ハンサムな彼女

思い出のダッフルコートを探して。

9.21, 2018

Columnist:Aya Matsuo
  • fashion
Share on

子供の頃、近所にとてもかっこいい女性がいた。

舞台女優をしている人で、背も高い人。

いつもTシャツやシャツにジーンズというさっぱりした格好をしていて、冬にはそれにさらりと男物のダッフルコートを羽織るような人だった。

 

男の子みたいな格好だけれど、逆にその人の美しさを際立たせていて
「ハンサムな美女」という形容詞がぴったりくるような人だった。

さて、時は経ち自分でも自由にコートが買えるようになった頃
真っ先に欲しかったのは彼女が着ていたようなかっこいいダッフルコートだ。

 

流行は繰り返す、というけれど実際大人になるまでもダッフルコートは数年に1度「流行」していて、だからデザインも色もいろいろなものが出ていたけれど
「ハンサムな彼女」が着ていたようなかっこいい1着はなかなか探せなかった。

“今年流行の”という形容詞のついたレディースものは、大抵Aラインに変形していたり裏地やボタンが可愛すぎる。

じゃあメンズを着ようかと思うけれどそこまで背の高くない私にはやはり大きすぎる。

 

妥協して買ってみたものの、やはり記憶にあるあのハンサムなスタイルとはほど遠くて数回袖を通しただけでタンスの肥やしになってしまった。その後もレディースで売り出されるのは「トレンドデザイン」なダッフルコートばかりで、ついには探すのを諦めていた。

それに若かった時代はコートの中に着る服はどうしても“トレンド”のものが中心になっていたから、どうやってもかっこいい系のダッフルコートとはしっくりこなかったし。

ダッフルコートの起源は、北欧の漁師の防寒着だったという。

その後大戦時にイギリスの海軍の軍用コートとして採用された。

左右どちらの合わせでも着られること、
手袋をしたままボタンが留められるようにループになっていること、
帽子をかぶった上からかぶれるようにフードが大きいこと。

いろいろな理由があってあのデザインになったそうだ。

質実剛健。まさにそんな形容詞がぴったりだ。

彼女が着ていたのもきっとそんな「ホンモノ」の1枚だったのだろう。

 

さらに時は過ぎ、気がつけばレディースデザインでも「ホンモノ」なダッフルコートが主流になっていた。

流行が巡り巡ってもやっぱり長く愛されるのはきちんとしたものだけ。様々な流行を経て、それを買う側にもそんなマインドが根付いたからか、女性が着て美しいシルエットは生かしつつもダッフルの重要なデザインは生かされているコートが多く見られるようになった。

 

相変わらず世間では毎シーズン、様々な“トレンド”が巡って入るけれど、
こちらも年をとってそれに流されないことも覚えた。

そんな今の私がダッフルコートを着たら、今度こそ憧れの「ハンサムな彼女」に近づけるだろうか。

ああでも今頃は「ハンサムなおばあちゃん」になったであろう彼女にはきっと永遠に追いつけないのだろうけど。

 

 

 

▼ROSSO × Gloverallのダッフルコートはこちら

 

CAMEL (キャメル)、BLACK (ブラック)、NATURAL (オフホワイト)の3色展開。

中でもキャメルは生地から別注、裏地にブリティッシュなブルーチェックを配したROSSOだけのオリジナルデザインです。

Profile

  • 松尾 彩Columnist

    フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。また猫についてゆるく語る「ネコテキ」を小学館「しごとなでしこ」にて連載中。