下町。Vol.1

リアリティに立ち向かう人達の文化は静かに呼吸し続けている。

6.19, 2018

TRAVELING COFFEE 店主:牧野 広志
  • essay
  • food&liquor
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東九条の一画、

人はここをトンクと呼んだ。

お世辞にも綺麗な町とは言われなかった・・

 

映画 「パッチギ!」の舞台にもなった地区でもある。

 

その昔、0番地と呼ばれ鴨川沿いにはバラック小屋が建ち並び存在したのは、もはや都市伝説でしかない。

 

京都駅南側に位置する下町は時代も変わり、誰が言ったか昔の様な「行ってはいけない」雰囲気も薄れた。

 

高齢化の進んだ地域は地上げが進み、ホテルがここぞとばかりに立ち並び開発が急ピッチで行われている。

 

お地蔵さんも古い町並みと共に祠の中から消え、地蔵盆はいずこえ?

消えゆく町の匂い、

その中に一際美味いお好み焼き屋がある。

酒場詩人、お酒の神様と呼ばれるあの緒方が京都入りした際には100%の確率で必ず「M君、青大将のいるあそこに行こう」と一声かかるお店だ。

 

トンク スリートップの一軒と言っていいでしょう。

 

この辺りは、お好み焼き屋、焼肉屋、韓国料理店、精肉店、キムチ屋の名店が多いのだが、この店だけはある意味別格である。

 

「本多」、この町を知る人なら必ずと言っていい程通る道、

 

うまい、ただ美味いだけじゃない、とにかく美味い。

 

明らかに他のお好み焼きとは違いポテンシャルが無意識に高いのだ。

 

噂を聞いて行きたくても行けない場所、

 

だったはず、、

が、

 

先日、行くと外国人観光客がいるではないか、、、

 

おや?

 

ちょっと寂しい気持ちになったのは事実だ。

 

それがいけないわけでは無いが、なんだか特別なフタを開けられてしまった感はある、

 

こうして、都市開発は進められ忘れてはいけない歴史と事実が消えていく・・

あの場所で半世紀以上に渡り力強い猛者達に支持されてきた名店。

あと何年、「本多」でお好み焼きを食べられるのか、

これは非常に大きな課題であり、危機感でもある。

京都には貴方の知らないもう一つの顔があり、知ってはいけない空気を放つ場所が存在するのも確かだ、

マイコーナー

 

東九条 お好み焼き 本多

 

食べてから語るか、食べずに語るか、もう時間は無い。

 

 

そして、食後のコーヒーは、

本多から北へ徒歩3分程の所にある自家焙煎「珈琲館仙佳」。

焙煎機界のメルセデスと呼ばれるドイツPROBAT社製で焼き上げるコーヒーはアッサリ系で、胃の中で地ソースを落ち着かせてくれる。

 

40年近く地元の人に愛される喫茶店。

 

いつまでもこの場所にあって欲しいと願う店が集う町。

 

そんなブロックを愛して止まない。

 

この町を知って語るか、知らずに語るか、

奥深さと根深されは測りきれない。

 

張り詰めた空気感など決して無く、笑顔と笑いの絶えないそんな下町文化は、小さな形になっても受け継がれて欲しいと願う。

 

勘違いと噂話は抜きにして、今生まれ変わってしまう街を存分に味わって欲しいと思っているのは、私だけだろうか。

 

リアル京都はそこに存在する。

 

「お母さん、いつもの焼いて〜〜」

 

今日も細い路地からこだまする声。

 



▽下町。

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Profile

  • 牧野 広志TRAVELING COFFEE 店主

    1966年生まれ。
    94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
    2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。

    -TRAVELING COFFEE -
    昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
    図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
    珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。