2019.05
特集 A BEAUTIFUL LIFE 巣鴨

巣鴨歩きで見つけた人生のヒント

美味しいものを食べたり、素敵な服を着てみたり。幾つになったってそれは楽しいこと。だからこそ歳を重ねるごとにそれを楽しめるコツを見つけるのも大事なこと。「素敵に歳をとるために」今からできることは案外多い。

5.22, 2019

  • food&liquor
  • lifestyle
Share on

■ グルメ

地蔵通り商店街には様々な美味しいものが集まっている。
大福、団子、大学芋などなどどちらかといえば和菓子系の充実度が高いのは巣鴨ならでは。ただ、最近は若い世代の和菓子好きも増えたり、外国人観光客の間でも「あんこ」や「だんご」の名前は浸透しはじめていて店先には様々な年代のお客さんが並んでいた。

 

通りにはパッと数えただけでも5、6件の和菓子屋さんがある。巣鴨には大学もあるので若い世代のお腹にも満足なボリュームのある餃子屋やメロンパン屋、行列のできる定食屋などなどが多数あり、実はグルメな街でもある。

 

今では全国の和菓子屋さんで見かける塩大福は巣鴨の「みずの」というお店が発祥なんだそう。私も含めスタッフ皆「塩大福」未経験だったので思わず手が伸びた。モチ部分に塩っ気がついてるかと思いきや、甘いアンコに塩味が効かせてあるもの。塩っ気と甘さのバランスが絶妙で、これ1個で「甘いしょっぱい甘いしょっぱい」の完璧な味覚バランスが完成していた。うん、これはハマる。

<みずの>の特選塩大福 ¥140。小笠原の塩を使っているそう。通常の元祖塩大福は¥130でした。

そのほか、目につくものを購入していった結果こんなにも様々なものが集まった。これ以外にも季節もの(柏餅など)や、おいなりさん、みたらし団子などしょっぱい系のものもあるので巣鴨へはおやつを買いに出かけるだけでも楽しい。( *価格は全て編集部調べです)

  • <松月堂>の塩豆もち(あんなし) ¥130 塩味のついた豆がはいったお餅。さっぱりしているので甘いのが苦手な人にぴったり。

  • <すがも園>の甘い豆大福(こしあん) ¥130。もしも当日食べきれない場合ラップして冷凍し、食べるときに自然解凍すると良いと同封のシールに書いてあった。

  • <伊勢屋>の草餅(こしあん) ¥140 ヨモギのいい香りとさっぱりとした上品なこしあん。

  • <岡埜栄泉>の地蔵の絵が刻印されているどら焼き ¥160。これは巣鴨限定だそうでお土産に喜ばれそう。すがもん(巣鴨のキャラクター)の刻印のものもあった。

  • <千成もなか本舗>の「和風パンケーキの皮」6枚入り¥200。どら焼きの餡なしバージョンというユニークなもの。店内ではこれにバターやアンコなどを挟んだものも食べられる。軽くてふんわりしているので何も入れなくても美味しい。

  • <巣鴨 榮太樓>若鮎 ¥150 店先でおばあさんが「先週もこれ買ったんだけど、家族が美味しいからまた買ってきてって言われたのよ〜」とおっしゃっていたので思わず手が出てしまった。求肥を鮎型の皮に包んだもの。おやつにもってこいなサイズ感が嬉しい。

  • <巣鴨 榮太樓>のきんつば ¥140 中にはあんがぎっしりでボリュームがあるおやつ。

  • <おいもやさん興伸>の大学芋あずま 200g(5〜6個)で¥520。大きめのゴロゴロ芋に蜜がたっぷり。外国人観光客にはまだ珍しい食べ物なのか、通りすがりに興味津々で眺める人が多かったです。

  • <岡埜栄泉>の志ほがま ¥540 見たことがないものだったのでどんな味か知りたくて買ってみた。白い部分はしっとり系の落雁生地。中にあんこが入っていた。味見したスタッフが「昔おばあちゃん家で食べたことのある懐かしい味だ」と嬉しそうな顔。

どのお店もクオリティが高いのは、味に肥えた世代が集まる巣鴨ならでは。

 

今回何度か巣鴨を訪れた結果、ここに集まる「おばあちゃんたちのグルメ力」みたいなもののコツがわかった。

それは思えば簡単なこと。“食べている(買っている)人に素直に感想を聞く”だ。

 

誰かが塩大福を買っていると、後ろから別のおばあちゃん(もちろん知り合いでもなんでもない)が気軽に声をかける。
「そこの大福、どう? 美味しい?」

 

また縁日の日に出ていたお好み焼き的な屋台でも、「それどんなもの? どんな味?」なんて通りすがりに話しかける光景を見た。

これほどまでに直球的な「リサーチ」はないよなぁと思う。もちろんいきなり話しかけても不快に思われない聞き方のコツもあるのだろうけど、全く知らない人にだって気になると思ったことは素直に聞く。そしてその答えをすぐさま自分の糧とする。ここには雑誌やブログよりも直接的で信頼度の高い情報が飛び交っていた。

 

今はまだ恥ずかしさや、無視されたらどうしよう。なんて気持ちで人に何かを聞くのは躊躇してしまうけれど、いつか堂々と「それ、何味?」なんて聞けるような人になりたい。

■ ファッション

女性スタッフと商店街をぶらぶらしながら話していた。
「将来、どんなおばあちゃんになりたい?」
「やっぱり幾つになってもおしゃれはしたいですね」

 

そんな話をしながらおばあちゃんたちのファッションを眺めるのはとても楽しかった。今はまだ流行ものを楽しんで入るけれど、おばあちゃんたちを参考にしながら「自分が将来、どんなファッションをしたいか」、そう考えるうちに今の自分のスタイルもなんだか定まっていく気がする。

 

巣鴨に集まるおばあちゃんを観察すると、若者同様「〇〇系」とカテゴライズしたくなるほど様々なファッションの人たちがいる。

一例を挙げると

 

・フェミニン系
ほっこりとしたパステルカラーのニットや花柄をどこかに取り入れた可愛らしい系。中には杖まで花柄の人もいた。

 

・スポーティ系
歩きやすいジャージー素材のパンツにアウトドア風のジャケット、そこにリュックを組み合わせた見た目にも元気なスタイル。足元もスポーツブランドのスニーカーを履いて颯爽と歩いていた。

 

・マダム系
見るからに質のいい素材のニットや、シルクのスカーフなど。かなり高齢の方でもヒールやブーツを履きこなしていたのが印象的だった。

ちなみに個人的にもっとも好みだった「おばあちゃんファッション」がこちら。

絣のパンツにコートとブーツの色を合わせ、明るい色のスカーフでポイントをつけている。シンプルだけど自分らしい個性が出せて、ああ、いつかこんなファッションを楽しめるようになりたいなあと思った。

巣鴨にはファッション系のお店も多く、また縁日には500円や1000円均一のお店が出たりするので、お買い得商品を探しに来る人も多い。
彼女たちの会話にそっと耳を傾ける時間も楽しかった。
中でもとあるおしゃれなおばあさん二人の会話が印象深い。

「昔はね、とっくり(タートルネック)デザインが全く似合わなかったの。でも年をとって首回りが痩せたでしょ? やっと似合うようになったわ」
なんて嬉しそうにタートルネックを胸に当てていて、その姿にほのぼの。そして今まさにタートルネックが似合わなくて悩んでいた自分もいつかこうやって似合うようになるのかとその日が楽しみにもなった。

  • 01

    01.花柄バッグ率たかめ

  • 02

    02.スポーティなおしゃれも人気

  • 03

    03.カラフルなスニーカーを履く人も多くいました

01.花柄バッグ率たかめ 02.スポーティなおしゃれも人気 03.カラフルなスニーカーを履く人も多くいました

商店街を歩くと、こうやって若い世代と変わらない、ありきたりの、楽しい、何でもない、そんな会話が流れている。
「このシャツの柄、珍しくていいわ」
「下にとっくり重ねるといいわね」
「こっちの花柄のが素敵」
「この後お茶しない?」

 

それと目についたのはおばあちゃん世代はしっかりとアクセサリーを身につけていること。「給料3ヶ月分」の婚約・結婚指輪世代のせいか、大ぶりなリングに、上品なイヤリング。ペンダントまで揃えた人が多く、それがまたシワの増えた顔やシルバーの髪の毛によく映えている。

 

余談だけれど落合くんは「ライブでお母さん役をするのに割烹着を探しているんですよ! 巣鴨ならあると思って」と言ってたが、意外にもほとんど売ってなかったらしい(1着だけあったけど高かったそうだ)。ほとんどがエプロンばかりで、さすがに現代のおばあちゃんたちにとっても「割烹着」はメジャーではないらしい。

素敵なおじいちゃん、おばあちゃんになるために

今回の取材で何度か巣鴨を訪れた時、ふと気づいたことがある。
ご近所住まいで単に野菜などを買いに来たような人以外、ほとんどが友達や配偶者、家族と遊びに来ていたことだ。

 

最初はそんなこと当たり前だと思っていた。

だけどふと我が身を振り返った時に「はたして老後、こうやって一緒に買い物を楽しんでくれる友達が何人いるだろうか」ということに気づく(長生きすること前提で)。

 

旅行など特別なことであればもちろん仲間を誘って、ということはあるだろうけれど、「商店街をぶらぶら」という日常の延長線上を一緒に楽しんでくれる友達というのはある程度近くに住んでいたり、密に連絡を取り合う人でないとなかなか難しい。

 

今現在はもちろんたくさん友達がいる。でもお互い仕事や家庭だで学生時代のようには集まれないし、飲み会やイベントなど「何か目的があって」集まることが多い。

 

人と人の繋がりかたも今はだいぶ変わった。
昔のようにご近所付き合いなんてのも減り、ネットの発達のおかげで離れていても連絡を取り合うことは可能だ。
実際数年直接は会っていないのに、フェイスブックなどでお互いの日々の生活を見ることが出来るせいか、「会っていない」ことに寂しさもなく、またそれに気づくことすらも減った。
年賀状などで相手の現在住所を意識しなくなったことも同様。

 

いつか定年になり、その頃には親世代もとうにいなくなる。
そうなった時に、ネット越しではなく「美味しいものがあるから食べに行こう」「似合う服を買いに行こう」と気軽に誘えて、出かけることのできる友人がたくさんいればいるほど人生はきっと豊かだ。

 

今回の巣鴨訪問のきっかけになった女優やモデルたちは「笑い皺の素敵なおばあちゃん」になりたいと言っていた。笑い皺ができるためには当たり前だけどたくさん笑うことが大切で、たくさん笑い合う友人が入ればいるほどそのシワはどんどん素敵に深くなるだろう。

「この先ずっと共に楽しく日々を過ごせる友達(家族)を大切にする」。

 

当たり前すぎて、時々忘れそうになるけれど、素敵な人たちが口にする「将来は素敵なおばあちゃん(おじいちゃん)」になるための、それが最後のピースのような気がした。

Profile

  • 松尾 彩Columnist

    フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

  • 木村 巧Photographer

    1993年茨城県生まれ。在学中より、写真家青山裕企氏に師事。春からURT編集部へ。