Look Book Cook Records No.27

偶然と必然の交じり合う 偶有性の海を泳ぐ

酒はいいものだ。
実においしくって。
毒の中では一番いいものだ。

小説家 葛西善蔵『漫談』(昭和2年)

1.5, 2019

桑原 茂一
  • food&liquor
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夜、見知らぬ駅に着く。なんとも言えない寂寥感に支配される。迎えの車を見回し、ふと目に飛び込んできたのがこのネオンサインだった。
映画の導入部としては悪くない。

 

謹賀新年
明けましておめでとうございます。

縁あって、今年のお屠蘇は「 三芳菊酒造:胡春 」を選酒しました。
胡春は新年にふさわしい多彩で華やかなお酒でした。
ちょっと気になっての「胡」の文字を辞書で調べてみました。

 

“胡 訓:えびす・でたらめ・みだり・ながいき・いずくんぞ

 

えびす 恵比寿 エビスは釣竿を持ちタイを抱えた福々しい姿の福神で、関西では「えべっさん」の愛称で親しまれている。
その語源は、異邦人や辺境に住む人々を意味するエミシ・エビスの語に由来するとされている。おそらく、生活空間の外部にある異郷から福をもたらす神としてイメージされていたらしい。

 

でたらめ 言動に全く根拠がないこと

 

みだり 漫、猥、乱り、妄、妄り、猥り、濫り

 

ながいき  酒は百薬の長とか。

 

いずくんぞ  「どうしてあるだろうか、いやありはしない。」”

 

以上が示すように 「胡」 は常用漢字とは異なり、千姿万態、バラエティーに富んだ大変おめでたい名前だったのです。

( アマゾンで購入した「胡春」¥2212 三芳菊酒造 )

しかも、あとで分かったことですが、
「胡春」は、この蔵の当主、間宮亮一郎さんの三女の名前から命名したと聞き、
なるほどこの酒は父親の愛の瓶詰だったのかと至極納得したのです。

さて、今回の始まりは、今年最初の連載なら正月らしくお神酒紹介で行こうと、
アマゾンで「三芳菊酒造」を検索し、その名前にピンときて選んだのが「胡春」だったとは、正にお正月ならではのおめでたい一期一会だったのです。
そもそも、この美味い酒との出会いの発端は、この「三芳菊酒造」のご主人の間宮亮一郎さんと出会ったことに始まります。
なんでも、間宮さんは杜氏でありながら日本盤のシングル・レコードのコレクターとしてもその名を馳せているとか、
音楽への深い愛に包まれた知人の紹介で、
その音楽愛のお陰で、実は私の過去の残骸が「三芳菊酒蔵」の片隅で現在眠っているのです。その有難いアンビリーバブルをこの連載取材を兼ねて伺うことになったというわけなんです。

 

「人生は異なもの味なもの」

 

今回は三芳菊酒造探訪の旅。

三芳菊酒造は創業明治22年。蔵元杜氏の馬宮氏は、豊臣秀吉の命により四国入りした戦国武将蜂須賀小六の懐刀の末裔です。
当時から徳島県三好市一帯を治めた武家の家柄。歴史のある蔵です。蔵のある徳島県の阿波池田は四国の中央に位置し、
日本三大河川のひとつ吉野川(徳島県)の上流で、北は阿讃の山並・南は剣山山系の連峰にいだかれた、酒造りに最適の寒冷な地域です。
お酒を仕込む水は松尾川の伏流水を使っています。松尾川は、平家の落武者のかくれ里として知られる秘境、祖谷から湧く吉野川の伏流水が源流です。当代の蔵元杜氏馬宮亮一郎氏は、基本的に一人でお酒を仕込んでいます。香りを強く出すお酒造りを目標にしているため、三芳菊のお酒は、香りと酸に独特の特長があります。まさにハウススタイルと呼ぶにふさわしい強い個性は、日本酒の可能性へのチャレンジを感じます。徳島の米と麹と水だけが創り出す圧倒的なフルーツ感。 魔法のような日本酒です。

 

魔法?

 

でも、この解説を読めばきっと納得。

 

3601004
無濾過生原酒 直詰め 責め

 

¥4,800(税抜)

 

芳醇でさっぱりとしたパイナップルジュース。
米由来の酒であることを忘れさせるマジカルなお酒。
責ならではの強い味と主張ある佇まい。フルボディ。
いちごやベリーのジャムのニュアンスも感じられる。
フィニッシュながく強い主張にあふれる。
陽気な味わい。

 

以上 転載元 三芳菊 × ウェアハウス・ジャパン
https://warehouse-japan.com/36/01/
https://warehouse-japan.com/miyoshikiku/

 

この解説の通り、この日本酒はまるでワイン。
で私がテイスティングした日本酒はこの酒。

日本酒のスパークリングです。静かに動かさずによく冷やしてゆっくり蓋をあけましょう。
フルーティーで喉越しも爽やかな泡のお酒です。二十歳のお祝いの日にぴったりかもしれません。
普通、呑んべいの二十歳はいないと思われるが、お酒の味覚にバージンな人々が初めて飲んで愉快になるお酒です。
特に女子会に似合いそうです。出来れば、飲む前にミルクを一杯とか、空きっ腹にはお酒はご法度ですよ。

 

こちらも女子会向けです。が、アラフォー世代にも喜ばれるのではないでしょうか?
常々私は甘酸っぱいは美味しいと同義語だと思っています。
この日本酒はそのバランスが見事です。
しかもとても香りが良い。
少し冷たくしてワイングラスがお似合いかもしれません。
イタリアンと併せても楽しいかもですね。

ただ、ワインのような日本酒ということは、栓を抜いたら味がどんどん変わります。
変わらない酒は変わらないケミカルが操作している可能性があります。
ワイン風味の日本酒を嗜むなら美味しいと感じた瞬間を逃さないことが大事です。
私が最初に試したのは「胡春」ですが、
最初の第一声は、
“ 甘い ”
“ 甘酸っぱい ”
からの〜複雑な芳香に包まれ、
“ これは日本酒? ”
“ でも美味いかも。 ”
で、いつもの日本酒だと侮って栓を抜いてから四、五日置いたらもう全く別物になっていた。
酒は発酵する生き物です。皆さんも扱いには充分お気をつけください。で、
どちらかと言うと、私の酒はすべて食中酒なんです。用途別に考えれば、この蔵の酒は、
おしなべてプレジャー酒ではないかと思います。
会話を楽しむ酒。映画を鑑賞しながら喉を潤す酒。メイクラブの前と後を円滑にする酒。
それにしてもこの破壊的なチャレンジ、もしかして、ロックの気配が、
とホームページを覗いたら、三芳菊酒造の通販ページにはこう記されてていました。

 

ルー・リードが1972年に発表した「ワイルドサイドを歩け」という曲をご存知ですか。
彼は自分の歩きたい道があるなら、危険を犯してでも、歩き続けることは楽しい..と言っています。
それはまさに、三芳菊の世界。日本酒の常識や古い考えに捉われずに、お客さまが喜んでいただけることだけを考えて、日本酒を作ってきました。
おかげさまで、初めて飲んでいただいたお客さまが「これが日本酒?」とファンになっていただいています。
他の日本酒とは全く異なるテイストをぜひお試しください。一緒にワイルドサイドを歩きましょう!

 

なるほど納得2、

 

学生の頃、レコード店でのアルバイトがきっかけで始めたロック・ポップ音楽コレクションを今もなお続けていることから分かるように、
このワイルドで斬新で破天荒な酒の旨味には、これまで間宮さんが収集した膨大なコレクションのグルーヴとその精神が酒作りのベースへと
どっと流れ込んでいたのですね。その足跡を振り返ってみると、

蔵の中で自作の音楽を聴かせて醸した日本酒「三芳菊ワールド」の第二弾が新登場!
見て聴いて飲んで感じる新感覚日本酒

「三芳菊ワールド LOVE&POP 純米吟醸酒」は、全国に根強いファンを持つ徳島県の個性派蔵元・三芳菊酒造が醸した、香りや味わいを「飲み」、こだわりのラベルを「見て」、蔵元が自身が日本酒をイメージし作詞作曲したオリジナル・サウンドトラックを「聴いて」、唯一無二の世界観を「感じて」いただける新感覚の日本酒「三芳菊ワールド」シリーズの第二弾商品です。

 

今年のテーマは「LOVE&POP」

 

▼左から3番目が三芳菊酒造・杜氏の馬宮さん。

三芳菊酒造・杜氏の馬宮さんが、ドラマーとして参加するバンド「the rotator」(ザ・ローテーター)が作詞・作曲を手掛けた、
「三芳菊ワールド LOVE&POP 純米吟醸酒」のオリジナル・サウンドトラックです。
https://kurand.jp/38275/

 

日本酒ロック!

どの分野にも革命児は存在する。
社会の変化に敏感であったつもりが、まったくやられました。日本酒の世界にも革新は起こっていたのです。

忽然と鎮座する歴史記念館的「三芳菊酒造」全景。

武家屋敷の面影を残す庭園。

元武家屋敷ご当主並びに三芳菊酒造代表取締役 杜氏 間宮亮一郎さん。

やはり神様も女性がお好き!
女性たちの肉体労働のオーラに圧倒された。

ここにはきっと酒の神が宿っている。隅々まで磨き上げられ木の香に包まれる何気ない整頓室にも荘厳な気を感じた。

 

酒は米が命だ。銘酒「胡春」の甘酸っぱい華やかな味の原料であるお米のDNA構造はもしかしたらこんな絵柄ではないか?

 

違います。これは最上級のケーキがお召しあがりになれる小田急線沿線にある某喫茶店のトイレに発見した可憐なレース編みアートの額縁でした。

美味いお酒を生み出すファクトリーの無造作な配置にユーモア。

爽やか笑顔に遭遇。フリーランスの女性の杜氏の宇高育子さんです。山廃酒がお得意とか、それは誠に気になりますね、を楽天で見つけました。
https://item.rakuten.co.jp/auc-yumeikan/2673/#2673

今は無き「森の翠」篠永酒造の元杜氏にして四国初の女性杜氏「宇高育子」さん+三芳菊酒造のコラボレーション。
元々山廃に定評のあった方だけあって三芳菊酒造の馬宮亮一郎杜氏も「ブランクを感じさせない良い純米だ」と言っております。
はい。是非私も試してみたいと思います。

 

まるで、ご兄弟のようにも見えるが、それぞれに豊かなご家族を持ち日夜銘酒作りに猪突猛進する二人の杜氏。美しきかな労働。

必要から生まれたデザイン。なんとも美しい。思わず民芸の美が脳裏に浮かんだ。

 

普段使いの生活用具(柳はそれらを下手ものと呼んだ)の中にこそ健全な美が宿ると賞賛した。柳宗悦

杜氏 間宮亮一郎さんのロックバンド・「the rotator」(ザ・ローテーター)は時折ここで練習に励むそうです。
爆音の心配全くご無用!とか。まさにルー・リードが1972年に発表した「ワイルドサイドを歩け」が聞こえて来る。ここはマンハッタンか。

ロックに精通している御仁の館とはこれだ!それにしてもこの巨大なカセットデッキを見よ!!担ぐか?お神輿?HipHopでんがな。

「知足者富」

(足るを知る者は富む)

 

満足を知る者は、心豊かに生きることができる。(老子)

 

この傾き加減に間宮さんの生きる勢いを感じた。まさに酒もロックだ!ドッカーン!

微笑ましい姿の駅。もちろんどこにも美は存在しない。

” 遠くへ行きたい ”
その昔、そんな歌があった。答えは、愛する人と巡り会いたいだった。会える人も会えない人も、共に人生は所詮一人旅なのだ。
多分。

行きは良い良い、帰りは怖い。通りゃんせ、通りゃんせ、
瀬戸内海に浮かぶ「工場の島」。車窓から見るその景色に船で渡った頃のメロディーが蘇る。
廃墟の島に生まれた現代美術館が大層もてはやされている。
破壊と創造、一度破壊し、白紙に新たな世界の見方を撃ち出すのが現代美術だとか。
その反面、日本の美術は破壊ではなく伝統の系譜こそが本来の姿とか。
私たちはその両方の世界の中で暮らしてきた。
思想は右でも左でもなんでもなく、たぶん中庸なのかも、と感じながら。
つまり、なすがまま、辛かろうが、理不尽だろうが、現実にそむかない。それが私たちの暮らしのリアル。
では、せめて美味い酒でも飲んで明日に備えよう。うん?でも本当にそれで良いの?
しかしそんなことは考えないのだ私たちは。そしてまたしても流されるがごとく今年も始まった。
さぁ、今年も笑って、日本酒で乾杯だ!日本万歳!

 

私は今年も変わらずワイルドサイドを歩いて行きます。
時代は途轍もないスピードで変化している。が通念ですが、
私は私のエッジみつめ、私のスピードで歩きます。
皆様、今年もよろしくお願いします。

 

そうそう、私最近、選曲に開眼したのです。性に海岸ではありません。

 

選曲とは何か?

 

そのツボにひとつまみ触れたような気がしています。
その話はまた別の機会に。

 

選曲とは?よかったらお聞きください。
選曲とは?そのかけらが今年の年賀状。
I am very satisfied。

 

テーマは、「 Revueltas 」

 

https://www.mixcloud.com/moichikuwahara/moichi-kuwahara-pirate-radio-revueltas-1221-459/

 

文・画像 初代選曲家 桑原茂→

 


情報

三芳菊酒造
https://miyoshikiku.shop/


 

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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長