Look Book Cook Records No.31

パリは燃えているか?
確かにパリは揺れていた!
反政府デモ!反ユダヤ主義への反旗!
カール・ラガーフェルドの死去!
2019年2月9日から2月20日までの12日間
私はパリに滞在した。
そこで見聞きしたことを数回のレポートで紹介する。

2.26, 2019

桑原 茂一
  • art&culture
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第一話。「私たちはあなたを裁きます。」

「CRS、私たちはあなたを裁きます!」死者は公表されていないようだが今も沢山の方々が拘束され怪我人も多数出ているようだ。
共和国保安機動隊(フランス語: Compagnie républicaine de sécurité, CRS)は、フランス国家警察の警備警察部隊。

突如、耳を劈くような、けたたましいサイレンが鳴り、重厚な警備隊の装甲車の長い列が暗黙に市民を威嚇する。
毎週土曜日に繰り広げられる反政府デモは今も変わらず続いているからだ。
と同時に反政府デモへのパリ市民からの突き上げも厳しい。
なぜなら、一つは、興奮したデモ隊がパリの街をより快適に移動する為に無料で用意した電動自転車などを始め、無差別に器物破損をくり返したからだ。
それはパリを愛する人たちにはデモの精神は理解出来ても手当たり次第に破壊し燃やすことは理由如何に関わらず思想とは無縁の暴力行為に映るからだ。
もう一つは、毎週末のカキイレドキの土曜日を潰されるからだ。
反政府デモ行進のルートは毎週変わるので、そのルートによって直接被害を被る商店街の人々はからのデモへの嫌悪感はより一掃強まっているようだった。
黄色い人たちと称される反政府デモが今後どうなるかをパリに暮らす友人たちに聞いてみると、あるひとは革命が起こるといい。またあるひとはただの欲求不満だという。
パリに来て改めて感じるのは、パリに暮らす人々は精神が強いと思う。
つまり、自分の身は自分で守るを原則に、人としての自立が確立しているからだ。
その反面、日本の情報はまるでファシズムの国のように情報が一元化されて伝わるから、パリ危ないから、パリは凍りつくほど寒いから、と過剰に反応してしまう。
そもそも戦後、自由という言葉の概念そのものが他国と日本は異なっているのかも知れない。
パリの人たちは、本当の自由を得るにはそれなりのリスクを追う覚悟を身につけているように思う。

 

「自由の為には命を賭けて戦う」

 

大げさな言い方だが、革命を起こした市民たちの末裔が暮らすパリ市民にはその精神が受け継がれているように感じる。
死を覚悟するほどの自由への思いがあるから、黄色い人たちが真剣に反政府行動に出るのも分かる。
一方、反ユダヤ主義に対しては多くの文化人や政財界の人々が街へ出て市民へ直接訴えかけているようだ。つまり経済や文化を担う人々も当然だが自分の損得だけではなくこれまでの歴史をよりベターに継続させる責任感をしっかり持っているのだと思う。
美しいパリの街が「命がけの恋」に似合うのは、
自由への責任を命がけで守る人々の思いがあるからなのだと一人納得した。

夜のパリはロマンチックだ。

夜のパリはロマンチックだ。

Parisに暮らす大人たちの恋には人種も性別も年齢制限も社会的ルールもすべて無縁なようだ。
もしかしたら恋する心を忘れた瞬間に、パリジャンもただの人に戻ってしまうのではないか。
死を恐れた瞬間に恋する心も萎んでしまうかのように。
人からどう思われようとも完膚無きまでに気にしないパリ。
心に赴くままに生きる自由な精神の人々が暮らすパリ。
曖昧でそこそこで生きる人には楽しめない街であると言っておこう。

Karl Lagerfeld Le dernier empereur 「 最後の皇帝 」
Monstre sacre’ 「 聖なる怪物 」
カール・ラガーフェルド死去!
訃報がパリの街を駆け抜けた。
パリのあらゆるメディアが一斉に KARL LAGERFELD 哀悼の意を報じたのだ。
もしかしたら国葬級の葬儀になるのではないか?
そのイメージが映画のワン・シーンのように浮かぶ。

 

「私は処女の森の動物のように消えたいのです」

 

と彼はしばしば繰り返した。とか。
この悲報を東京で聞いていたなら、シャネルのデザイナーが亡くなった。
で終わっていただろう。

 

しかし、私はパリにいた。

 

反政府デモで湧くパリで、シャネルのデザイナーが亡くなったのだ。
「戦争ではなくファッションを創ろう!」
モデルらがデモ行進、「シャネル」15年春夏
美しさを武器に平和を訴えるデモ行進!
粋なことをやる人だった。
カールさんに私が初めて注目したのも思えばあのデモだった。

パリは東京に比べればとても小さな街だ。
だからでもあるが、街が一つの生き物のように敏感に反応する。
一斉に怒りをぶつけ、一斉に喜びを分かち合い。一斉に哀しみに暮れるのだ。
誰もが、あれ程の人はもう出て来ない。と、
この取材でお世話になった旧知の仲でもあるファッション・デザイナーの入江さんは哀しみを堪え陽気にこう私に話してくれた。

 

” カールは常に誰も知らない新しいリゾートを発見し、それをみんなに提案するような人で、常に遊びの先頭を切っていたわね。”

 

遊びを仕事に、仕事を遊びに、本当に自由な人だった、とも。
人間が成し得る最高の喜びを常に実践した人。
だから誰もが憧れ尊敬していた。
享年85歳。
日本で暮らす私たちには信じられない年齢である。
若いというのは実年齢とは無縁で、眠りから醒めた瞬間にやりたいことが溢れているエネルギーのことではないだろうか。
幾つであれ人生を最後まで現役で生きる。
年齢不詳はある意味その人の勲章かもしれない。

「生まれてきた来たことへの最大の復讐は死ぬまで最高の贅沢を放蕩し尽くすことだ。」

 

どなたの言葉だったか忘れたが、
贅沢は敵だと教えられ、戦争に負けた国民の末裔でもある私たち日本人は、
カールさんの死をどう受け取るべきなのであろうか。

 

人間は何故生きるのか?

 

ファッションに魅せられたことへの回答は何か?

 

最後の皇帝

Karl Lagerfeld さんの黄泉の国への旅立ちは、
ここで生きる私たち人間への本質的な問いを遺言にした。
そう、まるでキリストの復活のように。
亡くなったが、生まれ変わったのだ。
これ以降、「 Karl Lagerfeld 」 の美しい遺産に私たちが触れる時、
彼の残した「 楽しく生きるバイブル 」を読み解く事になるのだと思う。

 

合掌。

 

 

文・画像 桑原 茂→


 

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Profile

  • 桑原 茂一

    初代選曲家、毎週金曜日夜11時Mixcloud PirateRadio(海賊船)、 創刊1988年 free paper dictionary編集長