コンドルは飛んでいき、アルパカと羊が舞い降りた

もしかしたら前世はペルー人だったのかもしれない。

9.6, 2018

Columnist:Aya Matsuo
  • fashion
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インカ帝国最後の王様の名前はアタワルパ。

 

残念ながら人間というものは、歳をとるごとにいろんなものを忘れていく。

私の場合、親の仕事の関係で転校が多かったから、「クラスメイト」に関する思い出は転校するたびに真っ先に記憶から消え、ついでに学校で習った様々なことも消えた。

あまりにも昔の記憶が消えていくのを感じると、いつかは消えたくない思い出や頑張って勉強したことも忘れていくのか、と悲しくもある。

 

ただ、なぜかむしろ忘れてもいいと思っているのに記憶から消えないものがある。

私の場合、それが「アタワルパ」なのだ。

 

 

子供の頃から考古学が好きで、日本史よりも世界の歴史に夢中になっていたからそれなりに人よりはたくさん本も読んだけれど、年月が経つにつれその内容のほとんどは薄い記憶の中。

だけどなぜかアタワルパだけは今でもすっと口から出てくる。

 

だから、「ペルー」に関わる話を聞くと、セット販売のようにその名前を思い出すのだ。

 

そしてペルーといえば日本各地のいたるところ(特に大きめの駅前広場)でペルー人が作曲した「コンドルは飛んでいく」を演奏する人々を見かける。

なぜそこで演奏しているかの理由はわからないけれど、少しもの悲しくって、でもコンドルが悠々と青空を飛ぶような力強い美しさもあって演奏自体を聞くことは好きだ。

ただ困ったことに、私の脳内では「ペルー」に関するキーワードを聞くとアタワルパの名前が脳内に自動的に浮上する。東京で、大阪で、その他の地方で、コンドルは飛んでいくの演奏を見かけるたびに

 

アタワルパ・アタワルパ・アタワルパ。

その度に、その誰にも伝えることのできない知識を持て余すのだ。

ちなみにアタワルパを思い出してから数秒後、必ずインカ帝国を滅ぼしたスペイン軍を率いた人、ピサロの名前も苦々しく思い出すので、もしかしたら前世はインカ人だったのかもしれない、と思ったり思わなかったり。

 

 

なんの話だっけ。

そうだ、ペルーだ。

 

アタワルパは置いておいても日本人は案外「ペルー」に対して、知らないようでいて結構いろいろなことを知っている。

例えばマチュピチュ、インカ帝国、ナスカの地上絵、ティティカカ湖、クスコ。料理ならセビーチェあたりは聞き覚えがあるだろう。それに「コンドルは飛んでいく」を加えればかなりのキーワードについて知っていることになる。

ちなみにジャガイモやトマト、唐辛子の原産国でもある(豆知識)。

 

おそらく外国人が日本と聞いて思い出すのは「忍者・芸者・富士山・アニメ」くらいだろうから、それに比べれば十分知られてると言える。

 

最近はそれに”ペルーニット”というキーワードが加わった。

なんでもペルー原産のアルパカや羊毛のニットは軽くて暖かいのが特徴とかで、ここ数年いろんなアパレルブランドで「ペルー産ニット」を大々的に打ち出している。確かに親しみやすく懐かしい風合いのその毛糸は思わず手に取りたくなる雰囲気がある。

 

 

最近あまり「駅前のコンドルは飛んでいく」を見かけることが少なくなったなあと思ったけれど、

入れ替わりのように、街にペルーニットが舞い降りた。

 

アタワルパを忘れる日は、まだまだ先になりそうだ。

 

 

南米ペルー産のウール糸を手編みで仕上げた

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Profile

  • 松尾 彩Columnist

    フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。また猫についてゆるく語る「ネコテキ」を小学館「しごとなでしこ」にて連載中。夫婦料理ユニット「サイトウのゴハン」レシピ担当。