下町。Vol.2

この町はエネルギッシュに蘇る。

7.2, 2018

TRAVELING COFFEE 店主:牧野 広志
  • essay
  • food&liquor
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内浜。

昔はそう呼んだ、

 

誰が言ったか「七条からあっちに行ったらあかんでぇ」と・・

 

なんで?

 

京都駅から東へ歩いてたった数分の地域、

 

申し分無い絶好の場所であり、最高の土地である。

 

まさに神の様な立地条件。

 

昭和の50年代から土地開発を試みた誘惑の不動産、

ここを崇仁地区とメディアが書き上げ瞬く間に吊るし上げの様に載せられた、

 

そして事が起こると叩かれた、、

長年曰く付きの土地と言われ、紳士達によって開発が進められた。

 

が、

 

幾度となく話しは流れ、

 

忘れ去られ、、

 

塩漬けの土地とまで言われたのだ。

 

理想と敗北。

 

そして、ここもまた高齢化のビッグウェーブが来ている、、

 

一世代限りの地、

 

取り残されたかの様に歯抜け状態の土地、

 

祠の中のお地蔵さんもどこかへ、

この町特有の魅力でもある迷路の様な路地は消え、有刺鉄線で柵が張りめぐらされていく

いったい何十年眠っているのだ、

 

2017年、

 

その地区が、、

 

ついに動き出した。

 

この場所に京都市立芸大がやってくると・・・

 

興味深く、また斬新に蘇る町。

 

・・・

さて、この町にも、美味しい店がズラリと名をあげる。

 

人情深く、名店揃い。

東九条と並び、ここ七条もまた粉もん天国。

 

そして、この地域ならではのソウルフード「ちょぼ焼き」。

 

今は無き、ちょぼ焼き「トッコちゃん」はあまりにも有名だ。

四角い銅板に、たくあん、コンニャク、お豆さん、ネギ、をパラパラ入れて、溶いたメリケンを流し込む、ちょろっとお出汁をかけて炭火で焦げが付くまで焼く。

これで一枚40円、肉入りは一枚50円。

 

まぁ、だいたい5枚スタート、

スプーンでこねこねしながら食べるわけです。

 

もう一つのソウルフードは「フライ」、「天ぷら」またの名を「洋食」、赤、白、

いわゆる揚げ物です。

白はミノ、赤はレバーの揚げ物、これに甘口か辛口、もしくは甘辛のソースをだくだくにかけ爪楊枝で揚げたてをサクサク食べる。

一個50円、

 

七条「保ちゃん」もまた有名なフライ専門店だった、、

だった、とはトッコちゃんと同じく今はもう無くなってしまったからだ、、

 

ここに行くと保ちゃんのお母さんに、

「ご飯は自分で持ってきぃやぁ~」

「飲みもんは表の自動販売機でこうてなぁ」

と、

串のフライをおかずに飯を喰う。

お会計は当然300円にも満たない、、

 

お母さんそれじゃ商売になりまへんがな・・

 

しかし、それでいいのだ。

 

あとはお母さんと世間話をして日が暮れていく。

 

須原通りの高架を潜りちょっと八条側に行けばここには「糸ちゃん」と言う名店あり。

 

鍋焼きうどん を目当てに行く人も多いが、

ここの 中華そば がたまらなく美味しい。

少し甘みを感じるスープでありながら、あっさりと、さらに奥行きがある味、

スルスル食べれてしまう。

美味しい。美味しいのです。

黄麺もイケる。

黄麺とは名前の通り黄色いわけで、いわゆるカレー中華そばの事、

 

ここにも当然ミノフライとレバーフライがメニューにセットアップされている、

 

中華そばに、フライを食べるのが私流。

 

と言うか、掟か。

 

崇仁地区に行けばソウルフードを食べるのが礼儀の一つでもある。

 

いや、そうあるべきだ。

 

そしてよくハシゴをした、

 

コースは数パターン、

 

お好み焼き「あいこちゃん」で油かす入りのベタ焼きからスタートで、

「トッコちゃん」でチョボ焼きに田楽食べて、

「保ちゃん」でフライ。

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「糸ちゃん」スタートで中華そばとフライに、

「よりみち」で焼きそば、

「なかがわ」でスジべた焼き。

あげ出したらキリがないくらいうまいもん屋だらけでコースパターンも無限である。

 

コーヒーは「喫茶イブ」

ネルドリップで淹れたアイスコーヒー加糖がお昼後のお腹を落ち着かせてくれる、

時代も変わり、無くなりゆく名店もこれまた多い、、

 

なんとも悲しい限り、

 

なんせ、開発ラッシュ、、

 

隠しきれない一大プロジェクト。

 

そんな中、

 

突然地上げ開発地区の一角に登場したのが「崇仁新町」

ネオスウジンと人は呼ぶ。

「本当にこの場所でやるの?」と何度も耳を疑った、

 

嬉しいやらなんやら複雑であったのも確か、

 

しかしながら、

 

屋台村は兎にも角にも大流行り。

 

この屋台村の登場により、ちょぼ焼き と フライ は一気に脚光浴びた、

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そしてこのソウルフードを筆頭に瞬く間に人気スポットとして崇仁地区を盛り上げてくれたのだ。

 

昔、この地区を舞台に何があったかなんて忘れてしまいたいのが事実であり、忘れて欲しいのが真実だ。

 

この地区は新しく蘇る権利を持っている。

 

アナザーサイド、

 

アナザーキョウト、

 

京都の玄関口の一つは勝手口から姿を変え門柱の一部となりつつある。

 

それでも残りゆく味、そこが魅力の下町文化。

 

オン・ザ・コーナー

 

ようこそ京都へ。

 



▽下町。

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Profile

  • 牧野 広志TRAVELING COFFEE 店主

    1966年生まれ。
    94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
    2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。

    -TRAVELING COFFEE -
    昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
    図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
    珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。