2018.04
特集 踊れ!台湾

台湾の熱気あふれるリズムに誘われ、今日もまた旅人は踊る

台湾は踊っている。目まぐるしく変わる流行、早朝から賑やかな屋台、熱気あふれるナイトカルチャー。旅人たちは自然とそのリズムに身を任せ、 深く深くこの国の虜になる。

4.11, 2018

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台湾には独特のリズムがある、と思う。

街へ出ればふんわりと漂う日本では馴染みのない香辛料の香りに、まずは鼻や胃袋を刺激される。そして絶え間ないバイクの行列に目を奪われ、早朝から深夜までどこもかしこも賑やかな声を聞く。これが台湾のいつものリズムだ。

台湾に着いたら、まずはそんな空気を味わいたくてとにもかくにも街へ出る。歩道にちょっぴりはみ出しがちなバイクを避けたり、日本とは少し違う漢字を読んでは意味がわかったりわからなかったり。屋台のオーダーシート(台湾ではオーダーシートに食べたいものをチェックして渡すシステムのところも多い)で知っているメニューを見つけて喜んだり。

そんな一連の作業をこなして、日本ではあんまり馴染みのない八角などの香辛料が効いたスープや麺をすすって。とりあえず、台湾の成分を体に入れる。たちどころに体の芯からなんとも言えない解放感が生まれて、足取りも思わず軽くなる。台湾を訪れるといつも、そうやっていつの間にか自分が街に馴染んでいくのを感じる。

そして意識せずとも耳に入ってくる街を行き交う人の声、お店のご飯を作る音、車やバイクの音、それを反響する建物。そんな音が絡み合って、さながらライブハウスのような空間に、にんまりとする。

 

ここ数年どころかここ何十年も、台湾と日本は相思相愛の関係にあると言っても言い過ぎではない。お互い年間200万人前後が訪ねあい、リピート率もそれぞれ多い。いろんな理由で親和性があるのだと思うが、日本人から見た台湾は、懐かしさと親しみをまず感じ、そしてそれでいて日本にはない情熱を感じ、「懐かしいのに新しい」という不思議な差異を覚える。

例えば台北の電車の駅なんかは日本と同様の清潔感があって(なんなら日本よりも先進的なシステムだ)ルールもきちんとしている。が、街に降り立つと(日本人の感覚でいうと)祭り会場のような熱気があふれていて、その温度差に触れた途端、ああ台湾に来たのだ、という感覚になる。

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    01.個人的に台湾で目にすると“ああ台湾に、来たんだ”と思う風景。二人乗りのバイク。

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    02.笑顔の素敵なごはん屋さん。

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    03.カラフルな陳列。

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    04.同じくカラフルな提灯。

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    05.そして車やバイクでぎゅうぎゅうの道。

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    06.バイクはいつだってちょっぴり、車道や歩道にはみ出している。

01.個人的に台湾で目にすると“ああ台湾に、来たんだ”と思う風景。二人乗りのバイク。 02.笑顔の素敵なごはん屋さん。 03.カラフルな陳列。 04.同じくカラフルな提灯。 05.そして車やバイクでぎゅうぎゅうの道。 06.バイクはいつだってちょっぴり、車道や歩道にはみ出している。

「踊れ!台湾」とは

さて、タイトルを「踊れ!台湾」としたのには、そんな風に自然と溢れ出る熱気を感じたのも理由の一つであるが、その他に「カルチャーを踊るように楽しんでいる」台湾の今を表現したかったことも理由である。

はじめて台湾を訪れたのは約20年前。そこから隔年でトータル10回くらいは訪台しているか。来るたびに新しいお店が出来ているが、かといって昔からある店の数もそう変わらない気もする。なんというかいい感じに「自然な新陳代謝」を繰り返しているのだろう。

だからこの街は呼吸している大きな木のようだ、と思う。伝統文化という太い幹が、ふぅという深呼吸と、はっはっはっという早い呼吸を時々繰り返し、空気という新しい文化をたくさん出し入れしている感じ。太い幹はゆるがないけれど新しい葉っぱやときどきやってくる小鳥たちによって常に賑やかな木。

世界のどの場所であっても人気観光地はうっかり気をぬくと「観光地的な何か」に成れ果ててしまいがちだし、「流行のもの」はどうせ一過性で終わるから…的なちょっとシニカルな扱いをされがちである。だが台湾の場合はどんな流行も伝統的なものと自然に融合したり、また新しいものを素直に楽しむ雰囲気が感じられ、その結果新しいカルチャーはきちんと「新しきもの」としての存在意義を与えられている。

逆を言えば、古き良き伝統が隅々まで息づいているからこそ、新しいものがその存在感を消すこともない。

今から30年前ほど、東京ではある種の「カウンターカルチャー」祭り状態だった。

トレンディ、という名の下にイタリアンが流行り、モツ鍋が流行り、タイ料理が流行り、カヌレが流行った。(それらが今では当たり前のメニューになっているのを見ると、当時の東京は案外うまくカルチャーを吸収できた感があるが)。あの頃の東京のマインドはきっとこんな感じだったのだろう。ただ東京は、新しいものを貪欲に取り込む代わりに、伝統的なものをどんどん減らす選択をした。同じく木に例えるのなら、次々にあたらしい枝を継ぎ、さまざまな種類の葉っぱを繁らせた木。にぎやかにはなったけれど、その分幹はどんどん細くなっていった気がする。

 

今、再度伝統の大切さが見直されつつあるけれど、一度減らしたものを取り戻すには時間がかかる。

 

そしてこれは決して台湾が「遅れてる」という意味ではない。

ともすれば「流行してると口に出すのがちょっとダサい」と上辺だけはクールぶってみる東京とは違い、台湾では「新しいもの」への感覚が常にハッピーなのだ。

例えばご飯は“いつもの”台湾料理を食べ、デザートは流行りの店に行く。悩み事があればお寺に行き、そのまま近くの映画館で新作の映画を楽しむ。そこに妙にかっこつけた言葉を持ち出してストッパーをかける感覚はない。新しいものができれば、そのままその踊りの輪に素直に溶け込むのだ。新しいよ、楽しいよ、と。

台湾を訪れたら、旅人もそうやって素直に踊りの輪に加わるのが正解だ。よく目を凝らせば、いたるところで様々な踊りがあるのが感じられるはずだ。踊るようにくるくると変化する新しいカルチャーへの参加、湯気の立つ蒸篭(せいろ)を待つ間、期待感から足をバタバタさせる動き。太極拳からナイトクラブまで、文字どおりの踊り。そうやって訪れるたびに自分が参加出来る踊りの種類はぐんと増えていくだろう。

そうやって台湾は昔も今も踊り続ける所であり、気がつけば旅人も一緒にステップを踏んでしまう。そういう場所なんである。

Profile

  • 熊谷直子Photographer

    幼少期より写真を撮り始める。20歳で渡仏し、パリにて本格的に写真・芸術を学ぶ。2003年よりフリーランスフォトグラファーとして雑誌・広告などでポートレートや風景など多ジャンルにおいて活動し、個展での作品発表も精力的に行う。主な著書/二階堂ふみ写真集「月刊二階堂ふみ」、杉咲花1st写真集「ユートピア」、熊谷直子作品集「赤い河」

  • 松尾彩Columnist

    フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。また猫についてゆるく語る「ネコテキ」を小学館「しごとなでしこ」にて連載中。夫婦料理ユニット「サイトウのゴハン」レシピ担当。