下町。Vol.7

五番町とアティチュードの街。

10.5, 2018

TRAVELING COFFEE 店主:牧野 広志
  • food&liquor
  • travel
Share on

真夏の上七軒に腰を下ろした。

 

京都五花街の一つ、花街の歴史では一番古いこの地。

隣に北野天満宮をどっしりと構え、この街はまるで外壁の中にある別世界であり特別な空気さえ出している。

西陣の旦那衆を中心に花街は気品良く栄え入洛者の心さえ奪って行った、、

 

どの花街にも色恋沙汰は付きものである・・

 

ここ数年で数百メートルの通りは綺麗に整備され電柱は地下に埋められた。

 

歌舞練場をメインに通りの両側や細い路地にはお茶屋、老舗、小料理屋、一見さんお断りから、串かつ「お初」、京都中華「糸仙」もありなかなか奥が深い、、、上七軒。

  • 01

  • 02

  • 03

  • 04

  • 05

さて、

 

この地域を支えた西陣織、

 

西陣織とは説明不要の京都伝統産業であり、京の都が生んだ匠の技は歴史の塊である。

 

西陣織を遡ればいろいろな京都の側面が見えてくる、、、

 

この地域は他ならぬ伝統とその柱となる事全てを重んじると言って良いだろう、、

 

地下足袋の世界を支えた縁の下の力持ち、末端の職人から労働者も含め、

そう言う人達の存在がなければ、どの様な職業も生き残ってはいけない・・・

 

その事を一番良く知る街であり、伝統産業と世界が認めた織物の地ある。

 

我が国を二分する戦いとなった応仁の乱、山名宗全率いる西軍の陣地それが西陣なのだ。

 

またこの地にはその産業を守る為に移り住むオールドルーキーも少なくはない。

 

 

ディナーラッシュ、

 

さぁ食の名店を旅しよう。

 

上七軒から七本松へ、千本通に向かえば千本中立売に居酒屋ハイエンドの「神馬」が全国的に名を轟かせている。

  • 01

  • 02

  • 03

リクエストの多い一軒だ。

 

一度は行って見たいとポロリと声が出る名店中の名店です。

 

昭和九年創業、その後いっとき西陣空襲により休業をしながらも現在三代目でこの地域を支える居酒屋である。

 

この店と言えばやはり6種の日本酒を独自にブレンドした熱燗 ”神馬” が有名であり、これを目当てで「行きたい!」と言う人も多く、全国からファンがやって来る。

 

さっそく予約を入れ一杯、季節に合わせた旬の料理と店内の雰囲気もありほろ酔いで気分で次に向かう。

 

(完全に余談ではあるが、三代目は祇園の割烹小料理屋の名店「いな梅」で修行をしたと聞いている(確か)。

現在「いな梅」は数年前に弟子であった私の友人が後を継ぎ屋号を ”旧いな梅”「今」としてお店を引き継いでいる。)

 

千本通を少し南へ、

地元の人に愛されている北野商店街は昔ながらの店や何代も続く老舗が多く100軒以上の店が並んでいる。

昭和20年、終戦直後には食料供給の場所として使われた為、そこには人が集り栄えたと言う事だ。

  • 01

  • 02

  • 03

現在「北野 ふれあいの街」はアーケードの老朽化や空き店舗などもちらほら見られ、、、

 

それでも京都には三条会商店街や古川商店街などなどこの様なアーケード街は町々にあり文化の一つと言って良いだろう、

 

残し続け繁栄させて欲しいと願う。

 

 

さらに南へ、

 

一軒の焼肉屋「ニュー万長」へ、この店は完全に一見さんお断り系である。

常連さんの紹介だけでは入店は無理なわけです。

常連さんと何度も足を運び食って食って食いまくり、店主が認めてくれればようやく狭き門が開かれる、、

そんな焼肉屋があってもいいじゃないか。と・・・。

(若き日に先輩に連れられ幾度となく足を運んだニュー万長、そんな事情も露知らず・・・ 普通に行って食べていた自分が怖い、、、。)

この焼肉屋に行く時には強烈なコネのある人物を中心に日程が組まれ、予約を入れてもらう事から始まる。

焼肉を食べる為のミッションなのだ。

日取りが決まれば後はその日をジッと待つのみ、ゴクリと唾を飲み肉の日を待つのみ、、

そして試合決行の日、お声がかかった者の興奮はマックスに達する。

ガラガラ~ ドアを開け予約席に全員で座り乾杯から、

基本メニューは無い(メニューの存在を見た事が無い)。

お母さんが出してくる前菜からスタートするのだ、

まだかまだかと次から次へと出てくる料理でお腹がいっぱいになってしまう・・

と、

次の瞬間、待ちに待った肉が、、

白肉盛り、いわゆるホルモン盛り合わせ、こいつを食べ終わるタイミングで赤身の肉が並べられていく、、

後は次から次へと肉を焼いて焼いて、食って食って食いまくり常連目指し店主の顔をチラリチラリチラ見しながら真っしぐらなのです。

 

このなんとも言えないどうしようもないシステムに皆さんヤラレっぱなしの数十年、、

 

一見さん完全お断りでありながら、さらに常連さんなのに、まだその奥の裏メニューがある・・・

 

なんなんだ・・!!!

 

裏メニュー「ホルモンの煮こごり」これが忘れられない美味しさでした。

 

 

この一帯は、

 

居酒屋ハイエンドに、開かずの禁断の焼肉屋、

 

五番町には千本日活とスッポン、

 

精力極まり無いわけです・・

 

 

ところで五番町とは?

 

ディープ、

 

娯楽の町、

 

この一言で全てを語っている。

 

水上勉の小説「五番町夕霧楼」、映画の舞台となった町である。

 

上七軒とはまた違い、こちらも違う意味で浮世離れしていた、、

 

五番町もすっかり変わってしまい、閑静な住宅街となっている。

ただ一つ異彩を放っているのがピンク映画の千本日活、この建物は最早文化財と言って良いだろう。

 

リッチで上品な上七軒で舞妓はん芸妓さん遊び、踊りを見て一杯注いでもらい、「そうどすなぁ~」とほろ酔い気分。

  • 01

  • 02

  • 03

別口で、

 

ホットな五番町から東の西陣京極に渡れば庶民の味になんだか落ち着き腹いっぱい食う、、

肌に合う、

 

この西陣京極の中に一軒の焼肉屋がある、

木屋町ではすっかり有名な「大詔閣」、

その人気店の総本店である。

三条木屋町店、四条木屋町店とは少し違い、ゆっくりと焼肉を堪能できる座敷がある。

我々の様な初老になると、やはり座敷でゆっくりとくつろぎながら美味い焼肉を食う幸せを求めてしまう。

そんな一軒であり、面割れし難いお気に入りの焼肉店である。

  • 01

  • 02

  • 03

  • 04

五番町を中心に広がる街は上七軒に対して声のデシベルが妙に高い、、

 

それだけ庶民的であり、地域密着の下町文化が根付いていると言うことなのでしょう、、

 

この違いを楽しむのも隠れた京都のアナザーであろう。

 

五番町の奥深い話しはまたいずれゆっくりと語りたい・・・。

 

 

千本通から今出川通の上七軒に戻ろう。

 

北野天満宮すぐ東のパンダが目印「餃子の三宝」、

筆者行きつけの餃子の店である。

さすが花街にあるだけあって、とにかく美味しい。

タレをつけなくても十二分に味がある、

餃子の皮、皮がもちもちカリカリでたまらないわけです。

とにかく二皿スタート、あとは胃袋と相談で追加していくのみ、、

ふぅ、お腹いっぱいです。。。

ちなみにこの西陣地域には喫茶店が多く見られる、

その理由は京都の文化と非常に密接である。

さぁて、喫茶「静香」でコーヒーを飲み一休み。

  • 01

  • 02

 

リッチでエレガント、ディープでハードな両方を兼ね備えたこの街と町は、西陣織の産業によって栄え守られてきたと言っても過言ではない。

 

その西陣織を支えたのもまた下町の人達だろう、

 

ディープ京都に纏わる話は後を尽きない・・・

 

そして、うだるような暑さも終わり秋の京都がやってくる。

 


 

▽上終町。
vol.1

 

▽下町。
vol.1 | vol.2vol.3vol.4vol.5

vol.6vol.7

 

▽先斗町。
vol.1

Profile

  • 牧野 広志TRAVELING COFFEE 店主

    1966年生まれ。
    94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
    2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。


    -TRAVELING COFFEE -
    昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
    図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
    珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。