下町。Vol.5

はんなり感とドラマチックに生きる町。

9.4, 2018

TRAVELING COFFEE 店主:牧野 広志
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東寺道 カマゲン!

 

竹田街道交番前の南北バブルで夜が明けて、

 

さて、

 

山王交番横の東寺道を東に行ってみよう。

 

ここから先は未開発地区が多く、細い路地はまだ夢の中だ。

 

とは言っても、目には見えないゲストハウスが増えているのは確かである。

 

この細い道に入るとすぐに昔ながらの八百屋がある。

いわゆる板の上に並べるタイプのド渋な八百屋だ。

自宅の表札も目に飛び込むディープスタイル。

こういう所で買う野菜や果物はどことなく美味しく感じるのは何故だろう?

 

店先の商品に愛情があると言う事なのか、

 

売り手と買い手の、たわいも無い日常会話とその笑い声によって熟するのだろう。

 

この路地にはまだまだそんな光景が残っている。

 

さらに細い道を東に、

 

この辺りは迷路の如く細かい路地が無数にある。

 

ここは間違い無く京都なのだか、いろんな意味で ”はんなり感” は無くコテコテ全開で妙に肌に合う。

 

山王学区、レペゼンが強烈に強い地域だ。

 

一本二本と南の細い筋を横目に東に進むと一つ目の交差点が出てくる、一瞬道が急に広くなる。

 

20メートルほどだけ、、

 

なぜ・・・?

食堂が一軒、キムチ屋が一軒、

 

また急に道が狭くなる、

 

その角に名店有り。

 

むし豚 ホルモンの専門店「水月亭」。

ここは、むし豚最強伝説が飛び交う名店である、

 

ちなみに、むし豚には(並)と(上)があり、

私は当然 並派です。

 

この違いは、

(上)は上物で豚の良い部分で作られた美しい むし豚、

(並)とは、頭やあちこちの部分で作られた荒い むし豚、

ただ荒いと言っても訳が違う、

上の様にもっちりあっさりした上品な味とはまた違い、

コリコリ、ゴリゴリしている部分があり、噛めば噛む程美味くクセになるタイプである。

 

こいつに、塩を付け食べる、

 

うーん。うまい。マッコリもぐびぐび進む、

 

とにかく(並)、並がクセになるのだ。

 

生肉がオッケーな時代には何でも生で食べさせてくれた。

それだけフレッシュな豚肉を扱っていると言う事です。

 

お店の入り口横のガラス張りのケースには豚の顔頭、豚足が綺麗に外され並べられている。

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これを見てドン引きする入洛者もいたのだが、とにかく皆んなこの独特の雰囲気に飲み込まれ、ひたすら呑んで食べる。

 

そして、食べてる姿に はんなり感は全く無い。

 

宮崎駿監督のアニメで観たことのある様なシーンが続く・・

 

横並びの高いテーブルが真ん中にドンとあり、ほぼ相席状態で皆んな並んで焼肉を食べる。

 

ハラミ、ガツ、レバー、ツラミ、ホルモン、子袋、豚オンリーの焼肉屋。

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タレに絡められた肉が次から次へと出されてくる。

丸い円柱形の鉄板に山盛り乗せて混ぜ混ぜして焼く。

香ばしく焼けあがった豚肉のホルモンを後はひたすら胃袋の中に突っ込んで行くのだ。

うまい!やめられない!!

 

「ここは日本じゃない!」と言葉通りに、予想以上のポテンシャルの高さと下町全開の安堵な空気が見事な空間プラシーボ効果となり、さらに肉の追加に火を付ける・・・

 

一度行ったら病み付きになる事間違い無しと言ってよいだろう。

値段もズバ抜けておかしい、、

 

見事に庶民の味方なのだ。

 

そして、何度も言うが はんなり感は無い。

 

ある意味この山王地区には はんなり感は似合わないのかも・・

 

裏表の無いハッキリとした言葉のやりとりはまるでラップのリリックの様である。

 

病み付きの水月亭を後にもう少し東へ、

 

一気に道が開け河原町通りに出る。

 

正面市営住宅一階には、トンクお好み焼きスリートップの一軒「かわ」が存在する。

元々、須原通の角地に構えていた一軒家の古い木造住宅で、いわゆる地上げによって河原町通に移転してきたのだ。

 

移転したての頃は、まだ鉄板も新しい為かなんだか油のノリも今一で昔の味とはちょっと違う気がしていたのだが、、、

 

2年程で鉄板も良い具合に馴染み、キレのある昔の焦がし味に戻り、トップスリーに返り咲き、また通う日が続いている次第です。

間違い無くうまい!

 

オプションも多数揃えており自分好みの一枚に仕上げてくれる。

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お好み焼きは鉄板が命である!!

 

河原町通を北へ、

 

コリアンフード キムチの「カネショウ」、

筆者は、ここの水キムチの大ファンなのである。

カネショウで盛岡冷麺と水キムチを買い、自分で作る韓国冷麺の美味しいこと・・

ここの水キムチを入れるだけで旨さ倍増です。

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余談ですが、、

 

2000年制作の坂本順治監督「新・仁義無き戦い。」で、

豊川悦司演じる ”ヤクザの門谷甲子男” が旧型セルシオで、布袋寅泰演じる ”幼馴染のコリアン実業家 栃野昌龍” が息子と一緒に買い物をしている横を走り抜けるのがこの河原町通であり、買い物をしてる店がカネショウである。

 

まさに、

 

「俺は生きざま、こいつは死にざまや。」

 

の、ワンカットシーンにはグッとくる・・・

 

まぁ、余談ですが・・

 

カネショウの隣には、ホルモンの「マルハシ」。

ここの表で揚げているフライ物をつい買い食いしてしまう、、

 

その隣には韓国料理の「葉月」。

家庭的な味、座敷で韓国家庭料理をたらふく食べて寝落ちまで・・

お母さんすいません・・・。

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パラダイスな三軒が並んでるわけですね。

 

東斜め前には「カタパン」屋。

最近はシャッターが降りっぱなし。

ところで皆さんカタパンてご存知ですか・・?

 

カタパンの亀井商店は創業慶応2年 1866年、

 

炭火で鉄板焼きの丸と三角の今川焼き風な、せんべい風な、とにかく硬いパン??を焼いてくれる。

(パンて言ってよいのか。)

この地区の子供の頃からのおやつみたいな物だ。

あまりの硬さに、牛乳と一緒に食べると言う技もある。

 

丸はカチカチ、三角は中とろり、

 

シャッターが開いてる時は是非一度下町の味を堪能して頂きたい。

 

開かずのお地蔵さんを越え河原町東寺道を南に行けば、

 

すぐに南同胞会館、ここの一階横で 手づくりキムチ、

その隣は「味家」ここでもやっぱり韓国冷麺と蒸し豚、、

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その隣は行きつけの お好み焼き「珠ちゃん」季節の牡蠣焼きそばがたまらない、、

そのお隣はパチンコ玉ちゃん、

 

パチンコで勝てばこの辺りの美味いもん屋をハシゴする諸先輩方・・・。

住めば都とはまさにこの事である。

 

 

リマインド!

 

20代中頃に須原通から九条跨線橋下、通称 ”パッチギ橋” 近くのキムチ工場二階の部屋でお世話になった時期がある。

一階で作られるキムチの本当にうまい事。

商品用と自宅用に分けられていたのだと思うが、自宅用が忘れられない美味しさでした。

 

 

ここで、ちょっと一言。

 

京都の下町は本当に奥深い。

 

非常に大切な役割りを果たしてきた人々、

 

私達は京と言う都の歴史に埋もれているわけでは無い、

 

むしろ伝統と歴史を支えながら前進する為の一つの歯車の様な物である、

 

入洛する人は「京都の伝統て昔と変わらないねぇ~」と言うが、
実は伝統と言う基礎は変わって無いのかもしれないが、その基礎を基盤に動いている物はおそらく全て変化を遂げているのだと思う。

 

間違ってはいけないのは、流行りに左右され本当に京都にとって大切な物を安売りしてしまっている現状があると言う事を忘れてはならない。

 

今、モテ期であるこの街は錯覚の中をさ迷っている状態である。

 

開発ラッシュにより、味自慢の下町が利益を争う町に変わってしまう事が何よりも怖い。

 

ドラマチックな地域と迷える仔羊、

 

この仔羊の群れは引き離され、一部は利益を得、そして一部は変わる事なく静かに過ごしていく。

 

美味いもんと、粗悪は常に背中合わせで時をかけている。

 

そして、

 

町づくりでは「人の移動」がカギである。

 

突然世界中から訪れた大都会の紳士達によって魂まで売り捌いてしまう事は何よりも避けたい。

 

でないと、町は無くなってしまう、

 

と、

 

感じているのは私だけだろうか・・・。

 

 

アナザーキョウト。

 

口は災いの元であり、ペンは凶器である。

 

京都は世界有数の観光都市であるが、そこにはもう一つの顔がある。

それは観光を支えてきた工業都市でもあるのだ。

さらにそれを支えたのが下町の人達だろう。

 

マスコミによって作られる美談により「◯◯ごっこ」が起こらない様くれぐれもブレ無い気持ちを持ち続けて行きたいと思う。

 

さてと、

 

河原町九条交差を東に松ノ木団地へ、ショッピングプラザサウス9 でちょっと寄り道して、

 

山本珈琲で一杯、一休み一休み。

 


 

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Profile

  • 牧野 広志TRAVELING COFFEE 店主

    1966年生まれ。
    94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
    2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。


    -TRAVELING COFFEE -
    昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
    図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
    珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。