Look Book Cook Records No.016

連載16回 GALLERY&THINGS「PREFAB」

日々のインプレッションを画像と文で紹介するノンスタイルの連載です。

9.9, 2018

桑原 茂一
  • art&culture
  • essay
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なんでも下北沢の駅から歩いて十数分の場所に、
三途の川を彼岸と此岸の両側から見渡す場所があるという。

 

GALLERY&THINGS「PREFAB」
がそれだ。

 

オーナーはあのPLASTICSのメンバーであり、作詞家としても名高い、島武実。
そして、その島武実をサポートするのが私とは旧知の仲である、あの、DEP’Tの創立者、永井誠治。

 

人生を思い通りに成功させ早めの隠居生活を楽しんでいた二人が一体何を思ったのか、突然友人たちを巻き込んで有り得ぬこの世のギャリーをオープンさせた。

 

以下は、GALLERY&THINGS「PREFAB」
オープンにあたっての島武実からの
決意表明文である。

 

70年代初頭から、自分の感じる空気で呼吸してきた人達。それが物であれ、スタイルであれ、時代と私達が渾然としながらも、普通に生きているという事でした。

今、振り返ってみれば、全てにおいて、2度とない時代でした。

 

音楽 ・ファション ・アート ・デザイン ・レストラン ・コミュニティ ・思想 ・移動手段 ・とにかく全ての事から、それぞれが好きな物をなんの躊躇もなくただただ集めてきた物、制作した作品等。

 

そんな人達が、なんと沢山身の回りにいることか。
こんな素早い時代になっても、結局好きな人達とは、五感で、続いてる人ばかり。

 

そろそろ年齢的にも、身の回りの物を整理して、
次の世代や本物を探してる人達に譲り渡す時がきたんじゃないだろうか!

長い時をかけてCatch してきたものをreleaseする場。( catch and release ) その様々な物が、

 

次の世代の人達の手の平で跳ねることを僕達は願っているのです。
そのプラットホームとしての役割と場所をボケ防止を兼ねて島 武実が永井誠治と創ることにしました。

 

決意表明はここまでです。

 

知る人ぞ知る二人がタグを組んで始めたとなれば、
日本のアーティストはもとより、
海外のアーティストたちもじっとしていてはいられないだろう。

 

勿論、私もその一人で、今回はそのディープで底の見えない謎のギャラリーの一端を紹介させて頂く事にする。

その日は今年最高気温38度を超えた灼熱の日曜日だった。
当初、オーナーの島ちゃんは不在で、島ちゃんの妻と名乗る素敵な女性が対応してくれた。
こちらのオープンは、木曜日から日曜日の四日間だけで、午後12時から夜8時までという優雅さ。

 

では、オーナーが戻るまで、お店のスナップ画像を撮ることにしよう。

ロシア構成主義?なぜか男たちは革命の雰囲気に弱い。
そもそも生き方が洒落てないとこんな毒のある椅子は作れない。
センスがいいとはこの事。

 

制作配置 たぶん、永井誠治

洒落がダブル&トリプルで効いている。
誰もが知ってるドラッグの名前をプラスチック製のロゴタイプで遊ぶ陳列棚。

 

毒を知らない者にはこの毒毒しいモダンなセンスは分からない。
たぶん。

 

そのユーモアを陳列した棚に、
これまたありそうで全く無い、
もちろん探しても今や見つからない
小物やガラス製品。
60’sと70’sのお宝名品の数々。

 

全て永井誠治のコレクションだと思われる。

 

この楽器類は島ちゃんのコレクションか、
はたまた友人たちのお古をバトンさせたいのか?

 

トランプをプリントした照明器具も
もしかしたら永井誠治の作品かもしれない。

 

くどいようだがありそうで全く無いそれらは、永井誠治の歴史の、記憶の、一コマといって差し替えないだろう。
運が良ければ本人からその名品にまつわる逸話が聞けるかもしれない。

物も魅力的だが、
その逸話こそが体験だ。

ネオンのデザインもまた永井誠治の得意分野だ。

 

特に1970年代をアメリカで過ごしたカウンターカルチャー世代のネオンへの偏愛は特別なものがあるようだ。

その1975年前後に私がサンフランシスコに住む、sage(永井誠治の愛称)を訪ねた頃は、お尻に蒙古斑を持つ民族性を誇示するような肩までのストレートなロングヘアーで、確か、ステンドグラスの制作にハマっていたり、ニール・ヤングやザ・バンドなどカントリーの匂いのする音楽を好んでいたように記憶している。

 

だから私のハマっていたデビッド・ボウイなどのロンドン組は

当初、気色悪かったらしく、

 

同行して貰ったシスコのバカでかいスタジアムでのゲイカルチャー的美意識で貫かれたスペクタクルなライブを見て以来、

 

ノンセックスなボウイの世界にも多少の興味を持ったようだ。

で、ゲイ文化華やかし頃のサンフランシスコで体験するパンク、

 

ロマンチックな風景とパンク、

 

シュール、の一言。

 

しかもその後、パンクに強い影響を受けたあのPLASTICSのシスコ公演の一部始終を
あのsageと体験する事になるのだから
インターネットの無い時代の
それぞれの地域に根ざした文化の独自性は
いうまでも無く見事に破廉恥だった。

面白いものは海外にしかない。
と信じ込んでいた私にも、東京とサンフランシスコとの情報格差は、
来てみて初めてわかることで、

 

今では信じられない誤解満載漫才大会だった。

永井誠治から溢れ出す極上のセンスに息を飲む。
こんなギャラリーをやって欲しいと兼ねてから伝えていたが、
やっとその時が来たのだろう。
歴史の流れに逆らって生まれる美もあるだろうが、
流れに身をまかせてようやく辿り着く美の境地もあると思う。
どちらにせよ、

 

真摯な日々の暮らしがあってのことだ。

 

ここに集合した作品やモノたちから発信するオーラは、

 

遊ぶなら命がけで遊べという、二人からの教訓かもしれない。

さて、気になっていた NAIJEL GRAPH の展覧会三日目開催中。

ナイジェルは、もう20年以上もこのスタイルを変えていないそうだ。
作品と溶け合う彼の眼力に作家の強い意志を感じる。

 

そういえば、最近ナイジェルのバッタモン注意報が発令されたようだからみなさんもご注意。

 

で、なんでも最近、Beastie Boys にその作風を気に入られ、
彼等の20周年記念エディションの発売に合わせて作るグッズに

 

NAIJELの作品が複数使用されるとか。

 

来年は NY LAで展覧会を開きたいとか、

 

間違いなくそれはすべて弾けるだろう。

永井誠治曰く、ジミヘンは日本で受けないとか、白と黒のジミヘン。黄色は無いんだ。

 

そういえば、sageは黄色のモヘアのカーデガンがよく似合っていた。

 

それって、黄色が似合う。ってことだよね。


こうしてピントの合わない、
NAIJEL GRAPH の作品を眺めていると

 

作品がより私に近づいてくる気がする。

 

彼の作品は誰もがどこかでみたことのあるものばかり、
つまり、共感度が高いと同時に、観る受け取るひとそれぞれの中にある個人的な記憶が

 

彼の作品にプラスして完成するのだと思う。

 

これも一つの体験型の展覧会かもしれない。

 

所有する喜びから体験する喜びに人間の欲望は変化していくのだ。

 

すぐ来る未来のことだ。



さて、優れたアイデアはその人の経験値から生まれるという。

 

何故なら、全てのアイデアは記憶のアーカイブ (archive)に存在するのだから。

 

” 長生きは三文の徳 ”

 

この諺を脳科学は既に実証していたということか。

 

さて長生きすることでアイデアの泉はコンコンと湧くのだが、

 

そこには難問が立ち塞がっている。

 

長生きすることで 日々劣化する 己の身体に 痛い。辛い。と屈しない

 

柔軟で 強い 精神力 が必要という   難問だ。

 

が、

 

それを 乗り越える方法 があることに今回 気がついた。

 

その魔法とは、木曜日から日曜日まで このギャラリーのお世話をする女性との 遭遇 体験 だ。

 

冒頭の文章を思い出して欲しい。

 

この「 PREFAB 」に辿り着いた時、店主の島ちゃんは不在だった。

 

で、お店番をしていた可愛い女性に私はこう質問した。

 

Q : 貴方はいつもこちらにいる方ですか?

 

A : はい、おじさんたちに変わって、木曜から日曜まで店番しています。

 

Q : そうですか。私は桑原と申します。あなたは?

 

A : ・・・ 島です。実は 私、島の 妻です。

 

Q : ガー ー ー ン!!

えっ? 島ちゃんの 奥さん?

 

A : はい、実は私、島の妻です。島の妻です。島の妻です。

が私の頭の中でリフレインした。

 

島ちゃんとは、長く顔見知りだったが、これまでゆっくり話したことはなかった。

 

ほんの二週間ほど前に打ち解け、そこで初めて彼が作詞家だということや、

 

私よりも随分年上だということを知らされた。

 

た。だから彼のことは、実は、
まったく何にも知らないのだ。

 

しかも、
島ちゃんは耳は 遠いし、
名前は 出てこないし、
私よりも随分年上だし、

 

でも、

 

こんなに可愛い女性と暮らしてるんだ。

 

その瞬間 ! 島ちゃんへのリスペクトが 百倍 アップし = 同時に = 希望が生まれた。

 

なんだそうか、柔軟で強い精神力は、可愛い人と暮らすことから生まれるんだ。

 

が、もちろん実際にはそんなことはあり得ないし出来ないよね。

 

しかし、

 

” 想像すること ”

 

ならできる。楽しかった記憶のアーカイブを呼び起こせばいいのだ。

 

もう少し、詳しくいうなら、

 

キーワードは「 AUGMENTED 」拡張の時代。

 

拡張現実と仮想現実のある生活が
間も無くやってくるのだ。

 

ざっくりいうなら、
映画を観るから時代から、
映画の主人公を体験する未来へ、

 

テクノロジーの進化は私たちのライフスタイルを大きく変えてしまうのだ。

 

だから、可愛い女性、もちろん可愛い男性でも、ワンちゃんでも、猫ちゃんでもいいのだが、

 

仮想現実が私たちの喜びを拡張し、これまでにない体験を経験させてくれる

 

未来が待っているのだ。

 

想像が現実と同化するなら、
辛い身体を持て余し、
長生きに悩む事もなくなるのだろう。
たぶん。

 

この話、興味のある方は、この本が参考になりますよ。

 

「拡張の世紀」テクノロジーによる破壊と想像 BRETT KING 著

さて、おさらい。

 

もう25年もすれば、いや、もしかしたらもっと早くに、
私たちは拡張現実と仮想現実のある生活に暮らすようになる。
らしい。

 

そうした時代に私たちの生活を豊かにしてくれるものは、やはり多くの楽しい体験の記憶だ。

 

この「 PREFAB 」にはリアルな経験の記憶が膨大に蓄積されているはずだ。

 

ならばそれを丁寧に追体験することで、
未来は間違いなく豊かになるということだ。

 

たぶん。

 

もう従来の物欲では満足できなくなる時代が来るのだからね。

 

たぶん。

 

では、明日からは長く生きている人をもっと大切にしようね。

 

25年か〜〜〜 う〜ん、

 

おいらむりじゃねぇ。

 

画像・文
初代選曲家
桑原茂→

 

Pirate Radio
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free paper dictionary
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左 島武実の息子の嫁  右 島武実  夢のカップル。

やがて ぼくは しぬだろう ずっと さきの やがてでも ぼくは やはり しぬだろう そのひ きみは ぼくをだき ぼくは きみに いだかれて すこし なにかいうのかも やがて きみの なかに のこるもの それが ぜんぶ ぼくなんだ やがて それは まるくなり もっと もっと まるくなる てんに そうだ てんになる やがて きみも いつか てんになる いまの ぼくは たくさんの ともと てんを もっている  島武実


 

▽Look Book Cook Records

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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長