対比

凶気の桜 ヒキタクニオ著

4.19, 2018

販売促進部 マネージャー:三浦 良介
  • essay
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狂気じゃなく凶器でもなくて、凶気。

俳優・窪塚洋介が原作である「凶気の桜 ヒキタクニオ著」を読み、映画化実現へ向けて動いて完成したと言われる作品。

 

誤字じゃなく、凶気と書いてある。
タイトルに興味を惹かれて手に取ったのも、そんな字だったっけ?という違和感からで、字面や表紙デザインから漂う危ない雰囲気が気になったから。それが本屋でたまたま見つけた時の印象。

 

そうそう。よく原作の方がいい。なんて言う人もいますが、こちらは映画もよかったです。

 

戦後から長らく続くアメリカに洗脳された日本を。そして多様性を見せる現代の日本の倫理観や価値観のあり方に疑問を持ち、かつての日本を取り戻すべく、暴力という手段(ここはすごい間違ってる気もしますが)でナショナリストとして活動する様を描いた社会派作品と一応いわれているこちら。

 

渋谷生まれ、渋谷育ちの山口、小菅、市川を含めた3人でネオ・トージョーを結成。

英語混じりのヘンテコな日本語を話し、背景もない、理解もないのにアメリカの格好を真似したり、周りの迷惑を省みずにレストランではしゃいだり、老人に席を譲らなかったり。

そんな同世代の若者らに苛立ちを覚え、そんなんでこの先の日本は大丈夫なのか。なんとかしなければ。という、使命感や焦燥感を抱きながら、若者がもがく様をヒキタクニオらしい疾走感のあるシンプルな文体で鮮やかに描かれている。

 

読んでいた当時、これでいいのか日本人。(30代には懐かしい)
ではないが、確かに未来を心配になったりもしたし、その気持ちはわからんでもないな。なんて共感するところもありまして。

 

渋谷を舞台に「暴力こそ正義」を信念に、3人が白い戦闘服を身にまとい活動するさなか、同じ街に暗躍する右翼系暴力団青修同盟の青田会長に出会い、目をかけられる。

 

が、あることをきっかけに3人の関係は、思想を貫く者、今後の自分の行く末を案じ、違う道を探す者、新たな目標を見つけて歩む者へと変化し、そこにあらゆる思惑が錯綜して、次第に抗争に巻き込まれていく。

 

若者の不器用ながらも素直な思いを、巧みに取り込み、操り、傀儡にしていく大人や社会は怖いなぁ。これが大人かぁ。何かわからないけど、訳のわからない大きな力に取り込まれていくんだなぁ。なんて勝手に慄いたり失望したりしたっけ。

 

純粋で無力で無知な若者をより一層引き立たせるように、狡猾で残忍で卑劣な大人と対比させて、より立体的というかリアリティをもって物語は絡み進む。

 

読了した当時は、まだ学生で当然のように先行きが見えない頃。
まぁ今でもありがたいことに裸眼で生活できてますが、あい変わらず先行き不透明なんですけどね。ってお後が宜しくないので、話を戻すと、この小説の中に出てくる人物は誰もが魅力的。

 

で、その中でひときわ存在感があったのが、映画では江口洋介が演じた消し屋、三郎。

 

端役だったんですが、存在感抜群。

 

戸籍を買い、誰にでもなりすまし、そっと世間に紛れる消し屋。
ターゲットとする人物の身辺はもちろん、心の内までを丹念に調べあげ、すっと心にも入り込み、その機を伺い、その人が辿ったあらゆる痕跡を消し、刑事の功名心も消す。

 

行方不明者と数えられる者は年に数万人いて、それは全て未解決として束の資料になっていく。
事件性のあるような物証がないと警察も動かない。ただ行方不明者として書類にするだけ。
そんな数多ある書類の中に、巧みに紛れ込ませ、事件にせずにそっと消すのが、消し屋の仕事。

 

今回、消し屋が依頼されたターゲットとなっていたのは?

 

ぜひ、読んでみてください。

 

そうそう。
実は、その消し屋のスピンオフとして刊行されている続編がありまして。
この本を次は紹介できればと。

 



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Profile

  • 三浦 良介販売促進部 マネージャー

    続いているなぁと我ながらふと思う、今年入社10年目を迎える34歳、ふたご座O型。
    長く続けていることってそんなになくって。
    最近あんまりしてないけど学生時代のサッカーが10年くらいで、あとはこのコラムでも書いている読書くらい。
    継続は力なり。とも言いますし、何か今からでも続けられるもの探さないとなぁ。と老けて、もの思いにも耽けってる今日この頃。
    でも花粉症に関してはだいぶベテランで、18年目の春を迎えてるんですけどね。