Look Book Cook Records No.30

とある日の出来事
haircut・KAZE → vinyl・bonjour records → 三好耕三 写真展・PGI→
Onion tart・LE CAFE DU BONBON → art school・高木 完

2.7, 2019

桑原 茂一
  • essay
  • music
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前回の連載29回目で紹介した三好耕三さんの展覧会を開催している写真専門のギャラリーPGIを後にして、
数歩歩くと突然目の前に、
デカイ!
真っ赤に燃える東京タワーがそびえ立っているではないか。
ギャラリーの薄暗いモノクロームの世界に長く居た所為で対極の極彩色に虚を衝かれたのだ。

 

その日の始まりはヘアーカットだった。
店の名前は「KAZE
ごらんのヒゲモジャの男性の風貌からは想像しにくいのだが、
この美容室のオーナーの寺尾博成さんは異常に繊細な心のプロフェッショナルだと思う。
類は友を呼ぶ。
なんでも、とある技術系サラリーマンの顧客は、自分の望むヘアーカットを図面で表し持参し、注文を毎回ミリ単位で出すそうだ。
にも関わらず、寺尾さんは数年に渡り黙って注文通りにミリ単位で整髪し、その顧客が地方へ転勤する最後に訪れた時に、
彼は初めて、” 貴方の好きに切ってくれ ” といったとか。淡々と無表情に寺尾さんはこんな話をする。
Peaky Blinders Soundtrack
実はこのkazeの寺尾さんに髪をカットしてもらうきっかけは、この連載の第七回で熱く紹介したスタイリッシュでご機嫌な選曲とストーリーの緻密さで話題を呼んだNETFLIXのヒットシリーズもので、そのアイリッシュ・ギャングの主人公のヘアースタイルに魅せられ、おいどんも日々にもっと気合を入れるぞと訪れたのだが、いざ鏡を前にすると怯み、二度目に意気込んでドアを開けたら、なんと熱く語ったPeakyBlindersのヘアースタイルそのままの若者が振り向いた。う〜ん、寺尾くん流石プロフェッショナルだ。感心すると同時にまたもや腰が引けた。で、この日が3度目になる訳だが、私があなたの髪をなぜこのようにカットするのか?時折、手鏡で私に確認を求めながら黙々とカットしていく。それを数回リフレインすると見たことのない顔に出会った。その一瞬心地よい風が吹いた。まるで人知れずひっそりといい歌を歌っているミュージシャンに偶然出会った時のような風が頬を撫でたのだ。札束で頬を撫でるのはPeakyBlindersとABEファミリー、そんな話ではなく、KAZEは、今暫く通いたいヘアーサロンになりそうだ。

素敵なトリオ・ザ・KAZE 真ん中の一悶着起こしそうな眼光男子は小耳に挟んだのだがしばらく前にバックパッカーでアメリカを旅しているらしいから実はマッチョかも。
右端の可憐な乙女は外見とは裏腹に超プロのシャンプーマスターだ。流し足りないとこありませんか〜の、か〜〜あぁ〜〜が幾分ロングだ。
お陰で私の好感度シャンプー経験ベスト3にランクインした。 kaze ご贔屓の要でもある。

vinyl&CD・bonjour records
このショップのサウンド・システムにいつもやられる。いい気持ちになって買って帰り自宅のシステムで再生して????私は何をお求めになったのかしら?とはいえその優れたサウンドシステムで視聴して確かめて購入できるのは当たり前だと言いたいところだが、この日本では数少ないありがたいshopだ。例え半分外しても気に入った音楽に出会えることが選曲家の私には何よりも嬉しいからだ。更に、私の顔を覚えてくれるスタッフがいるショップほど心強いことはない。いい音楽と出会うには当たり前だがコミニケーションが必要だ。と言って海外と違って働いている人の名前を聞くことはまずない。というか、仕事に仕事以外を持ち込まない日本的なシステムでは不審がられるから聞くことはほぼ無い。稀に名刺交換をして話しやすくなることはあるが、で、私はジャンルも何も関係なくいいものに出会いたいので、聞くしかないのだ、ここのスタッフは特定のジャンルに精通してるが、私のような無差別選曲家にも快く対応してくれるのが嬉しい。私は彼らのような音楽通らしい共通言語を持たないので、数回通って、私の買ったvinylを覚えていてもらうことからがコミニケーションの始まりだ。最後に買ったのは友人のネリー・フーパーが関わっていたので視聴なしで購入した。レベルの高い内容にご満悦購入だ。出来ればあのサンドシステムで聴いてみたい。アナログ・レコードを購入する客は少ないそうだが、vinyl派の私には大切なshopだ。

『Origins: The Roots Of Soul II Soul』いいものは新しいも古いもないよね。音楽の深い喜びを聴く人に応じて堪能できる作品だ。

 

さて、可愛いスタッフたちがいる店、それは論なくご贔屓の要ではある。が、可愛いの前に、プロフェッショナルであることが大前提でもある。
今更私が指摘するまでもなく、昨今、男女を問わずプロでイケてる若者が働くお店が続々と増えている感触を伝えたかったのだ。
つまり、ジャンルを問わず、どの業界もこれまでのシステムからの脱皮し、希望の未来をリアルに模索しているということだ。
今後生まれるオルタナティブな物販業に注目したい。

うまい。これまでの人生で一番うまい玉ねぎのタルトを食べた。うん?もしかして初食?
とフランス菓子教室の先生であり,代々木八幡で週末だけオープンする「LE CAFE DU BONBON / l’atelier du bonbon」のオーナーでもある、久保田由希さんにその感動を伝えたら、根気よく玉ねぎを炒めることです。フランスの定番料理です。当たり前のことを当たり前にしているだけ、と達人のクールな回答。当たり前、という響きで思い出すのは、アタリ前田のクラッカー!がスポンサーだった、白黒画面の時代劇のテレビ番組「てなもんや三度笠」。その主役級だった馬面の藤田まことが好きだった。世間では、その後の必殺仕事人の方が有名だが、あの時代の藤田まことたちの繰り広げる笑いの可愛さは、まさに日本の伝統芸でもあると思う。日本人は本来可愛い民族だと思う。そしてその可愛さの中には、当たり前を当たり前にやることの大切さを大事にする人のことだと思う。それを伝統芸能と呼ぶこともあるだろう。私が普段言葉にする「可愛いさ」の意味の中心には、心の可愛さがあるということなのだ。
美味しいものを作る人とその出来上がった美味しいものはとても互換性があると思う。
私は可愛い人が作る販売するお店にこれからも惹かれ通うと思う。のさ。
LE CAFE DU BONBON / l’atelier du bonbon

高木完との付き合いも1982年のクラブ・ピテカンのオープン時からだから、37年にもなるが、二人だけできちんと話したことはこれまでなかったかもしれない。
今も、ピテカンのオープンはいつだっけかな?とググると、ピテカンをさも訳知り顔で書いている輩がいるが、
本当のことはいつもいつまでも闇に包まれていると思って頂きたい。フロントに立って何かを始めれば良い評判ばかりはない。
最近気が付いたのだが、真実というものも人間の身体とよく似ていて、どこかが壊れているがどこかは修復している。
つまり完全な健康体というのはなく、常にそのバランスが問題なんだと。
良い評判は嬉しいが、それしかないのは誠ではない証なのかもしれない、と最近は思うようになった。
そう完ちゃんとは確か、新宿のACB・HALLで東京ブラヴォーを観覧してピテカンの箱バンになって欲しいと頼んだのが始まりだったと思う。
今、ACB・HALLを検索したら50周年のアニバーサリーなんだね。私には縁がない場所だが、続ける姿はジャンルは問わずすべてリスペクトです。
で、私の印象なので、本人は嫌がるかもしれないが、本当にモテる男だ。いつも少し年上に見える美人と一緒だった記憶がある。
最愛の妻を無くした後の妻への思いを側から見ていても胸に迫るものがある。完ちゃんは深い深い愛情の中で育った人なのかもしれない。
で、今回、完ちゃんに会ったのは、代官山TCでの2回目の講座を6月にお願いする打ち合わせだった。
https://daikanyama-tc.com/artschool/044
で、話は何故か内田裕也さんの大晦日に開催されるニューイヤーズロックフェスになり、畑違いだと思って参加したはずがいつの間にか常連のようになり、いよいよ本気になっているとのこと。この辺りの乗りは私には門外漢だが人生をロックに突き動かされた人々のエネルギーが一堂に会することで誰も彼もを本気のロックにインフェクションさせてしまうのではないだろうか。37年前に新宿のACBで感じた完ちゃんのエネルギーは私には熱いロックそのものだったから。ある意味先祖帰りでもあるのだろうか。で、人は若い頃の美しさに固執するが、年を重ねることでしか生まれないその人だけの経験が人の本当の美しさを作るのだと思っている。
完ちゃんはいつまでもモテるだろうな。

文・画 初代選曲家 桑原 茂→


 

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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長