2019.05
特集 A BEAUTIFUL LIFE 巣鴨

いざ、おばあちゃんの原宿へ

ずっとずっと昔から東京の巣鴨は「おばあちゃんたちの原宿」なんて呼ばれていた。人が自然に集まる場所というのはそれだけでパワースポットであり、人が人を呼んでさらに賑やかになる。まだまだ若造、ひよっこが二人、その賑わいの中に身を預けてみた。

5.9, 2019

  • essay
  • lifestyle
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まだ桜の残る季節に、「巣鴨」を訪れてみた。
散歩するにもちょうどいい季節。寒さがおさまってきて目的の人々もきっと足を運び始めているだろうと狙ってのこと。

 

「巣鴨」は東京の山手線内にある。つまりは立地だけいえば東京でも高級エリアと呼ばれるところだ。

だけど有名な「とげぬき地蔵」がある巣鴨地蔵通り商店街をあるけばそこは『TOKYO』的なイメージはまるでなく、なんだか落ち着く下町的な装いで、「とうきょう」とひらがなで表現したくなる雰囲気。

 

思ったよりも長い距離のある商店街(スタッフが測ったところ、30代の足で約20分ほど)の両サイドにずらりと並ぶお店は実に個性豊か。
多くの人は乾物のお店で佃煮を味見したり、大福やお団子を楽しみ、そして洋服や帽子、靴のお店で買い物をする。

 

そう、今回会いに行った人々とは「巣鴨に遊びに来るおばあちゃんやおじいちゃん」たちだ。

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    01.平日でもお店にはお客さんがたくさん

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    02.巣鴨らしい「赤い(還暦のお祝いのテーマカラーである)」アイテムもたくさん

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    03.商店街にはいくつか「塩大福」を扱うお店があった。

01.平日でもお店にはお客さんがたくさん 02.巣鴨らしい「赤い(還暦のお祝いのテーマカラーである)」アイテムもたくさん 03.商店街にはいくつか「塩大福」を扱うお店があった。

平日にもかかわらず賑やかさで言えば原宿でクレープを食べて買い物をする高校生となんら変わらない。さらに「4」のつく日は縁日が行われ、そこそこ広い商店街にぎっしりと人が集まっていた。

なんなら、その賑やかさはもしかしたら原宿以上かもしれない。

さて、なぜ今回「巣鴨」をテーマに選んだのか。
いくつか理由があるけれどそのうちの一つは、わたしがかつて出会った「美しい人たち」が口にした言葉にきっかけがある。

 

当たり前だけれど誰しもいつかは「おじいちゃん、おばあちゃん」になる。

 

“いえいえ私は永遠に美魔女になりたいです”、と言ったって誰もが寄る年波には勝てないのだ。

 

もちろんそれはどんなに“美しい人(顔や心が)”であっても避けられないことがら。
しかし過去取材したことのある美しい女優さんやモデルさん、いわゆる「美」に関わる人に話を聞くと、その多くが将来の夢として「素敵な、可愛いおばあちゃんになりたい」と口を揃えて言った。

 

今現在が「若く綺麗な」時の絶頂時期にもかかわらず、今から「素敵なおばあちゃん」になるためのあれこれを考えていることに驚き、そしてとても興味を持った。

 

ある人はそのための一生楽しめる趣味が欲しいと言い、ある人は素敵な笑い皺になるように毎日笑って過ごしたい、と言った。

 

正直、自分がおばあちゃんになることなんて想像もしてなかったけれど、あまりにもたくさんの素敵な女性がそういうもんだからそれ以来「素敵な年の取り方」についてずっと考えている。

 

何より、いつまでも若く見える魔法を探すよりも「素敵なおばあちゃん・おじいちゃん」になる方法を探す方がチャンスがありそうだ。

と言っても「素敵なおばあちゃん・おじいちゃん」てなんだろう。
意識して町中を眺めると、まず目につくのは「元気な」お年寄りたちだった。
もちろん腰は曲がり始め、足も少し悪そうな人が多いけれどゲートボールや散歩、登山など若者と変わらないアクティブな人も多い。

 

そういえば以前涸沢(からさわ)トレッキングをした時、休憩場所で70代の夫婦と一緒だった。「私たちのんびり歩くから先にでるわね」とおっしゃった二人を見送って5分後、私たちも出発したのだけれど、ゴールにたどり着くまでに追いつけなかったどころか、後で小屋で話を聞くと私たちのペースよりはるかに早いスピードで歩いておられた。
こちらは当時20〜30代のパーティ。にもかかわらずこちらの体力との差に驚いたものだけれど足腰の強さの他に、たくさんの山を歩いてきた長年のコツみたいなものもあるそうだ。

 

他にもある。これは海外での体験だけれど、20代の女の子のスナップをとるためにパリの街で朝から晩までリサーチしていた時、遠目から素敵なファッションをしている人のほとんどが60代や70代の人たちだったことにも驚いた。
当時はストリート系のファッション誌だったのだけど、私たちが提案している「質のいいシンプルな定番アイテムにアクセや小物でポイントをつける」と言うスタリングまさにど真ん中、いや、年を重ねた分「質のいいシンプル」の選び方、着こなし方はスタイリスト顔負けのものだった。

 

料理に関しても「おばあちゃんの味」はどうしてあんなにも味覚に響くのか。
田舎に遊びに行くたびにおばあちゃんがちゃっちゃと(つまりそんなに手の込んでない)料理を出してくれるのだけど、当時小学生でハンバーグやカレーライス大好きだった私にも、彼女の作る「鯵の南蛮漬け」やら「芋が多めのコロッケ」は食べた瞬間大好きになるものだった。

 

いずれも、結論を言えば「長年の経験」の賜物だのだろう。
今10代や20代であれば「何かを長く続けること」自体まだまだピンとこないかもしれない。30代や40代でようやく「長く続けてきてちょっと得意になってきたもの」が見つかるかどうか。
だから“今”から、この先自分の人生をよくするもの、必要なものを見つけて磨くことが何よりも大事なのかもしれない。

 

冒頭で紹介した「素敵なモデルや女優さん」たちの言葉がストンと腑に落ちる。一生出来る趣味も、素敵な笑い皺も、いくら年を重ねてもすぐに手に入れることはできない。だから今からそうなりたい自分になれるように努力やリサーチをする。だからこそ彼女たちの「今」も美しいのだろう。

 

さて、今回は彼女たちの見ている「先の未来」を今体験するためにたくさんのおばあちゃんたちを見に行きたくなった。もう少し具体的に見本となる「素敵なおばあちゃん(おじいちゃん)たち」を探そうと思ったのだ。

といえば目指すべき場所はそう、「おばあちゃんといえばの巣鴨」だ。
テレビでは毎日のように「巣鴨のおばあちゃんたち」が取り上げられるほど有名な場所。
彼女たちは時に美味しいグルメについて語り、時に時事やワイドショー的なタレントへの思いを語る。知らない若者のトレンドについても聞かれれば果敢に答える。それだけでも十分アグレッシブ。

さて、今回はもう一つの趣向として、URBAN TUBEでコラムを書いてくれている落合のダッチワイフくんをゲストとして招いている。
なぜなら彼もまた「今なぜか巣鴨が気になる」と言っていたから。

それに彼は将来「おじいちゃん」になる人だ。
将来おばあちゃんになるものと、おじいちゃんになるもの。その両面からこの巣鴨という町を見るのも楽しいかもしれない。

 

だけども彼はまだ20代半ば。今から「将来おじいちゃんになったら」を考えるのは難しいかもしれないけれど、いつか来るその日のために一緒に巣鴨に来てもらった。ただしテーマは自由。20代の彼が巣鴨というお年寄りの集まる街に何を感じるか。感じたことが将来に何か役立つのかはわからないけれど人生において何か感じたり考えたりすることは大事なこと。

 

「僕、おばあちゃんとかと話すの得意なんですよ!」

 

と豪語しながら雑踏に溶け込む彼を見送って、こちらは「素敵なおばあちゃん(おじいちゃん)」になるためのコツみたいなもの。
それを探りに出かけた。

 

次週はその落合君の回。得意な「おばあちゃんとのおしゃべり」がどうなったか。お楽しみに。

Profile

  • 松尾 彩Columnist

    フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

  • 木村 巧Photographer

    1993年茨城県生まれ。在学中より、写真家青山裕企氏に師事。春からURT編集部へ。