季節の台所仕事 Vol.3

五月のお台所①豆板醤

つくること、食べることを通して感じる季節の恵み。忙しい日々の中で心を豊かにしてくれる季節の台所仕事はじめてみませんか。今回は豆板醤。そう、おうちで作れるんです。

5.14, 2018

FOOD DIRECTOR / sommelier (wine & olive oil) / organic concierge:MIHO KAWAKAMI.
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立夏 5月5-5月19日ころ

 

夏がやってきました。

太陽が力を増し、風が爽やかに吹き抜ける心地よい季節です。

ただし、夏とは言っても立夏を3つに分けた七十二候では、

蛙始めて鳴く

蚯蚓(ミミズ)出ずる

竹笋(タケノコ)生ず

と呼ばれる段階なので、暖かさはまだ足元。これから次第に気温が上がり夏らしくなっていきます。

 

春から夏へバトンを引き継いだばかりのこの頃は、野菜や果物も春の名残と夏のはしりと両方が店に並びます。はしりの農作物はまだ収穫量も少なく貴重なため値段も高めについていることが多いのですが、旬を迎えると量も増えて値段が下がるだけでなく味わいも良くなって、購入するにはベストです。そして、名残になると味が少し落ちたり、小ぶりになったりしますが、グッとお手ごろになります。

例えばイチゴのジャムを作るとき、私は、実をゴロゴロと残したままたっぷり作っておすそ分けしたいので、旬を少し過ぎたあたりにイチゴを山ほど手に入れてキッチンにこもってコトコト煮ることにしています。

 

はしり、旬、名残。

自然のものは、生き物だから時間の流れの中で変化します。

その時々に合わせて調理法を変えたり、または目的に合わせてどのタイミングで作るかを考えたりするのも楽しいものです。

 

そうして作ったジャムや漬物は、その季節の味わいを閉じ込めたタイムカプセル。長く保つものが多いので、いつでも「あの季節の味」を楽しむことができます。フレッシュなものを味わうのも、閉じ込めた季節を思い出すことも、どちらも台所仕事の楽しみです。

時々台所仕事は仕込んでから食べるまでに時間を置くことが必要だったり、手入れをしながら育てる作業があったりするものがあるのですが、その時間や手間によってフレッシュだったときとはまた違う複雑で深みのある味わいに変化していきます。

 

近頃「丁寧な暮らし」や「手仕事」がちょっとしたブームで、手前味噌をつくる方が増えているように思います。そして、一度つくってみると出汁がいらないくらい美味しいと味噌づくりにハマる方が多いそうです。お味噌造り講師をしている私の友人は、年間を通してお味噌造りの楽しさや美味しさを伝えていて、彼女のブログにはいつもお味噌(になる予定のペーストが詰まった)のボトルを抱えて嬉しそうに笑う人たちの写真がいっぱい。

 

今回のコラムをご覧になって「豆板醤」をつくってくださった方も、そんな笑顔になってくれたら嬉しいなと思っています。完成するのは半年後。どうぞお楽しみに。

<五月のお台所①豆板醤>

味噌が大豆からできていることを知っている人は多いと思いますが、豆板醤がソラマメを原料としていることを、どれくらいの方がご存知でしょうか。豆の粒が大きく、甘く、そして安くなった今だからこそ仕込みたい調味料。冬が来る頃に味見をして、きっと立夏に台所仕事をした自分に感謝するでしょう。

材料は全てスーパーで手に入るし、豆を茹でるのもあっという間。材料を混ぜて詰めるだけなので、実はとても簡単。思い立って30分で完成します。

 

 

Recipe

ソラマメは、できればさやつきのものを手に入れましょう。グリーンピースの時もお話ししましたが、さやから出したところから豆は茶色く変色し風味が落ち始めます。ソラマメのさやはとっても柔らかいので開けるのは手間になりません。むしろ、ふわふわのベッドに包まれた薄緑の豆の姿に癒されること請け合い。ぜひ、さやつきで。

小さな鍋に湯を沸かし、塩を加えます。そこにむいたソラマメを一気にザーッと。ちょっと一つつまんでみて、ほろほろっと簡単に崩れるくらい柔らかくなったらザルに開けます。粗熱が取れたら薄皮をむきましょう。この後に潰してしまうので、崩れても気にせずに。

茹でたソラマメを200g計量してボウルに入れ、米麹を20g、自然塩を40g、味噌を20g、粗挽きの唐辛子(韓国産がベターですが、一味唐辛子でもOKです)を加え、全体を揉み込むようによく混ぜます。素手で行うと大変なことになるので、大きめのジップロックを手にはめること。私は一度唐辛子作業(その時はキムチでした)を素手でやって、その後うっかり目をこすって(手は洗った後だったのに)「どえーーー!」という思いをしました。涙。お気をつけて!

混ぜたら、消毒をした瓶に空気が入らないようにギュギュッと詰めていきます。仕上げに空気に触れないようにラップを敷き、カビ防止の塩とおろしわさび少々をラップの上に乗せて出来上がりです。

 

涼しくて陽の当たらないところに置いて、半年、じっくり豆板醤が育つのを待ちましょう。

*計量して200gを超えた分は、他の材料の比率を合わせて多めに作るのもいいですし、牛乳と混ぜて温めてソラマメのポタージュにしても美味しいですよ。

Profile

  • 川上 美穂FOOD DIRECTOR / sommelier (wine & olive oil) / organic concierge

    料理家、フードディレクター、ソムリエ。国内外のレストランでの経験を経て、独立。食のスペシャリストとして書籍・雑誌、企業webなどメディアを中心に活動。イタリアンと和食をベースにしたシンプルでストーリーのあるレシピとスタイリングに定評がある。近年は、レストランプロデュースや商品開発アドバイザーなど、多彩な経験と知識をもとに活動の場を広げている。 2014年、目黒区東山にプライベート・レストラン「quinto」をオープン。2015Louis Vuitton city guide TOKYO版掲載など注目を集めると共に、同名で食を中心としたライフスタイルブランドをスタートしている。