贈り物は突然に。Vol.8

例えばシリルの恋路をちょっと後押ししたくなった

人間には「欲」というものがある。食欲、睡眠欲、性欲、そして実は「相手に贈り物をする」という行為も、“あの人の人生に関わりたい”という欲の1種ではないのかと思った。

8.13, 2018

Columnist:Aya Matsuo
  • essay
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「日本では定番的なことを<ベタ>って言うんだよ」

 

その昔フランスから日本に来たばかりのシリルにそんな日本語を教えた。

ビールバーで出会って以来、(お互い母国語以外は苦手な人種だったせいで)英語・日本語・フランス語のデタラメでちゃんぽんな会話をするのがやっとだったけれど、なんだか馬の合うシリルとはその後えらく仲良くなった。

 

誰が教えたわけでもないのに夏には甚兵衛を愛用し、

冬には「僕はもうこたつから出ません」とコタツムリ化する。

そして花見と紅葉のシーズンが何よりも好き。

 

今のシリルはそんなベタな日本人になりつつある。

 

そんなシリルに可愛い彼女ができ(そうだ)。

”そうだ”としたのは、なんだか高校生のようにお互いの顔を見てはほおを赤らめるような、(はたから見てると)もどかしい状態だからだ。

 

あまりにもどかしいので、「二人にプレゼントがある」と呼び出して

恋の後押しがてらに揃いのお猪口を贈った。ほら、シリルの好きな富士山だぜ!

<これで分かれよ! お前ら両思いなんだよ!!>と心で叫びながら。

 

 

箱を開けた二人は、ペアになっているその小さいお猪口を見て、

一瞬ポカンとした顔をしつつ、揃って頬を赤らめる。

しかしここでシリルが超頑張った。

 

「今度、このお猪口と美味しい日本酒を持って二人で紅葉を見にいきましょう」

「はい。ぜひ」

 

どうやらやっとお互いの思いは通じたようだ。やれやれ、なんて思っていたらシリルがポツリと呟いた。

 

「あなたはベタで、そしてベターな人ですね」

(うまいこと言ったつもりだろうが、それを言うなら”ベストな人”だろ!)

 

もうすぐ付き合いそうな、結婚しそうなカップルの後押しにも

ベター…じゃなくてベストなお猪口はこちら

 

 



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Profile

  • 松尾 彩Columnist

    フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。また猫についてゆるく語る「ネコテキ」を小学館「しごとなでしこ」にて連載中。夫婦料理ユニット「サイトウのゴハン」レシピ担当。

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