ヴィンテージ徒然草 Vol.2

"パンクロックがロンドンで芽生えた日"に売られたTシャツ。

自分自身も既に十分にヴィンテージなのはご愛嬌。そんな私が気まぐれに蒐集したヴィンテージのお話をつれづれなるままに。

9.27, 2018

DJ、プロデューサー:田中 知之 (FPM)
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今回はロックTシャツのお話。ニルバーナの物など、ちょっと最近高騰しすぎな感もありますが、、、。

 

ロックTシャツの面白いところは、そのデザインから、当時のアーチストの状況や情報を想像したり知ったりできることではないでしょうか。

今回紹介するのは、私が大好きな福岡の古着屋【SNUG】で購入したイギー・ポップのTシャツ。結構珍しい物と推測します。私もネット上ですらこのデザイン〜写真を見たことがありません。

イギーを見上げる黒人男性が右下にトリミングされているのにセンスを感じます。

特に今回の1着は、バックプリントも含め、文字量、つまり情報量が豊富。Google検索やWikipediaを参考にしつつ、ちょっと紐解いてみようかと思います。

ボディのタグのプリントは消えてしまっているのでメーカーはわかりませんが、しっかりした度詰めのコットン生地なので縮みも殆どなく、恐らくボディーは当時のXLであったのではないかと思います。70年代頃のTシャツは、表記がXLサイズでも、Sサイズくらいまで縮んでしまっているものが多いですからね。 大柄な私が古くとも着用できるビンテージTシャツに出会うこと自体レアなことです。

背面を細かく見ていきましょう。アメリカ生まれであるイギーがイギリスに渡り、1972年7月15日に「Kings Cross Cinema」という映画館(ライブハウスとして営業する時は「KING SOUND」という店名になってたようです)を会場に行ったロンドンでの初めてのライブ時に販売されたようです。

 

このライブの約1年前、1971年7月にイギーはザ・ストゥージズを解散させています。
セールスの不振もですが、本人含むメンバーの殆どが薬物中毒になったことが原因です。

 

Youtube<The Stooges – I wanna be your dog (1969)

 

その2ヶ月後、イギーはカンサスシティでデビッド・ボウイに出会うのです。そして、ボウイのマネージメント会社「メインマン」に所属することになり、同時にコロンビアレコードとアルバム2枚契約を結びました。このTシャツが販売されたライブは「メインマン」の招聘とオーガナイズで開催されました。

このライブ終了後に曲づくりとレコーディングをスタートさせて、翌1973年2月にリリースされたアルバムが『ロー・パワー』。Iggy and the Stooges名義でリリースされました。Tシャツの袖にはそのバンド名がプリントされています。

 

しかし、背面のイギーの名前の下にはex Iggy and the Stoogesとプリントされています。これはex the Stoogesと表記されるべきなので、明らかに間違いかと思われます。

 

因みにに、アルバム『ロー・パワー』は、プロデューサーにデビッド・ボウイの名前がイギーと並んでクレジットされていますが、レコーディング前にイギーはボウイがプロデューサーに立つという事務所からの提案を拒否しています。しかも、ボウイも初めての世界ツアーで忙しかったのです。実際、ボウイや事務所は立ち会わず、イギーと旧ザ・ストゥージズのメンバーだけでレコーディングは終わったのですが、その稚拙なミックスを良しとしなかった事務所は再ミックスをボウイに頼むのです。ツアーの合間、1日だけ時間を作ったボウイは再トラックダウンを手がけたのですが、24トラックのうち3トラックしか使用していないマスターテープをどうすることもできず、ボーカルとギターをデカくミックスして仕上げるのが精一杯でした、、、、。

 

 

更に背面には、フロントアクトが2組プリントされています。イギーと同じくアメリカ出身のバンドFlamin’ Groovies(丁度1972年のライブ映像をYouTubeで見つけたのでリンクを貼っておきます)

 

YouTube<FLAMIN GROOVIES Slow Death Live TV 1972

 

そして、F.F.&Z.というバンド(こちらはググっても一切情報が見当たらず)。

 

 

更に、Films, happenings and crazy suprize attractions.との表題も。suprizeはsurpriseのスペルミスだと思われますが、この時流されたフィルムやハプニングやアトラクションがどのようなものだったかの記述は、幾ら探しても見つかりませんでした。ただ「KING SOUND」でのFilms, happenings and crazy suprize attractions.の表記のあるポスターの画像に辿り着きました。メロディーメイカーの1972年7月8日に掲載された広告のようです。

この7月15日だけのショーではなく、前日の14日にもルー・リードが同様の公演を行っていたみたいですね。益々気になります。

 

しかもこのライブ、夜中にスタートして朝6時までという時間帯でやってたのが凄いですね。

 

チケット代は当時の1ポンド。

 

 

 

 

とまぁ、とにかく、ロックTシャツを手に入れるのは、そのアーチストの歴史や情報諸共手に入れることなのだと思います。

 

 

このライブはそこそこ成功したとはいえ、まだまだイギリス初見参のイギーのTシャツを買い求めた人も少なかったのではないかと想像します。しかし、このライブで見せたパフォーマンスが、そして、ライブ後に仕上がったアルバム『ロー・パワー』が、後のセックス・ピストルズ〜パンクの誕生に大きく寄与したのは紛れも無い事実です。実際にジョニー・ロットンは『ロー・パワー』をベストアルバムに挙げているのは有名な話ですし、アルバム表題曲「ロー・パワー」を聴けば一聴瞭然でしょう。イギーの稚拙な録音を何とかするために、ボウイが取った苦し紛れのミックスが、パンクの礎となってしまったんですから、よく考えたら皮肉なお話ですよね。

 

Youtube<The Stooges: Raw Power

 

という訳で、”このTシャツがパンクの始まりを高らかに告げる歴史的なTシャツである”と私は結論付けるに至ったのです。

 

 

あ、ちなみにニルバーナの故カート・コバーンも『ロー・パワー』をベストアルバムに挙げています。更にこのTシャツの値打ちが上がったと言えるでしょう。

 

と言うわけで、私の少々誇大妄想も入った自慢話にお付き合いいただきありがとうございました(笑)。

 


■INFORMATION

9月29日(土)、URBAN RESEARCH×FPMによる神出鬼没のパーティ『HYPER SCOIETY ARCHIVES』が京都のランドマーク”京都タワー”にて開催決定!

URBAN RESEARCH × FPM presents
Hyper Society Archives
meets
TOWER DISCO

 

[日時]
2018月9月29日(土)
21:00〜24:00

 

[会場]
京都タワー
3F スカイラウンジ「空」-KUU-
4F&5F 京都タワー 展望室

京都市下京区烏丸通七条下る 東塩小路町 721-1
※21:00以降は正面入口がクローズしますので、西入口からお入り下さい。

↓西入口へのアクセスはこちらから
https://www.keihanhotels-resorts.co.jp/kyoto-tower/access/

 

[入場料]
2000YEN(エレベーター利用料込)
*年齢制限:20歳以上(要ID)

 

[DJs]
TOMOYUKI TANAKA (FPM)
ANGELYUKA (水原佑果)
SATORU SAITOH (URBAN RESEARCH)

 


▽ヴィンテージ徒然草
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Profile

  • 田中 知之 (FPM)DJ、プロデューサー

    1997年『The Fantastic Plastic Machine』でデビュー。オリジナル作品の他にアーティストのプロデュースやリミックスを多数手掛ける。DJとしても国内全都道府県はもちろん、世界約60都市でのプレイ実績を誇る。活動の幅は音楽のみに留まらず、過去には大手アパレル企業でMDとして、また某ファッション誌でエディターの経験もあり、時計や車などへの造詣も深い。特にヴィンテージ・ウェアのコレクター/マニアとしては知る人ぞ知る存在である。