Look Book Cook Records No.25

偶然と必然の交じり合う 偶有性の海を泳ぐ

GATEAUX DE NOEL 2018 
あなたと私の「今年のクリスマス・ケーキどうする?」
桜新町のサザエさん通りにある pâtissier BIGARREAUX

12.13, 2018

桑原 茂一
  • food&liquor
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まるで御伽の国のお菓子の家に紛れ込んだような、

 

「ペイザージュ ド ノエル」

 

29センチ×29センチのクッキー生地の土台に

ずっしり濃厚なチョコレートケーキや丸太のルーローモカのロールケーキ

モンブラン・イチゴのタルト・ヘキセンハウス・どれこれもみるからに可愛く美味しそう

 

すべてが美味しく食べられる。

その素晴らしい作品のお値段は:¥10000(税込)

で、グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」は永遠のストーリーテラー(storyteller)だ。

アーサー・ラッカムによる挿絵(1909年)

 

『ヘンゼルとグレーテル』 (独: Hänsel und Gretel, KHM 15) は、グリム童話に収録されている作品。

長く続いた飢饉で困った親が口減らしのために子捨てをする話。

中世ヨーロッパの大飢饉(1315年から1317年の大飢饉(en))の記憶を伝える話という見方がある。

[1] こうした飢饉の時代は16世紀末のジャガイモの耕作の始まりまで続いていた。

 

引用元: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

腹をすかした貧乏な子供たちを一瞬にして虜にするその設定の見事さに今思い出しても驚愕する童話だ。
そう優れたお話には「永遠」がいくつも含まれているのです。
貧困の家庭で実の親に口減らしの為に森に捨てられた子供達。
泣きながら家に帰ろうと迷っているうちに、突然、森の中に現れたすべてお菓子で作られた美味しそうな家。
腹をすかした子供達が、勿論大人であれ、時代を超え狂喜乱舞する地獄から天国へ直行する設定の見事さに唸る。
世代を超え、階級を超え、誰もが興奮する訳は、物語から自分なりの経験値や想像力を喚起させられてしまうことにある。
そして物語は再び天国から地獄へ急降下、飢えていた餓鬼(子供)に、たらふく食べさせ太らせ夢心地に遊ばせ、
挙げ句の果てにはその丸々と太った子供を魔女が食べてしまうというグルメの終焉人肉嗜食のカニバリズム(英: cannibalism)な筋書き。
まさに旨い美味しい話には気をつけろというシンプルな教えのようだが極上のスリルと教訓が宿っているのだ。
しかも世界はいつの時代も貧富の差も階級差も決してフラットにはならないという絶体絶命のカタストロフな教訓だ。
グリム童話は恐ろしいというが、人間ほど恐ろしい生き物はこの世に存在しないのだ。
ペシミズムと達観、キリスト教と仏教、無宗教と簡単にのたまうが、実は誰の心にも宗教心は宿っていると思う。今更ながら学びたい心境なり。
で、私は日々NETFLIX作品に転がされて生きているが、その面白さにも時折グリム童話の普遍がさりげなく仕込まれている鴨・ねぎと言えば、
旨いねぎがあるのです。寅年の私が推薦するあの田中知之さんもぞっこんの「寅チャンねぎ」をあなたに。

そもそも、なぜ私がこのお店に夢中なのか?
偶然入ったケーキ屋でその見晴らしのいいshow windowに大好物のタルト発見焦げ気味焼き色にパリの味を思い出した身体。
タルトの醍醐味は土台のしっとりこんがり&表面のお焦げ寸前の焼き色が命なのだ。
勿論中に潜んでいるカスタードクリームのフレッシュ感は言わずもがなだが、
その衝撃をズケズケ伝えそのまま仲良くなった純朴な元青年石井パティシェから思いがけない反応が帰って来た。

 

” 実は僕、あの 川久保 玲 さんに褒められたんです ”

 

なんでも、年に一度のお正月の月に、フランス大使館では、日本で活躍する優秀なパティシェをたんとたんと招き、
Galette des Rois / ガレット・デ・ロア (フランス語で「 王の菓子」を意味する。)
アーモンドクリームの詰まった平たく丸いパイをそれぞれ持参してもらいみんなで食べるお祭りを大使館で開催。
そこにフランスと関係の深いアーティストや政財界の方々を大使館に招き新年のお祝いをするという。

本来はフランスの新年には「公現祭」イエスが出現したことを祝うお祭りだそうです。
「公現祭」とは、復活祭,聖霊降臨祭とともにキリスト教最古の三大祝日の一つ。東方よりの博士 (王) の来貢,
イエスの受洗,およびカナでのイエスの最初の奇跡を通して神が世に現れたことを記念する日で,1月6日。初めローマ帝国東方でキリストの降誕も兼ねて祝っていたが,12月 25日のクリスマス (→キリスト降誕祭 ) が西方から入るにつれ,特にイエスの受洗を祝うようになった。公現祭は4世紀末頃,逆に西方教会に取入れられたが,そこではクリスマスに対して,博士の来貢が特に強調され,3王来貢の日として特にゲルマン人の間に普及した。
そして昔は本当の豆だったようですが現在は、陶器で出来た小さい飾り(フェーブ)を入れてガレットを焼きます。
その飾りの入った一切れを食べた方は、王冠を被るというゲームがある。つまり幸運を手に入れたという意味何でしょうね。
その昔は、大事な役職を決めるとかクジの役割をしていたようです。
参照元:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

 

で、pâtissier BIGARREAUXの石井パティシェが焼いたパイを食べた川久保さんが、

 

一言、” あなたのが、この中では一番パリの味に近いわね。”

 

舞い上がるのも当然です。

 

そして実は私も川久保 玲さんのパリのコレクションで二十年間音楽選曲させて頂いていたことを話し、
石井パティシエと私は仲良しになったのでありました。めでたし、めでたし、

今年の私の誕生日を祝ったケーキがこれです。

ガトーフレーズ・この店自慢の苺のショートケーキです。

 

12㎝ ¥2950(税込)

さてお立ち会い、
間近に迫り来るクリスマス・ケーキ問題。

 

その名も、Gateaux de Noel 2018

 

私の今年の選ケーキは、Delice Marons デリス・マロンに 決断判定致しました。 

フランス産の栗(マロン)のバヴァロアに洋梨のムースとカルダモンで香りづけした林檎のジュレをあわせた上品で味わい深い逸品。

 

なんとCOMME des GARÇONS.の川久保玲さんを唸らせた、あの石井パティシエ(pâtissier)が推敲に推敲を重ね、なんと試作20数回を経てついに完成した逸品が、

 

この「デリス・マロン」

 

つまり、美味しい栗。

シンプルは美しくそして美味い。

 

15㎝ ¥4500(税込)

石井パティシエ(pâtissier)のパリ時代のこぼれ話その1。

 

私が石井さんに惹かれる理由でもあるのだが、彼はフランス菓子のpâtissierになりたかったのではなく、フランス料理の「chef de cuisine」(料理の頭)を目指してパリに暮らしたのだ。シェフという肩書きは、19世紀の高級料理の源流から始まったそうだが、基本は肉食だ。箸を日常に使う私たちと違い、フォークでグサッと刺してナイフで切り裂く、ナイフとフォークの料理は、ある種マッチョなエネルギーをシェフ自身が身体に充満させて置く必要がある。ざっくりいうと、石井さんは、ウサギを殺すことが出来なかったのだ。

あの真っ白で大きな耳と小さなお口の可愛らしいウサギちゃんを大きなナイフで殺して切り裂いて食べる事が出来なかったのです。
仕方がないので、お菓子のpâtissierを目指したそうです。とても仏教的な情緒(心)の持ち主だと感じ入りました。

石井パティシエ(pâtissier)のパリ時代のこぼれ話その2。

日本人である石井さんがparisに滞在するには当たり前ですがビザが必要です。

 

フランス国籍を修得しない限り、滞在できるのは大概が三ヶ月、長くて一年までで、
普通は出たり入ったりしてやり過ごすそうですがこれにはお金がかかります。
シェフを諦めパティシエの道へ向かう石井さんがある時有名パン屋さんで修行していた時のことです。働き者で評判の石井さんはいつしか店長のような立場になって街でも噂されるようになっていました。
働き者の日本人の店長がいる有名パン屋さん、これは危ない。当然、不法滞在を取り調べる係官の耳にも入ります。
捕まえれば話題になって手柄です。が、その時はやって来ました。なんの前触れもなく店に係官が踏み込んで来ました。
もちろん店の周りも係官に取り囲まれ、外へ逃げることは出来ません。
とっさのオーナーの判断で在庫室の山と積まれた小麦粉の入った大きな袋に飛び込み息を殺して隠れたのです。
数人の係官がドヤドヤとそこにも踏み込んできます。実はあとで知ったことですが、
これまでも小麦粉の袋に隠れて見つかった不法滞在者がいたそうです。ついに係官が一袋ずつ調べ始めました。息詰まる時間の開催です。大きな小麦粉の袋を一つづつ開け、小麦粉をすくうスコップを突き刺し探ります。ビリビリビリ、サクサクサク、ついに石井さんの隠れた袋にもサクサク、もうだめだ、と思った瞬間、何を思ったのか係官たちは探すのをやめ部屋から出て行ってしまいました。
石井さんは助かった。強制送還は免れたのです。しかしそれにしても一体何分小麦粉の袋の中に沈んでいたのか?
もしかして石井パティシエはその実忍者だったのではないか?
で、救われたのは係官がフランス的自分主義だったこと。更に、幸運だったのは一部のフランス人は仕事への根気が少々足りないこと。
日本人なら途中で諦めずに最後の一袋まで探すが、フランス人は恋愛やファッションやグルメならともかく、決められた仕事を時間内に終わらせる他は余計な時間外労働はしないから自分判断で途中でも止めて帰る。
それに引き換え、何事にも一生懸命な石井さんがどの分野でも大切にされるのは当たり前のことかもしれません。
もちろんそんな苦労を意に介さず石井さんがパリで学んだ最高の哲学とは、
他者への愛の眼差しを持つこと。つまり自分の焼いたケーキで誰もが幸せになって欲しい哲学に尽きると思う。
そもそもお金を稼ぐ為にpâtissierになった訳ではない。言い換えれば自分の喜びを何よりも大切にするという意味ね。
みんなから笑顔をもらうにはうまいケーキを焼くしかない。
なら、量より質、在庫を残さない為にも質に拘れば利益は薄い。
だからケーキを作る喜びが真っ先にないとこれは続かない。しかも材料の状態や天気によっても作るケーキの味は変わる。スタンダードを守ることは決して容易なことではない。
ある意味 [頑固]な pâtissier と呼ばれてなんぼの世界なのだと思う。

さて オススメの「pâtissier BIGARREAUX」だが、

 

桜新町のサザエさん通りのチョット見落とし安い、中二階の場所にある。

 

店には私が勧めたPARISのラジオ局、RADIO・NOVAが流れている。

 

だから勧めた私でさえ突如最新のHIPHOPが流れ出してびっくりすることがる。
雰囲気はまるでパリのイケてるカフェだ。かといって、お客さんはHIPHOPとTANGOの違いも介せず、
ただのBGMとして感じているのかも、それはそれで 、ケ・セラ・セラ。
で、意外と知られていないのだが、このお店なんと朝9時からオープンで、タイミングが良ければ、焼きたてのクロワッサンもケーキもその場でコーヒーを飲みながら食べることができる。しかし椅子の数はたったの4席。
出来れば内緒にして欲しい。でもどうしてもというなら、大人のマナーを守ってね。

で、極上のクリスマスケーキを食べながら楽しむオススメの音楽選曲番組があります。

Pirate Radio のクリスマス選曲。

https://www.mixcloud.com/moichikuwahara/moichi-kuwahara-pirateradio-get-happy-for-xmas-1102-452/

Happy Xmas

画像・文 初代選曲家 桑原 茂→


情報

pâtissier BIGARREAUX


 

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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長