アーバンなひとびと Vol.4

第四回 わたしがこれまで呑んだなかで一番泥酔する女、田尻(前篇)

「スナックアーバン」に夜ごと集う、奇々怪々で愛すべきお客様たちのものがたり。第四回は長年の友人の田尻さん(しかも前篇)です。

6.11, 2018

スナックアーバンのママ
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みなさん、こんばんわ。スナックアーバンのママです。ただただ、アーバンの常連さんに話を聞く、どこに需要があるのかよくわからない連載も四回目になりました。わたしには、アーバンを始めるよりずっと前からの仲良しで、田尻さんというひとがいます。一時期は同じ会社で働き、アーバン開店直後はスタッフとして手伝ってもくれていた、本業は優秀な編集者なんですけどね、なんですけどね・・・。このひと、わたしが出会ったなかで、一番泥酔するんですよ!! しかもめちゃくちゃに・・・。わたしがあんまりそういうタイプじゃないので、ずっとなんでこのひとはこんなに泥酔してるんだろうと、気になり続けて14年! はじめてじっくり、どうしてそんなになっちゃうのか聞いてみました。永遠に止まらないアルコールの蛇口、箱ワインでも呑みながらお楽しみ下さい♡(文中の写真は、友人知人から集めた思い出コレクションより)。

2018年 6月4日 20:30

 

ママ 今日のテーマは、田尻さんの泥酔についてなんだけど。

 

田尻 一週間前もやりました・・・。

 

ママ え、いつ(笑)?

 

田尻 月曜日・・・。代理店にデザイナーさんと打ち合わせに行ったんだけど、昼の3時ぐらいに終わっちゃって、それから新橋で呑んで、気がついたら桜新町に・・・。ホッピーの杯を重ねてた記憶だけはあるんだけど、いつの間にか桜新町でシェイクみたいなのを飲みながら歩いてた。たぶん、どこかで半蔵門に乗り換えたと思うんだよね。

 

ママ どこかで半蔵門に乗り換えたの?!(注:田尻の家とは位置関係、全く関係なし)

 

田尻 そう、デザイナーさんとも、まともな感じで別れたと思うんだけど。

 

ママ それ、どこまで覚えてるの。

 

田尻 え、ぜんぜん覚えてない。

 

ママ ヘッっっっ?!

 

田尻 2時間分ぐらいは覚えてるけど・・・。

江ノ島でビール片手に楽しそうな田尻さん。

ママ いやあ、変わらなくて嬉しいよ。ところでさ、わたしが田尻さんと最初に呑んだのは、新宿の紀伊国屋で待ち合わせたときだよね。あれ、いつごろだっけ。

 

田尻 2004年! 14年前。わたしがまだ27歳ぐらいだもん。

 

ママ そっか、じゃあわたしが23〜4歳ってことか。衝撃的だな。

 

田尻 それで上海小吃(注:歌舞伎町の路地裏にある現地感甚だしい中華料理屋。このころは頼むと違うものがでてくる確率が多かった)行ったんだよ、ふたりで。でもそのときの記憶はないなあ。

 

ママ うん、わたしもないのよ。待ち合わせの記憶だけあるんだけど。

 

田尻 でもその前に、ママがバイトしてたゴールデン街のバーに行ってるんだよ(注:そうなんです)。だから順を追っていうと、最初は菊地成孔さんの東大ゼミの打ち上げ。

 

ママ ああ、わたしがお金の勘定してたやつね(注:東大生でもなんでもないのに幹事ができるひとがいないからって理由で、なぜか)。

 

田尻 で、そのまま下北の、マックとかある通りのちょっと奥入ったところの適当な居酒屋で呑んだんだよね。そのときもいたKさんが、あのときのおなごがゴールデン街で働いてるらしいから行こうよってことになって、行ったのよ。

 

ママ それで、これはわたしがいつもいう話だけど、田尻さんはすごく喋るわけでもなく、見た目は小さくて可愛い感じで、そんなお酒飲みそうにないのに、ずっとひたすらビール呑み続けてるの。ほんとこのひと頭おかしいんじゃないかと思ったよ。しかも朝までひたすら呑んで帰らないから、わたしが店の掃除を始めるっていう。

 

田尻 まずクーラーを切られて、そのあと掃除機をガッツンガッツンって椅子にあてだして(笑)。

 

ママ 我ながら、ひどい!!!

右のひと(アーバンのチーママ)のほうが楽しそうだな。

田尻 それで上海小吃にいったときに、わたしがmixiやりたいけど誰も誘ってくれないっていったら、ママが誘ってくれたんだよ。

 

ママ 上海小吃行ったときは、田尻さん、Pコート着てたと思うんだよね。

 

田尻 あれ冬だったんだ。ゴールデン街のときはポロシャツ着てたと思われ。

 

ママ なにその記憶・・・(笑)。

 

田尻 あと山本精一さんのチケットゆずってくれたのが、酉の市のとき。

 

ママ じゃ、11月か。わたしが行けなくなったから、10人劇場(注:ゴールデン街の「裏窓」で開催されていたお客さんが10人限定のスペシャルなライブ)のチケット、田尻さんに送ったんだよね。

 

田尻 そのときリクエストタイムみたいなのがあったんだけど、誰もリクエストしなかったら山本さんが「だから若いやつはあかんねや」みたいなことを言われて。じゃって、わたしが「アクロス・ザ・ユニバースを!」って言ったら、「英語はあかんねん」って言われ、それで「夢はよるひらくで!」って言ったら、「三上寛か藤圭子か」って言われて(笑)。ただ、さすがにそこまでアーティストと距離が近いライブははじめてだったから、すごく楽しかったけど、めちゃくちゃ緊張して、ライブが終わったあとに懇親会的に呑もうっていうのがあったけど、逃げるように帰ってしまって、そのまま酉の市の屋台で呑んでたらアラーキーがいたという・・・。

 

ママ わたしはそのころ一瞬無職で、バイトでもいいから働かないとってなってたら、田尻さんが自分の会社を紹介してくれてA社(注:書籍中心の出版社、その後社員になって数年後に辞めた、田尻も辞めた)に入ったんだよね。2005年とかの気がするなあ。

 

田尻 じゃあ、わりとすぐだったのか。

 

ママ でも、そのころはまだあんまり泥酔してないよね。

 

田尻 うん、遠慮してたんだろうなあ。ママと呑んで初泥酔どこだろ。てか、いつの間にかだよね。A社のときが濃すぎたから・・・。

 

ママ そうね、家も笹塚(注:ママの家)と初台(注:田尻の家)で近かったし。

 

田尻 てゆうかさあ、昼はランチ一緒に食べて、一緒に帰って、夜も一緒に呑んで。土日も一緒で、朝とかに「代々木公園いかない?」とか「うちに何時に来る?」とか(笑)。

 

ママ 辛い・・・。

 

田尻 わたし、あのとき、いつデートとかしてたんだろ。

 

ママ わたしもあのとき、いつデートとかしてたんだろ(笑)。

 

田尻 たぶんまあ、土日のどっちかとかで、お互い用事があるときもあったんだろうけど・・。

 

ママ まあ、でも、楽しかったよね。

 

田尻 そう、ぜんぜん、それを負担に思ってなかったからやばいよね。で、ママんちで呑んでると夜中の2時ぐらいに「そろそろ帰って」って言われて。あれ、なんで2時だったんだろう。

 

ママ いまもわたしって、だいたい2時までしか呑まないじゃん(笑)。

 

田尻 確かに! まあ、歩いて帰れる距離だったからね。

 

ママ 思い出の水道道路でしょ。

 

田尻 LABCRYを聴きながら・・・。

田尻さんとはいろいろなところを旅してきた。写真は式根島。

式根島について30分後の1食目。

ママ でもあのころの泥酔より、いまの泥酔のほうがひどいと思うんだよね。

 

田尻 ひどいよね。最近ほんとに、この人と呑むときは泥酔するっていうのがあって、ママとは泥酔度が高い。

 

ママ 知ってるよ(笑)。でもやっぱりわたしたちの人生に箱ワインが導入されたのが良くなかったと思うんだよ。

 

田尻 そう、朝霧JAMとLabyrinthぐらいからだよね(注:このころはわりかし野外活動していた)。小川に箱ワインを箱からだして中身だけ浮かべて、冷やしながら呑んでたもんね、椅子並べて。超牧歌的(笑)。

 

ママ やっぱり箱ワインが負けだった。

 

田尻 こないだもわたし、それで撃沈したし。

 

ママ あれなー。ROVOの宇宙の日ね(注:毎年ゴールデンウィークに野音でやってるROVOの最高天国ライブ)。

 

田尻 あれはひどかった、あれは更新した。

 

ママ わたしもびっくりしたよ。野音でステージのほうからお姫様抱っこをされて連れ帰られる女なんて、初めて見たよ(笑)。

 

田尻 しかもその前に、「宇宙の日は毎回ひどいやつがいる」とかってわたし言ってたじゃん。わたしがいちばんひどかったんじゃないかという疑惑が・・。

 

ママ どこまで覚えてるの、あの日は?

 

田尻 ぜんぜん覚えてない。ROVOは一切覚えてないもん。

 

ママ え・・・。ROVOのとき、もういないよ。あのときには連れ帰られてるよ。あの日はすごかったよ。どうやって帰ったの?

 

田尻 ずるずるって友達が引きずりながら搬送してたら、まわりのひとが助けてくれたらしくて、それでタクシーに押し込まれて・・・。まあ、いちおう補足をしておくと、ずっと忙しいのが続いて、前の日もあんまり寝てなくて来たっていうのがありました。いいわけだけど。

  • 01

    01.奇跡のお姫さまだっこ

  • 02

    02.可燃ゴミとして捨てられなくてよかった。

  • 03

    03.田尻を壊す箱ワインと、実家から持ってきた筍煮(田尻母ありがとうございます、わたしが美味しくいただきました!)。

  • 04

    04.わたしが買っていった「また明日」の焼売のことも覚えてないんだろうな。

01.奇跡のお姫さまだっこ 02.可燃ゴミとして捨てられなくてよかった。 03.田尻を壊す箱ワインと、実家から持ってきた筍煮(田尻母ありがとうございます、わたしが美味しくいただきました!)。 04.わたしが買っていった「また明日」の焼売のことも覚えてないんだろうな。

ママ いや、面白かったよ(笑)。てかね、たぶん田尻さんとはさ、1万回ぐらい呑んでるじゃん。

 

田尻 そうねえ。

 

ママ 1万回ぐらい呑んでたら、もういろいろ忘れちゃうよね。

 

田尻 そう、だからそんだけ呑んでると、もう乗り過ごしたとかぐらいは、いちいち覚えてないわけですよ。山手線ぐるぐる回るぐらい、ふつうにあるしさ。

 

ママ でも、わたしはそういうの絶対しないっていうか、すごく酔っ払っても、泥酔して記憶なくして誰かに救われるみたいなのはないわけよ。

 

田尻 それが本当に不思議で。

 

ママ てか、わたしはそっちのが不思議だよ。どうしたらそこに到達できるのかっていう。仙人の無の境地みたいな世界。

 

田尻 だって呑んだら楽しくなるわけじゃん。さらに正気をなくしたら楽しいわけじゃん。正気なくしたら止められるわけないじゃん。正気を保っていて気持ち悪くなったりしたらやめられるんだけど、こっちは楽しいままずっといってるからさ。

 

ママ わたしだっていつも楽しいよ! でも田尻さんは、どこかでガクって酔っ払う瞬間があるじゃん。酔拳みたいに。

 

田尻 あーー、でもそれを自分で把握できないんだよ。

 

ママ コントロールできないってこと? ガクっが来る瞬間がわからないの?

 

田尻 わかんない、わかんない(笑)。その瞬間をいつまでもつかめないわけよ。

 

ママ でもなに呑んでるか、も関係あるよね。昔は田尻さん、ビールばっか呑んでたじゃん。

 

田尻 そう、ビールを呑まなくなったことも関係してる気がする。ビールだったら大丈夫っていう気持ちがあったんだよ。

 

ママ てかわたしたちって、昔はウーロンハイとかレモンサワーとか知らなかったよね。え、わたしたちってなに呑んでた?

 

田尻 黒ラベル。ママんち行くとき、いつも黒ラベルのロング6本買って行ってたもん。

 

ママ そか、あのころはわたしもけっこうビール呑んでたんだな(注:いまはあんまし呑まない)。

 

田尻 そそ、どんどんママが炭酸を呑まなくなって・・・。やっぱりスナックだな!

 

ママ いきなり、なに?!

 

田尻 ママがある時から、めちゃくちゃスナックに通いだしたじゃん、あれがきっかけだよ。

 

ママ ああ、ボトルを入れだすっていうのをやりだしたからね。

 

田尻 ビールは不経済って話で、割物に移行してったんだと思うよ。

 

ママ あのころはさ、本当に1日2軒、300日ぐらいスナックで呑んでたからね(注:仕事です)。

 

田尻 だって、「胃が辛い」って言ってたもん。なんかね「胃が冷える」って(笑)。あと、スナックはまず自己紹介が大事だから、ボトルを入れてから、カラオケで自分がなにものなのかを表現しろって(笑)。

 

ママ そんなこと、わたし言ってた(笑)? めんどくさいなー。

 

田尻 ユーミンはあり?って聞いたら、まあギリギリありって言われた。

 

ママ 嘘でしょ・・・。すみません。ぜんぜんありだよ(笑)!

 

田尻 そうだなあ、だから割り物時代が、泥酔の一因の気がする。

 

ママ (そんなこと、ないと思うんだけどなあ・・・)

朝5時、泥酔してながめる新島の海。

続きは後編へ・・・・。

 


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Profile

  • スナックアーバンのママ

    四谷三丁目の会員制スナックのママです。ことしで8年目。好きなお酒は濃い目のウーロンハイ、好きなツマミはホタルイカの沖漬け