もうそんなことはとっくに忘れてしまった

 

 

「間違っているが気持ち優先の翻訳です」

 

5.  jan and naomi / TIC( Requiem for Tokyo )

Fracture ( New Album)

 

 

堪らなくかっこいい楽曲を、あの頃のベトナムの戦場の真ん中に置いてみた。

 

「 Requiem for Tokyo 」この曲のタイトルに jan達の生きる覚悟を感じ鳥肌族の私は小さく戦慄するのだ。

 

I’m gonna starts a war gonna starts a war

To set the devil’s child free from the past

I’m gonna

Start the rain gonna start the rain

For the final days of my Tokyo

Requiem for Tokyo

 

もう東京はいつの間にか無くなってしまったのだろうか、

 

私は16歳で東京の青山通りと表参道の入口が交差する付近の二階建ての一軒家にほぼ間借りのような状態で岡山から引っ越してきた。この時、生まれて初めて実の母親に面会したのだ。で、中三の三学期だけを都電と呼ばれた路面電車に乗って通った青山一丁目の青山中学校。正月の三ヶ日の間中、真っ青に晴れ渡った東京の空を青山通りの空を今も覚えている。やっぱり、もう東京は無くなったのだろうか…19歳で霞町(今の西麻布)でBarを始めた頃、繰り返し聴いた 「 The Doors – Riders On The Storm 」の虚無感を思い出した。明日ベトナムへ命のやりとりに向かう米兵達の真っ青な坊主頭とあどけない笑顔が蘇る。まるで土砂降りの中を歩くように浴びるスコッチはいつまでもどこまでも明日の兵隊達を酔わせることはなかった。

 

地を這うようなJanの低く甘い声は、まるでジム・モリソンを彷彿させる。真っ黒アリたちが甘い餌に群がるような渋谷のスクランブル交差点の真上を可憐な天使達が飛び交う。そこに突如、janの言霊が無差別に44マグナムの銃弾をぶっ放す。

 

身も心もすっかり私は蜂の巣になってしまった。

6. Simon & Garfunkel / The Sound of Silence (Original Version from 1964)

 

 

最後の時まで一緒にいよう

この孤独で、崩壊した街への

レクイエムを一緒に歌おうじゃないか

僕の羽を折り

飛べなくした

この街への

レクイエムを

 

前曲の Requiem for Tokyo の歌詞でサウンドで打ちのめされ破壊された心を強く抱きしめられるように美しい少女たちにハグされるような美しいハーモニーに救われる。

 

が、この歌の根底にあるのは自由を希求する反戦歌だ。

 

世界の苦しみを美しいハーモニーで癒したい思いはそのまま力強い反戦歌でもあるのだ。これもまた普及の反戦名曲である。

 

静寂、沈黙する群衆、同じ言葉を話すが、未来のことは誰も語らない。その昔、地球の端は絶壁だと信じていた人たちは、そこから滑り落ちて行く恐怖をどのように感じていたのだろうか?彼らを愚かだというなら、この国で沈黙する私たちはもっと愚かだ。ハーメルンの笛吹き男のネズミのように子供達のように、全てが滑り落ちて行く、今日の欲望の為に未来を想像する事を止めたのだから。

7. jan and naomi City of love Fracture ( New Album)

 

 

その頃、5000000もの新興宗教が、

愛と平和の風潮に窒息していた。

これは人類の進化によって誕生した。

憲法だから仕方がないという意見もあった。

君たちは永遠に生きると言ってたじゃないか

この孤独で傷んだ街の汚染された谷底で息をし続け、

私が干涸らびてもても尚、君たちの華麗な魂を

この愛の街で

漆黒に染め続けると言ってたじゃないか

この愛の街で

青い目の双子はどこに行ってしまったのだろう

双子(僕たちの名前を呼んで)

純粋な魂達よ

蘇ってくれ

 

jan & naomi [city of love] 歌詞一部抜粋。

 

Jan & naomi のアルバムから鳥肌する私の心情をどうにかして伝えようとしたが、今回はここまでにしておく、くどいようだが、ぜひ、番組をお聞きいただきたい。

 

moichi kuwahara pirate radio duet

 

つづく。

 

 

画像と文・初代選曲家 桑原 茂→

 


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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長