魔法が解けないシンデレラのドレス

自分で選んだ最高のドレスが見つかれば、0時を過ぎても魔法は解けないのです。

8.20, 2018

Columnist:Aya Matsuo
  • fashion
Share on

シンデレラは魔法使いのおばあさんに美しいドレスや靴を魔法で出してもらい
素敵な女性になって、めでたく王子様に出会いましたとさ。

 

ずっと童話「シンデレラ」は単純にそういうお話だと思っていた。

 

おとぎ話を信じる年頃はとうに過ぎたけれど、今度は結婚式やパーティに誘われるたび、“素敵なドレスさえ手にはいれば”自動的に素敵に見える魔法がかかる、そう信じていた。

どちらも大きな勘違いだったのだけど。

 

 

以前ファッション誌の仕事で”パリの女の子たちのクローゼット”を取材したことがあった。

言わずもがなファッションの聖地、パリ。

それはそれは素敵なクローゼットに出会えるかと思っていたが、実際に見せてもらったのは小さな小さなクローゼットに、日本の女の子に比べると少なすぎるほどの服、靴、バッグがあるだけだった。

 

多くの女の子のクローゼットの中身は、通学や普段着用の超シンプルなジーンズとTシャツ、パーカ、そしてスニーカーがほとんど。

でもその片隅に、必ずドレスとパンプスがかかっていた。

ドレスは古着屋で買うという。

なぜかと聞くと、「自分に似合うものは古着屋にあるからかなあ。安いし、それに(ほぼ)オンリーワンの1着でしょ?」

 

確かに、古着のミニドレスは彼女たちにぴったりだったし、それにきちんとパンプスを合わせてキュッとリップを引いただけで
“素敵なよそ行き”になっていた。

 

そのあとパリの街角でおしゃれな人をスナップするために2、3日滞在していたが、遠目からでもわかるほどのブランド品を身につけた人はそのほとんどがおばあさん、と言える歳の人で若い女の子はジーンズか、古着のドレスで街を駆け抜けていた。

 

クローゼットを見せてくれた女の子たちに、
「(フランスには有名ブランドがたくさんあるのに)ブランド物は欲しくならないの?」と聞くと
「まだ、いらないかな」という。

「確かに素敵だけど、値段も、デザインも今の自分には似合わないと思ってる。もしも(パーティなどで)必要な時はママやおばあちゃんに借りればいいしね」

 

周りに良いものは溢れているけれど、それが似合う時がくるまではむやみに手を出さない。そうやって年代を重ねて、似合うものがだんだん増えて行き、「その時」が来たら初めてそういったブランド物に袖を通す。そういった土台があるからこそパリは「ファッションの聖地」であり続けるのか、と関心したのを覚えている。

 

それから何年も経ったある日、友達の結婚式のためのドレスが必要になった時、なぜかそのパリの女の子たちのことを思い出した。そしてドレスつながりでふと、シンデレラのお話を大きく誤解していたことに気づいた。

子供の頃は、単純に“魔法使いに魔法をかけてもらったから素敵なドレスを手に入れた”。そんな風に思っていたけれど、
本当は“シンデレラが素敵な女性だったから、美しいドレスがぴったり似合っていた”。だからこそ王子様に見初められたのだと気づいたのだ。

 

もちろん美しいドレスやアクセサリーはそれ自体、「魔法のように」素敵に見せてくれる力があるけれど、もしも自分にそれが似合っていなければ、0時を待たずしてその魔法はたちまち解けてしまう。おとぎ話の意地悪な義理の姉たちがどんなにドレスアップをしても、王子様には見向きもされなかったように。

 

そう、結婚式やパーティに誘われるたびに「見栄えがよく見える」ために「とりあえずブランドもの」「とりあえず華やかなもの」そんな理由でドレスを探していた私には、せっかくのドレスの魔法は全く効果なし!(そしてそんな理由で買ったドレスは、もちろん私には全く似合っていなかった)。まさしく義理の姉状態。

もちろんTPOや流行なども大切ではあるけれど、パリの女の子たちのように時間をかけて「自分に似合うもの」を知ることことが、魔法が解けない一番大切なことだってことをその時まですっかり忘れていた。

 

それから自分なりに似合うものを探し続けて、昔よりは(少しは)わかってきた気がする。

 

「ドレスの魔法が解けないように」

 

今度こそ“今の自分に似合う”ドレスを探しに行こう。

Profile

  • 松尾 彩Columnist

    フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。また猫についてゆるく語る「ネコテキ」を小学館「しごとなでしこ」にて連載中。