下町。Vol.15

大都会と下町のホスピタリティ。

3.11, 2019

TRAVELING COFFEE 店主:牧野 広志
  • food&liquor
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雨の降る京都、春ももう近い。

 

そんな日、私は足早に京都駅のホームに立った。

 

新幹線に飛び乗り、弘の焼肉弁当を食べながらお江戸へと。

うとうととつい眠りについてしまい気がつくと新横浜・・

 

品川で降り渋谷へ。

 

向かった先は渋谷公園通りのスクランブル交差点、

目の前に構えるのは Hotel koe Tokyo。

この一階「koe lobbe」にて ”モーニングインキョウト” と題し、朝の京都が紹介されると言うイベントにお声が掛かった。

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ベタな事が苦手な筆者だが、私を指名したと言う事は、NGワードを踏まえての指名とも感じた。

 

その日、私の周りには市の関係者や新聞社、ピーアール会社、観光開発からJR関連、ライター等々がズラリ並び取り囲む様にNGワードを出さないかと緊張気味にも見えた。

 

モーニングコーヒーを淹れるだけでは無く、パンラボの池田さんと京都トークがあったからだろう、、、

 

何を言い出すかわからない私の爆弾発言を阻止しなければいけないのだ、、

(ちなみに私はちゃんと空気を読めるので大丈夫です。)

 

さて、

 

遡る事、約1カ月ほど前に koe lobbe で焼かれているバゲットがお店(TRAVELING COFFEE)に送られて来た。

 

このバゲットにあったコーヒーを淹れて欲しいと。

 

しっかりと焼かれた外側はパキッとしながらも中はもっちり甘みと弾力があり、バゲット自体に凄く力強さと豊かな表現力を感じた、

 

ひと口ふた口食べ私の頭の中ではあの珈琲をこうしようとイメージが湧いてきた、

 

さっそく焙煎にたずさわってくれる Coffee Base KANONDO さんに相談。

 

KANONDOとは、少し前まで北山にあったコーヒースタンドで、京都ブランドの ”NOVO MARKⅡ” と言う焙煎機を投入しており、

スペシャリティコーヒー専門店で上(かみ)の上品な方々に人気である。

(現在は北から街中に移転し、四条烏丸の観音堂町と祇園に2店舗構えています。)

 

京都が産んだ NOVO MARKⅡ と言う焙煎機は100gからの小ロットで焙煎でき、テスト的にいろいろな事をするには非常に優れたマシーンである。

 

が、

 

一つのリミテッドなコーヒー豆を作るまでの作業は尋常ではないのだ、、、

 

なんせ、決められた味に合うコーヒーを世界中の珈琲豆から選び更にスペシャリティに限定し、尚且つ京都らしさと言う私がもっとも恐れている言葉付きなのだ・・・

 

ここで言う「京都らしさ」とは、いったいなんぞや?

 

私は常日頃から言っているのは、食文化、中華にしてもイタリアンにしてもフレンチにしても、とにかく京都と言う街に寄り添わなければ受け入れて貰い難いと言う事。

 

寄り添いの文化がこの街には根付いている。

 

コーヒーも同じである。基本京都は深煎り文化なのだが、ここに当然現代のスペシャリティコーヒーの浅煎りも投入する。

 

が、

 

やはり、浅煎りだけではなかなかこの街は受け入れてはくれないのが事実である。

 

結果、幅広い豆の種類と煎りの多さが定着したと言っても過言では無いだろう。

 

さすが、珈琲日本一の都市であります。

 

私が今回挑んだのは、東京で行われる「朝の京都」のピーアールである。

パンとコーヒーで朝の京都を満喫して欲しいと言う事だ、、

どちらも日本一と言う代物。

 

香川にうどんを食べに行く様に、京都にパンとコーヒー巡りにやってくる。

 

て、事はやはり、全面的に ”京都” を前に出すと言う指名である。

 

モーニング イン キョウト

バゲット窯だしショー

 

この人気ショーに出されるバゲットに合わせたコーヒー作りのプロジェクトが始まったのだ。

 

選んだ豆は「コロンビアKYOTO農園」

コロンビア シェラネバダ地区にある標高900mのコーヒー農園で、

この農園主が日本に留学経験があり、その時に気に入った地名を農園名にしたと言う、まさに京都と縁の深い珈琲豆である。

(ちなみに借景の代表とも言うべき比叡山の標高も約900mです。)

 

こいつを、何パターンも焙煎し、メッシュを変え、カッピングし、飲み比べ、頭痛とハートアタックと闘いながらようやく仕上げた一品。

 

深煎りでは無く、中煎りやや浅寄りと言う微妙な仕上げで、ボディ感もあり、マイルドでリッチな味、

その中に京都特有の深煎り感を投入し「KYOTO」と言う名にふさわしい気品さも詰め込んだ。

 

そして何よりメインになる焼きたての窯だしバゲットの邪魔にならない様、更にバゲットの味を存分に引き出す仕上げである。

 

この宝石の様な珈琲豆をカバンに詰め込み渋谷に向かったのだ。

そう、京都の下町を愛して止まない我々が大都会東京渋谷にこの味を届けに、、

 

前日入りした私はあえてコーヒー屋を巡らず、若者に人気の御飯屋さんを数軒回った、

いわゆる食とホスピタリティのリサーチである。

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なぜそのお店が若者に支持され人気なのか、その疑問を直接味わいたい。

ストリート派の私としては当然の行動なのです。

 

行って食べて感じて分かった事、京都とは違うと言う事、良くも悪くも、、、。

 

この繰り返しが今の自分に役立ち、コーヒーと何が合うか、食後だけでは無く、食前、食中、箸休めでどんなコーヒーが合うかと言う勉強になるのです。

 

で、

 

翌日に備え四軒ハシゴで早めに退散。

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ピピピピッ!!︎ ピピピピッ!!︎ と目覚まし時計がベッドの横で鳴り響く・・・

 

「おはようございます。」

 

いよいよ当日、朝7時に集合し私の武器をセッティングする。

弾はもちろんコロンビアKYOTO農園。

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20人限定のイベント、その為だけに仕上げたコーヒー。

 

さぁ、バゲットと一緒にどうぞ!

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カップに注いだ200ccのコーヒーはバゲットを食べながら朝の笑顔で皆さん飲み干してくれました。

ありがとうございます。

 

さて、トーク。

 

一回一回一言何かを言う度に私は市の関係者の方を振り返り「言って大丈夫ですか?」と確認しながら喋る始末、、、。

京都は日本一新しい物好きである、だからこそ伝統が見直され守り続けられているのでしょう、と。

 

京都にはたくさんのコンテンツがあります。

そのコンテンツにはそれぞれ文化があり、その文化こそが京都の土台を守っている、と。

 

京都は、桜、紅葉、祇園祭 だけではありません。

街は全て四季を通して作られています。

雨降る日には苔や石が綺麗に光り、新緑の時期には見たこともない様な緑のコントラストが見れます。

閑散期と呼ばれる入洛者の少ない時期こそ本来の京都の素の姿が見えるでしょう。と。

 

観光地だけでは無く、下町を歩いて欲しい、そこには京都の産業や地下足袋の世界を支える不思議な魅力がたくさん詰まっています。

町家もなければ枯山水の庭園も無い、パンはカタパン、おばんざいはお好み焼きや、ちょぼ焼き、赤白フライ、、

 

京都は学区や地域でレペゼン感が強く、その人達の行動力学によって町づくりが成り立っている、と。

 

まぁ、この様な普通はあまり話さないであろう事を私なりの目線で皆さんに紹介しました・・・。

 

たくさんの質問を受けました。

そして京都珈琲文化が何故奥深く高い理想の中にいるのかを話す事もできました。

 

下町から大都会東京に向けてのメッセージ。

 

ぼんやりとした不安を埋めてくれるのがコーヒー。

 

私の淹れたコーヒーにはそんな思いがたくさん詰まっています。

 

ホスピタリティとコミニケーションは常に同時に動いており、

所作と質感こそが私達の文化である。

 

そして雨の降る東京、コーヒー屋巡りで幕を閉じた。

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京都に帰る新幹線で身体に優しいお弁当を食べ、

 

いけずな町に舞い戻る。

 

関係者の皆様、ありがとうございました。

 

京都下町から愛を込めて。

 


 

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Profile

  • 牧野 広志TRAVELING COFFEE 店主

    1966年生まれ。
    94年渡仏、90年代をパリ ルーアン リヨンで暮らす。
    2002年 帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。


    -TRAVELING COFFEE -
    昭和2年築の木屋町 元・立誠小学校 職員室で営業していたTRAVELING COFFEE が耐震補強工事の為に高瀬川沿いに建てられた仮設の立誠図書館内で営業。
    図書館の選書はブックディレクター「BACH」幅允孝氏。
    珈琲はブレンド2種類に加え、シングルオリジンは京都府内の焙煎所を毎月選び焙煎家と話し合い常にオリジナルを4種類程オーダーメイド。