Look Book Cook Records No.21

偶然と必然の交じり合う偶有性の海を泳ぐ

DAVID BOWIE の LOW が発売された1977年から
1997年のDAVID BOWIE SONGBOOKまで、
イントロクイズ的な視聴を続けたことで
音楽を聴く耳も奢侈の耳になってしまった。

大分県 湯布院・蓄音機コンサート
「桑原 茂→の奢侈の耳」

もしくは 桑原 茂→の由布院 旅情 その1

10.29, 2018

桑原 茂一
  • essay
  • travel
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劣化するものの美しさに蠱惑される
硬直する生命を鎮める「宝石湯」

自覚の有る無しに関わらず、

人間界は今も昔も弱肉強食の世界である。

 

心と身体の強い者が弱きを従え闘い功を成す。

 

あるいは 志し半ばで挫折する。不運なら憤死する。

 

いづれにせよ 強きものも 弱きものも

 

傷ついた心と身体を癒す湯を

 

「宝石湯」と呟き号哭する。

亀の井別荘 プライベート湯 画像:桑原茂→

盆地である由布院は、

 

時折、雲海に沈むことがあるそうだ。

 

今朝は霧が立ちこめる湯船に

 

ご来光が差し込んで来た。

 

その美しさに言葉を呑むが、

 

たくらみのない美は 瞬く間に昇華する。

 

過程は永遠だが 歓喜は一瞬だ。

束の間の大浴場より

 

とある友人の紹介で蓄音機に目覚め求め知り合った蓄音機の専門店、
「梅屋」
そのオーナー梅田英喜さんとのご縁で、
由布院温泉が主催する蓄音機コンサートに
選曲家としてお呼びいただいた。

 

イベントのタイトルは、

「桑原茂→の奢侈の耳」
湯布院 SP盤編

開催場所は、
温泉の湧く湖で岳本の池ともいう
金鱗湖に隣接するシックなカフェ

 

CAFE LA RUCHE

その夜の選曲は、
こちらでお聞きになれます。

 

moichi kuwahara The gramophone turns is an idea of era

さて、音楽が空気の一部でもある我々の暮らしの中では、
蓄音機時代の音楽の役割を想像するのは容易なことではないはずだ。

 

電気に頼らず
ゼンマイでレコードを回し、
鉄の針でSP盤を削り、
音楽を解凍する。
一曲、回すごとに、
その針は捨てる。

 

レコード盤が傷むからだ。

 

言い換えれば、
蓄音機は音楽を奏でるだけではなく、
「時間」そのものを手回し、
しているのではないだろうか。

 

息を殺して音楽を聴く

 

それが至福のときだと。

 

貴方には想像出来るだろうか?

 

蓄音機の時代は音楽そのものが贅沢品であり、

 

その贅沢な時間を共有する鑑賞者たちも、
存分におめかしをして集まるのだから
それはそれは、殊の外特別な時間だったのだ。

 

そんな高級な文化を
今もう一度、蘇生させようとする
この由布院は

 

私の桃源郷なのだ。

蓄音機の梅屋

 

数年前に、東京の神保町から由布院に移られた。

 

「 蓄音機の梅屋 」

 

“ アンティックな看板が重厚な門構えに
ピッタリハマってますね。”

 

“ ああ、これね、以前の職場(青土社)の
上司が開店のお祝いに作ってくれましてね。”

 

“ うん? 青土社って、”

 

青土社は、日本における出版社の一つ。神話・言語・哲学・文学・宗教・文明論・科学思想・芸術などの人文諸科学の専門書の出版社として名高い。清水康雄が1969年に創業し、現在まで続く雑誌『ユリイカ』を創刊した。

 

“ 私、元編集者だったんですよ。”

 

“ 絶句 ”

 

人に歴史あり。

 

ならば、
今一度編集して頂きたい。
蓄音機の魅力を軸に、
これまで数寄者の梅田さんが
実践されてきた人生を豊かに生きる為の
知恵をその哲学を
一冊の書籍に上梓して欲しい。

 

熱望します。

 

黄金の大きなまん丸が
そのままスピーカーです。

 

アンビリーバブルで
あまりにゴージャス。
思わず笑っちゃうデザイン。

 

音を追求するとなぜかこうなったようです。
浮かれて、お値段をお聞きするのも忘れました。

これは、中波、短波を聴く
真空管アンプ内臓のラジオです。
が、
目的はラジオを聴くことではありません。
CDデッキ、ターンテーブル、
カセットデッキ、等を
このラジオに繋ぎ 音楽を楽しみます。

 

それはもう、甘い、甘い、
遥か彼方のノスタルジックな世界。

 

きっと貴方は随喜の涙を流す事でしょう。
この快楽のお代は、40万円也。

うん?ですよね。
由布院の蓄音機屋さん梅屋から車で40分。
日本の原風景のような絶景を前にして
私は腰を抜かしました。
実は、ここは梅田さんご夫婦の
別邸でもある。農園です。
梅田さんご夫婦は、
お百姓さんと蓄音機屋さんの
二足の草鞋を履いているのです。
たった二人の農業。
その勇気に強い意思に完全に脱帽です。
安全な食で暮らす。誰もが望むことですが、実践することはまずない。
本物の数寄者に出会った感動巨編です。

 

絶句 2 !

” あれ? この写真は”

 

“ ああ、これね、私の苗字が梅田なので ”

 

“ 鋤田正義さんの作品ですよね。
確か11月に由布院にお見えになるとか ”

 

“ 縁あって、購入させてもらいました。 ”

 

縁あれば千里
あの鋤田正義さんの写したボウイの作品に
まさか、由布院で出会うとは、

 

一樹の陰一河の流れも他生の縁

 

人生に偶然はないのかも、ね。

 

それにしても、確かに、偶然は完璧だ。

翌日、CAFE LA RUCHE のオーナー、

 

伊藤剛好さんの案内で、

 

今、由布院で人気の山椒カレーうどん
「菊すけ」のご主人でもあり、
元、鋤田正義さんのアシスタントだった
菊池 昇さんを訪ねた。

 

写真は今も撮ってらして、
店内にはモノクロの重厚な写真が
いくつも飾られていた。

 

この11月に準備されている
鋤田正義さんのイベントの
フライヤーで使用されている写真も
菊池さんご自身の作品だそうだ。

 

で、話は一気に菊池さんの
アシスタント時代へタイムスリップ
私のプロデュースしたピテカントロプスを
始め、当時の鋤田さんの著名な
ら交友関係に思いを馳せ、
楽しかったあの頃の空気感を
とても懐かしんでいた。

 

図らずも
私は蓄音機をタイムマシーンと銘打ったが、
由布院の人気店を日々忙しく運営する菊池さんの時間と、
東京で小さなメディアの制作に追われる私と、
共に流れる時間は同じはずだが、
時間の感じ方もスピードも誠に
大きく違うことを
今回、またしても認識させられた。

 

過去 現在 未来

 

実は、どれもが同時に進んでいるとか。

 

いつまでも浸かっていたい
由布院の宝石湯
繰り返しになるが、
ここは紛れもなく私の桃源郷だ。

 

つづく

 

画像・文

初代選曲家 桑原 茂→

 

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情報

束の間
0977-85-3105
〒879-5102 大分県由布市湯布院町川上444−3

 

 

蓄音機の梅屋

 

 

Cafe La Ruche
0977-28-8500
大分県由布市湯布院町川上1592-1
https://tabelog.com/oita/A4402/A440201/44000040/

 

 

金鱗湖
金鱗湖は由布院を代表する観光スポットの一つです。
明治初期の儒学者・毛利空桑が、
湖で泳ぐ魚の鱗が夕日で金色に輝くのを見て
「金鱗湖」と名付けたといわれています。

 

 

■菊すけ
0977-85-5262
大分県由布市湯布院町川上1269-36
https://tabelog.com/oita/A4402/A440201/44008319/


 

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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長