Look Book Cook Records No.28

いいものもある・わるいものもある

40年後の日本 「 YMO40 」

お正月に、坊主が二人歩いて来て、
これが本当の和尚が 2 (ツゥー)

1.15, 2019

桑原 茂一
  • music
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イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の結成40周年企画として、アルファレコード期(1978~1983年)のオリジナルアルバム10タイトルの再発プロジェクト「YMO40ワイエムオーフォーティー」が、2018年の11月よりスタートしているようです。

 

そのシリーズの一枚に、スネークマンショーとYMOとのコラボレーションから生まれたアルバム「 増殖 」が、
2019年2月27日に再発されることになりました。

 

その発売を記念して、UTのコラムで連載中の桑原 茂→が、私のことですが(笑)発売元のソニーレコードからインタビューを受けました。
インタビュアーは旧知の仲の名編集者吉村栄一さん。

 

「 増殖 」から「 選曲家 」へ繋がる、私の手前味噌な独白の一部抜粋を紹介させて頂きます。

 

「 スネークマン・ショウとは何だったのか?」
あなたの疑問にお答えします。

 

Q: 私は「増殖」でなにをしたのか?

 

A: 映画で言うなら監督というところでしょうか。

 

その辺りをわかりやすく箇条書きにしてみましょう。

 

1 : 小林克也さん、伊武雅刀さん、お二人のすばらしい演技をどう引き出すか?

 

それが私のミッションでした。

 

2 : YMOとのコラボレーション『増殖』というアルバムの基本コンセプトは、

 

スネークマンショーの番組と同じスタイルを追求することでした。

 

つまり、YMOの新曲をよりパワーアップさせる為のコント(ブラックユーモア)を楽曲とMIXさせることで喜びのボルテージをフルスロットルに上げる。

 

で、増殖のために生まれたYMOの新たな楽曲は世界のクラブ・シーンを揺るがす強烈なダンス・ミュージックであり、そのパワーは当時のYMOのヒートアップする状況を一気に吹き飛ばす画期的なニューウェイヴ音楽だったのです。

 

3 : スネークマンショーはギャグ集団ではありません。最初から最後までスネークマンショーはずっと音楽番組なんです。それは『急いで口で吸え!』以降のレコードになっても変わらない。まず音楽ありきというのがスネークマンショーなんです。

 

「 音楽番組スネークマンショー選曲の変遷 」

 

スネークマンショーの初期は、映画『アメリカン・グラフィティー』の影響からドゥーワップなどが中心のオールディーズ選曲だったのですが、77年以降はパンクやニューウェイヴをよくかけるようになっていたんです。

 

日本のラジオ番組で最初にセックス・ピストルズをかけたのもスネークマンショーだったはずです。

 

当時、私がロンドンに行って、そういう音楽に啓蒙されたんだと思います。

 

Q : さて、スネークマンショーの黒い笑いは何故、繰り返し聴いても飽きないのでしょうか?

 

A : まず脚本から生まれる笑いではない。笑いの発生は、ほぼドキュメントであった。我々を取り巻く社会の中で起こっているヤバイトコに突っ込んで行く精神こそがスネークマンショー笑いの本質です。更に、それは突然現れるのです。これはスネークマンショーのブラック・ユーモアを制作している間ずっと感じていたことなんですが、演出意図を明解にしないまま繰り返し同じコメディを収録するのは普遍的な笑いを求めるからなのです。だから、

 

意味わからん!!と克也さんや伊武さんが怒ったこともしょっちゅうでした。

 

私が求めたのは繰り返しに耐えられる音楽的な笑いだったんです。

 

私の笑いに、落ちはほぼありません。

 

スネークマンショーが時代を超えて支持されるのは、これまでのコメディの歴史にはない音楽の聞こえる普遍的なブラック・ユーモアが存在したからではないでしょうか。

 

「 笑いについての桑原 茂→の勝手な考察。」

 

マルセル・デュシャンから始まった現代美術の世界は、価値観の破壊から始まるそうです。いままであったものを一度白紙にして、そこに新たな価値観を提案する。
私はそうした現代美術の価値の破壊という側面に魅了されていたのだと思います。つまり音楽の世界では、パンクやニューウェイブがそうです。
おそらくYMOの3人も同様だったんじゃないでしょうか。破壊と創造、そして「to think about 」から新たな笑いや美が生まれるという確信がありました。

 

『増殖』の翌年にスネークマンショーもレコード・デビューすることになって『急いで口で吸え!』『戦争反対』という2枚のアルバムを作ったのですが、この2枚も自分の中では既存の価値観をオルタナティヴな視点で見る音楽アルバムだったと思います。

 

ただ、スネークマンショーがヒットしたことで、芸能界に興味のない私までその渦に巻き込まれた事には困惑しました。とはいえ、その後にピテカントロプス・エレクトスというクラブをやったり、今は亡き中西俊夫さんらのMELONのプロデュースをしたり、スネークマンショーのヒットのおかげでやれることの選択肢が増えたのはありがたかったことも事実です。

 

それでも、私は自分の本業は音楽を選曲するクリエイティブ「選曲家」という意識は変わりませんでした。

 

『dictionary』というフリー・ペーパーも30周年を超え、今も作り続けていますが、

 

それも選曲家という仕事の延長線上にあると考えています。

 

コム・デ・ギャルソンのショーの選曲はほぼ20年間に渡って担当しました。

 

ラジオ作りはスネークマンショーを開始した1976年からスタートして、

 

今はインターネット・メディア「mixcloud」へ場を移し、

 

選曲番組『Pirates Radio』を続けています。

 

もうかれこれ40年以上選曲していることになりますね。

 

 

「表現の自由」とは?

 

スネークマンショーの頃は放送局からNGもたくさん出されたのですが、一方でダメな理由をちゃんと説明してもらえる時代でもありました。その後は、なぜダメかという説明もなく、誰がダメを出しているのかも不問という風潮が続いています。

 

それはきっと日本の社会がより保守化(ファシズム)の傾向にあるということでしょう。でも、その状況に絶望するのではなく、インターネット・ラジオを聴いてくれている若い人たちが世界の音楽ファンと繋がり、音楽を通して社会の問題を共に考える時代に向かってほしい。そして未来には必ず希望があることを伝えたい。そんな気持ちでいまも選曲を続けています。

 

桑原茂一(くわはら もいち)

 

1950年生まれ。1973年に雑誌『ローリング・ストーン』の日本版創刊メンバーとなる。同時にBIGIを筆頭に77年からはコムデギャルソンのファッションショーの選曲を開始し、82年からのパリコレ選曲を97年まで続けた。1976年に小林克也とともにラジオ番組『スネークマンショー』をスタート。スネークマンショーはYMOとのコラボレーションもあり、その後にレコード・デビューし大人気に。スネークマンショー後も日本初の本格的なクラブ、ピテカントロプス・エレクトスをプロデュースするほか、日本音楽選曲家協会を立ち上げるなど各方面で活躍。1988年からはフリー・ペーパー『dictionary』(http://freepaperdictionary.com)を創刊し現在30周年を迎えている。
また、現在はインターネット・ラジオMIXCLOUDで『Pirates Radio』(https://www.mixcloud.com/moichikuwahara/)を放送中。

 

以上、 吉村栄一さんのインタビューから、一部を抜粋し脚色させていただきました。尚、このインタビューの全文が掲載されるのは、増殖』「COLLECTOR’S VINYL EDITION」というボックス・セットのみになるそうです。(通常のLPやCDのブックレットには掲載されません。)

DISC 1

1. ジングル”ワイ・エム・オー”
2. ナイス・エイジ
3. スネークマン・ショー
4. タイトゥン・アップ
5. スネークマン・ショー
6. ヒア・ウイ・ゴー・アゲイン~タイトゥン・アップ
7. スネークマン・ショー
8. シチズンズ・オブ・サイエンス
9. スネークマン・ショー
10. マルティプライズ
11. スネークマン・ショー
12. ジ・エンド・オブ・エイジア

 

桑原茂一の「スネークマン・ショウ」とのコラボ。 当初は10万枚の限定、
10インチ・ミニアルバムという変形でリリースされたものの、 オリコン初登場1位。ちなみに同週セカンドが3位、「パブリック・プレッシャー」が13位、 ファーストも20位と、当時リリースされていたYMOの全てのアルバムが20位内にチャート・イン。 企画物的にとらえられがちだが、「ナイス・エイジ」「シチズンズ・オブ・サイエンス」 「エンド・オブ・エイジア」等楽曲は充実。ちなみに細野曲は1曲も無し。 「増殖人形」でお馴染みのジャケット写真は、「フジ・カセット」宣伝用に撮影されたもの。
<オリジナル発売:1980年6月5日>
https://www.sonymusic.co.jp/artist/YellowMagicOrchestra/discography/MHCL-207

 

文・初代選曲家 桑原 茂→


情報

「増殖」 発売日 2019年 2月27日

YMO 40
http://www.110107.com/s/oto/page/YMO40?ima=2449


 

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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長